混戦BB会で行く日生・岡山の旅。日生から赤穂線の普通列車に乗車するが、昼下がりの時間ということで「ここはゆっくりと行きましょう」と過ごす。山がちな山陽本線に比べ、ローカル線扱いながら開けた感じのする路線である。国道2号線もむしろ赤穂線に沿って走っている。
岡山に到着。夕方のお目当ての店に入るには少し早い時間ということで、少し岡山の街中に出ることにする。意外にも大和人さんは岡山の市街地の経験というのがほとんどないとか。交通の要衝でもあるから駅は何度となく通っていることだが。
岡山に来たのだからと、シンボルでもある岡山城に行こうということになる。駅前から路面電車が出ているのでしばしそれに揺られることに。
駅と電停のあいだにはバスターミナルがあり、岡山駅と各地を結ぶ路線バスが行ったり来たりしている。その中でこちらが終点で回送となるバスがあるのだが、何ともこれが謙虚な表示。「すみません回送中です」・・・・これが1社だけでなく何社もこういう表示をしているのが笑わせる。バスが来ても客を乗せられないことがすみませんなのか、それとも客も乗せないのに公道を走っていることがすみませんなのか。いずれにしても「こういうのは岡山らしいというのかな」と議論を呼ぶところである。ただその中で、通常の「回送」の2文字だけで入ってくるバスを見ると、全国的にはそれが普通の表示であるにも関わらず、「あのバス、エラそうにしとるな」という理不尽な感想を持ってしまう。
そんなバスを見ながら地下道をくぐって電停へ。こちらの路面電車、あの和歌山・南海貴志川線を「たま駅長」などの手法で見事に再生させたところである。サービス精神にはあふれている路線。現金を払ったので後でわかったことだが、ICOCAとPiTaPaの両方が使えるという利点もある。MOMOと呼ばれる低床のLRT車両も導入しており、小ぢんまりとした路線であるが魅力ある経営を行っている。
市内中心部は100円ということで、城下まで乗車。ここから旭川に沿って目指すのは岡山城である。電車の走る通りから一つ中に入ると、クルマの音も電車の音もほとんど気にならない。「県庁所在地にあってとても静かですよね」「地方都市らしく、静かで住みやすそうな感じ」と、同行のお二人も岡山の風情にご満悦のようである。確かに政令指定都市としては市街地の中心は小ぢんまりとしており、将来本当に広島を追い越す中四国経済の中心都市になれるのかという不安はあるのだが、こういう文教の風情が残る街というのは悪くない。そういう日が来ることがあるのかどうかはわからないが、もし「8年住んだ広島にもう一度住むか、それとも初めての岡山に住むか」と尋ねられれば、今度は岡山に住んでみたいなというくらいの憧れはある。
しばらく歩くと黒塗りの天守閣が見えてきた。烏城とも呼ばれる岡山城。旭川を堀として優雅にそびえる。ちょうど夕日がやさしく差し込み、黒色をぐっと引き立たせている。天守閣の中は戦後再建された天守閣、中は宇喜多氏、池田氏に関する史料が展示されているのだが、さすがにゆっくり見て回るには時間が少し足りないか。お二人も「中は別にいいですかね」と言っている。一方で「実は後楽園に行ったことがないんですよ」と大和人さんがいう。それならば、日本三名園の一つである後楽園に行くことにしよう。
冬の後楽園。この時期は何か花が咲いているわけでもなく、芝も青々としているわけでもないが、青空の下、庭園としての開放感をおぼえる。そこをぶらぶらと歩くのもよいものである。
後楽園に立つと、岡山城の天守閣も立派な借景となる。やわらかな日差しに包まれた庭園のひと時である。これが花の季節になるとさまざまな彩りを楽しむことができるということで、またの訪問を期待することに。
電停までしばらく歩くことに。市街図を見て位置関係を確認する。「城下の電停がここだから、こう歩けばいいんですね」と。このあたりも古い建物が残っていたり歴史を感じさせる。「阿房列車」の内田百閒の生地もこのあたり。それをきっかけに「岡山の文化人とか有名人といえば・・・」という話になる。これまで知らなかったのが、最近「質素な生活」で注目されている土光敏夫・元経団連会長も岡山出身だとか。
市街図を見て「これ何や」と目についたのがその名も「禁酒会館」。これから飲むぞ、という私たちにとってはタラリ・・・と冷や汗をかきそうな名前であるが、これが「会館」というのはどういうことだろう。ちょっと謎やなと言いながら歩いていく。
そしてやってきた「禁酒会館」。建物には十字架も描かれている。キリスト教と禁酒、イメージとしては結びつくな。アル中になった人が自らを悔い改めるためにキリストに祈るとか。それよりも、大正時代の建物というのが街中に現役で残っているのがよろしい。岡山も空襲を受けて市街地に大きな被害が出て、当時の岡山城の天守閣も焼失したのだが、その中でも残った建物ということで現在は登録文化財として保全されているという。
中は喫茶店になっており(もちろん、ビールなどはメニューにないのだろう)散歩後のひと時を過ごすのはいいだろうが、禁酒どころかこれから飲もうかという私たち、ちょっと後ろめたさを感じつつ再び電車に乗り込むのであった・・・・。