先週にしまなみ海道は大三島にある大山祇神社を訪れ、宝物館にて、源義経が奉納したとされる大鎧などを見学した。
その時に太刀や薙刀なども展示されていたのだが、ふと、「名刀=備前長船」ということが頭に浮かんだ。確か備前長船には刀に関する博物館があり、かつて訪れたことがある。
ホームページを確認すると、毎月第2日曜日には「鍛錬」の場を一般に公開しているという。第2日曜日・・・つまり6月なら今日。こういうのを見つけたからには行かないわけにはいかないだろう。今日は夕方には会社に顔を出す予定にしていたので、早起きして午前中の公開時間に間に合うようにクルマを走らせる。今回は阪神高速~第二神明~バイパス~国道2号線ルート。
もっとも、ただ刀だけを見に行くのもどうかと思うので、先に、朝鮮通信使の潮待ち港として名高い牛窓を訪れる。小ぢんまりとしているが古い町並みの残る港町で、ここをそぞろ歩くのも面白い(公共交通機関でのアクセスがもう少しよければと思うところ)。
牛窓=日本のエーゲ海ということで丘の上にはペンションも並ぶのだが、個人的にはこういう和風の建物のほうが風情があってよいですな。
ちょうど1時間かそこら散歩するのには適したコースで、資料館の見学などを含めても2時間あれば十分回れる。
しばらく牛窓を散策し、今回は竹久夢二関係はパスして「備前おさふね刀剣の里」へ。ちょうど外観からは、中世の武家屋敷を思わせる佇まいである。
備前の地というのは備前焼といい、刀といい、どうも「焼くもの」が盛んなところのようだ。元々、中国山地というのは砂鉄の生産が盛んなところで、日本海側の出雲地方では「たたら製鉄」が行われている。その中国山地から備前の地を流れる吉井川の水運に乗ってさまざまな物資が運ばれる中に砂鉄も含まれていたようで(同和鉱業片上鉄道が開通する前は硫化鉄鉱も水運で運ばれていた)、原料が集まりやすかったこともあるだろう。また、長船に近い「福岡」は、山陽道と吉井川が交差する交通の要衝で、人間も集まったということもある。
歴史の教科書で、中世の街並みとしてさまざまな店舗が並び、画面の左側では刀を持った武士たちが僧侶に因縁をつけている絵巻(一遍上人絵伝)というのを見た方も多いと思うが、ここに描かれていたのが中世の「福岡」の市である。やがてこの地を支配した黒田氏が関が原の戦いの後、筑前の地を与えられた際に、自分の地元の賑やかな町の名を持っていった。それが、現在の福岡の地名の由来という。
いつしか時代も進み、戦のための道具というよりは「魂を宿らすもの」「工芸美術品」という側面が強くなった日本刀。それでもその芸術性に魅せられた若い人たちも多いようで、現在は、伝統文化を受け継ぐという観点から、刀剣の鍛錬の修行を行っているとのことである。こうした博物館というのも珍しい。鉄砲類や、西洋式のソード、サーベルなどにはこういう博物館というのは(世界を見渡しても)あるのだろうか。
現在に残された名刀の数々を「銃刀法」の条文をバックに見学する。刀はもちろん銃刀法の規制の対象であるが、実際には「値ウン百万円」で暴力団の裏取引ではなく注文により制作し、一般の人間でも許可を受ければ持つことができる。やはりこれは美術品としての性格が強いものによるものだろう。
刀剣類を眺めるうち、そろそろ鍛錬場での実演が行われる時間となった。すでに40人くらいの人たちが鍛錬場に入り、半円をつくっている。外国人の旅行者の姿も見える。
作業は3人がかりで、炉に座ってふいごで空気を送り込み、鋼の溶け具合を見るリーダー格の人に、炉に炭をくべ、実際に槌を振るうのが二人。いずれも30~40代くらいの出で立ちである。ちょうど鋼を炉にくべ、ふいごで空気を送って炎を上げているところ。
炭がこれだけ盛んに燃える光景というのもなかなか見られるものではない。また、「青い炎」というのも、日常ではガスの炎くらいでしか見ることができないだろう。取り巻きの中に立っているだけでも暑く感じる。ましてや炉の周りともなれば・・・・。
しばらく待ち、炉をかき混ぜて一段と高い炎があがると、真っ赤に燃えた鋼の塊が出てきた。これを二人の職人が交互で槌を振り下ろし、鍛え上げる。高い金属音が小屋の中に響く。
時折火花も散り、見学客からもどよめきが起こる。
一度平たく延ばし、真ん中に切れ目を入れて二つに折り込み、それをまた延ばすという作業。これを何回か繰り返す。
結局午前の公開時間ではまだ鋼の塊で、これを刀の状態にまで長く延ばすところまでは見られなかった。それでも、こうした鍛冶屋の仕事をナマで見るのはもちろん初めてのことで、現場の熱気と高い金属音には驚くものがあった。まさに「鉄は熱いうちに打て」という格言を実感させてくれる。
・・・・さて、全く話は変わるのだが、熱いうちに打たれまくっているのがオリックス・バファローズ打線。試合は見なかったのだがヤクルトから11打数連続安打で1イニング10失点。前日は戦力外通告したユウキに「恩返し」も受けており、この体たらく。本当、今日見学した日本刀の炉の中に放り込んで、もう一回精錬しなおして、思いっきりトンカチしてやらんとどないもなりませんな・・・・。