まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

観光列車「あめつち」にて鳥取へ

2023年09月21日 | 旅行記F・中国

話は8月下旬までさかのぼる。このたびリニューアルした米子駅舎と「がいなロード」の見物との組み合わせでいったん松江まで移動し、観光列車「あめつち(天地)」にて鳥取まで移動する。

この「あめつち」、キハ47改造の列車で、本当にこの形式はいろんな車両に生まれ変わっている。同じような車両で山陰線の「○○のはなし」や、呉線の「etSETOra」などがある。「○○のはなし」の2号車は全席海向きの座席配置ということで趣が異なるが、その他は海側にカウンター席と4人がけのボックス席、山側には2人がけの向かい合わせの席が並ぶ配置である。それが列車によって全席普通車指定席とグリーン車指定席と差が出ている。後者だと「青春18きっぷ」では乗ることはできない。「あめつち」はグリーン車指定席ということで、松江~鳥取間の乗車券を別途購入した。

先ほど米子にいて、わざわざ松江に向かったのは乗車距離を延ばすため。ならば出雲市まで行けばよいのだが、さすがにそこまでの時間はなかった。松江での折り返し20分は、社内での飲食物を買うだけならちょうどよい時間である。後は土産としてこのところお気に入りの鯖の塩辛(これは帰宅後のお楽しみ)。

「あめつち」は過去に1度乗車したことがある。この時は宍道湖、日本海側のカウンター席だったが、目の前にちょうど改造前はドア横だったところで、その時の枠が目の前に来ていた。キハ47改造の観光列車シリーズ、元の車体をできるだけ有効に使おうとしたために、座席と窓の位置が合っていなかったり、ちょうど目の高さに窓の中央部分が来たりというところが多い。そのため、個人の乗車記などを見ると、普通車指定料金ならまだしも、グリーン車料金は割高ではないかという声もあるようだ。また、みどりの券売機や「e5489」で座席指定ができないのも残念なところ。

今回は「e5489」で自動割り当てとなった山側の2人向かい合わせ席に陣取る。この席はたまたま座席と窓枠がいい感じで合っており、窓からの車窓もそれほどストレスなく楽しめるようだ。向かいの席は鳥取まで空席のようで、これなら気兼ねなしに「呑み鉄」も楽しめる。

「あめつち」は2023年秋に木次線の「奥出雲おろち号」が引退した後の代替列車として、2024年度からは宍道~出雲横田間を走行することが決まっている。木次線が走る奥出雲も神話の舞台になったところで、自然豊かなところ。観光列車も似合うことだろう。ただし、木次線の鉄道としての最大の見どころである出雲坂根の三段式スイッチバックには入らない。あの勾配を上るには性能が足りないためとのことだが、そういえば昔の木次線の写真を見ても、強力エンジンを積んだ車両が行き来していたなと思う。

松江を出発後、中海沿いに走る。客室乗務員が記念乗車証と「おみくじ」を持って来た。おみくじは大吉とか凶とかいうものではなく、出雲の神々が登場するという。引いたのは「櫛名田比売(クシナダヒメ)」。ヤマタノオロチ伝説にて、スサノオノミコトに命を救われた姫だが、おみくじの解説では、クシナダヒメはただ逃げていたわけではなく、その名のとおりスサノオノミコトの髪の上で櫛となり、オロチ退治の最前線に立っていたという。「意外な強さを内面に持ち、その強さをここ一番で発揮することで、大切な人の支えとなり、自身も輝きを発揮できるだろう」というご宣託をいただく。

安来に到着。後続の特急が先に発車するため約10分停車する。松江から東で停車時間が確保されているのは安来だけで、ちょうど車両の外からの撮影タイムとなる。車内全体も見て回るが、乗車率は半分強といったところだ。

鳥取県に戻り、先ほどまでいた米子に差し掛かる。扇形機関庫や気動車の群れを見て、新たな「がいなロード」を外から見る。

ここで半分以上の乗客が入れ替わる。出雲市~米子、米子~鳥取がそれぞれ約2時間ずつで、また米子は各方面の乗り換えとなることから利用が分かれるところのようだ。また、途中の停車駅が倉吉だけということもあり、特急よりは多少時間はかかるが、ゆったり座って行けるということで米子~鳥取の純粋な移動手段として乗ったらしい客も見かける。グリーン車だが快速列車のため、特急料金よりは若干安いこともある。

米子発車後、客室乗務員が声をかけてくる。車内での食事メニューとして「山陰の酒と肴」を別途事前予約していたのだ。セットには出雲の「豊の秋 花かんざし」。先ほど松江でビールやら缶チューハイや松江の「李白」なども仕入れ、すでに車内での一献は始まっていたが、ここでメインディッシュの登場である。

包みの中は彩あふれている。あくまで「酒の肴」で、弁当とは違いご飯物はない。「あめつち」限定の一品である。お品書きを見ると、島根牛のおろしソースかけ、しじみ入り玉子焼き、あごの磯辺揚げ、出雲そばの素揚げ、大山鶏と野菜の玉味噌和え、頓原漬けなど島根、鳥取両県の名物が一同に揃う。頓原漬けの頓原とは出雲でももっとも奥まった地域だが、大根、きゅうり、茄子、にんじんなどの夏野菜を古漬けにして醤油ベースのタレで煮込んだ漬物だという。冬は特に雪が多いところで、野菜不足を補う昔ながらの食物だという。

これで私が座っている進行方向右手に大山の雄姿が見えれば言うことないのだが、あいにく雲が広がっている。

車窓案内の放送をしていた車掌が乗車カードを配りに来る。「天気がよければこのように見えるのですが、今日は残念で・・」という。いやそもそも、大山の全容がくっきり見える日のほうが少ないのではないのかなと思う。

一方海側に目を転じれば、山陰線最古の駅舎がある御来屋での運転停車や、風力発電用の風車も車窓となる。日本海が見える区間も限られているが、それでも水平線を見る。

夕方が近づくがムシムシした空気は相変わらずの中、倉吉に到着。わずかな停車時間でいったんホームに出てみる。前回「あめつち」に乗った時は倉吉で下車したが、今回は終点鳥取まで向かう。

17時36分、終点鳥取到着。この翌日(8月27日)はいつぞや観戦記を書いたとおり、昼から京セラドーム大阪でのバファローズ対マリーンズ戦の現地観戦である。当初、「あめつち」でこの時間に鳥取に着いた後の過ごし方でいくらか迷った。この時間なら鳥取で1泊して一献として、翌朝大阪に向けて移動するのが自然だろう。もっとも、大阪に行くなら特急「スーパーはくと」もあれば、日本交通の高速バスもある。その一方で、鳥取からコマを進める手もある。「スーパーはくと」もしくは高速バスならこの日のうちに大阪まで行けるし、因美線~智頭急行の鈍行乗り継ぎでもこの日のうちに姫路などの山陽側に出ることもできる。

出発の前々日くらいまでいくつかのパターンを並べていろいろ考えたのだが、結論としては鳥取で1泊、そして翌27日は初めての乗車となる日本交通の高速バスで(安価に)大阪に向かうことにした・・・。

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1 コメント

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マルテンサイト千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-09-13 08:56:52
なんか安来へいったこと思い出すな。それにしても古事記はすごいよな。ドイツの哲学者ニーチェが「神は死んだ」といったそれよりも千年も前にイザナミ神についてそうかいてある。この神おかげでたくさんの神々を生まれたので日本神話は多神教になったともいえる。八百万の神々が出雲に集まるのは、イザナミの死を弔うためという話も聞いたことがある。そしてそこから古事記の本格的な多神教の神話の世界が広がってゆくのである。
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