さて8月11日の夜、「ムーンライトながら91号」に乗るべく、東京駅に向かう。ちょうど定期の「ムーンライトながら」が出発した後であったが、ホームには多くの旅行客で賑わっている。東海道を行く「ムーンライトながら」シリーズに乗るのは実は初めてなのだが、改めて、さまざまな層の客の需要があるのだなと思わせる。先日乗った「ムーンライト信州」が登山客御用達列車であったのとはやはり違う。
やってきたのは189系国鉄色の10両編成。早速にカメラの放列だ(注:私もこの時点で、しばらく一線を退いていたデジカメを久しぶりに引っ張り出してさかんに撮影していたのだが、先の記事の通り、途中でカメラかメモリーカードのいずれかがおかしくなってしまい、現時点で写真をパソコンに落としこめていない。よって、写真なしで旅行記を綴ることになるのでご容赦を・・・)。JR東海の特急型よりこっちのほうが昔の風情があってよいとか、発車が遅くても豊橋より向こう、名古屋や大垣にはこちらのほうが先に着くからその先の乗り継ぎに好都合とかで、こちらの臨時便を支持する人も多いそうだ。
車内放送でしきりに、全車指定席であること、指定席は完売していることを放送する。果たして東京発車時点で半分以上の席が埋まり、23時26分に静かに発車。銀座や新橋のオフィス街のネオンも土曜日で少なく、巨大なビルの影が窓の外を通り過ぎる。
今夜の私の席は通路側。まあ、世間はお盆休みという時期、たまたま数日前に冷やかしで指定券券売機をたたくと空席があったので取れただけラッキーであろう。そのときは大垣まで買ったが、果たしてどこまで行こうかと思案である。大垣から先、行けるところまで行くか、岐阜や名古屋近辺の市内めぐりや鉄道に乗るか、朝から東京に向けて引き返す形で途中下車の旅とするか、まだ決めていない。
車掌が車内改札を行う旨の放送が入る。手元には東京から小田原までの乗車券と、翌日の「日付の入っていない」青春18がある。日付が変わる前の最後の停車駅が横浜だが、発車は23時57分・・・。この3分差、本当に「意図的」なダイヤとしか思えない。もっとも、こういう話をすれば「意図的ではございません」という反論が返ってきそうなのだが・・・。
その横浜で乗客があり、0時を回り1時近くなった小田原で大量乗車。これで満席となった。ものの本には青春18きっぷの有効利用かつ前日の運賃を安くあげるために、東京からJRではなく、新宿から小田急で小田原まで行くという指南がなされていたが、その客が多いのだろうか。
結局車内改札が来ることもなく、深夜のため車内放送を一時中断する旨の放送が流れる。それはいいのだがこちらの頭は冴えている・・・というより眠れない。いや、車内が暑く感じるのだ。途中席を立って入り口ドアの温度計を見ると27.1度。今やオフィスの冷房は28度に設定するのが広まりつつあるし、また夜はあまり冷やしすぎないほうが体のためにはよいということはわかるのだが・・・・。それにしては私は室温が高いように感じるが、周りの人はよく眠っているようだし、一般の人はそうでもないのかな。私がよほど異常な体質だったりして・・・?
私自身夜行の座席車で眠るのはそれほど得意ではないのだが、いつも以上に寝苦しい、いや、寝付けない。シートを倒してボーっとしておくだけでも違うだろうと思いそうするのだが、暑くて扇子をパタパタやるし、そうするうちに列車が次の駅に停まるようで、熱海やら沼津やら、駅名標がはっきりと見える。
深夜2時過ぎ、静岡着。ホームを見ると2時36分発という表示になっており、結構長く停まるのだなと外に出る。車内よりは幾分涼しく、何だかほっとする。ホームには同じように外に出るひとであふれていた。ホーム端の喫煙コーナーにも人だかり。
ちょうど反対側のホームにも同じ国鉄色の車両・・・東京行きの「ムーンライトながら92号」が停車しており、あちらのホームでも同じような光景が見られた。そこへやってきたのが、定期便の「ムーンライトながら」の東京行き。ここで追い越しをかけるようだ。定期と臨時が3本並ぶ光景というのも圧巻で、カメラの放列ができる。
そんな一時の間、こちらの下りホームを貨物列車が高速で通過する。停車時間中に3本。長時間停車は夜の主役である貨物列車に道を譲るため。少し前まではお盆ともなれば貨物列車はすべて運休していたが、昨今はお盆関係なく稼動している工場や、需要のある顧客のために貨物列車も幹線を中心に走らせている。先月の新潟県中越沖地震で信越線が一部不通になっているため、関西と北海道を結ぶ臨時列車(東海道・東北線経由)も走っている。まあ、土曜日の夜ということもありコンテナも満載というほどではなかったが・・・。
静岡駅のホームで夜風や貨物列車の風に当たって幾分涼しくなったが、車内は相変わらず暑い。結局よく眠れたと感じる間もなく、豊橋で定時の「ムーンライトながら」を追い越す。わざわざあちらの列車から、「豊橋-大垣」の指定席券を持ってこちらに移ってくる人もいた。
5時19分、空も白んだ名古屋に到着。結局終点の大垣まで行かず、ここで下車。JRの改札を出ずに向かったのは近鉄名古屋線の改札口。結局ここから伊勢路を南下して鳥羽に向かうことにしたのだ。伊勢に向かうのであれば関西線に参宮線を使えばそのまま青春18で行けるのだが、何せ時間がかかりすぎる。携帯電話のサイトで近鉄の時刻を調べたら、名古屋発5時30分の鳥羽行き急行というのがあるようだ。
近鉄との連絡口で鳥羽までの乗車券を買い求め、「ここまでのJRの乗車券が必要です」という改札をくぐるときに、まだ日付の入っていない青春18を差し出し、「ここに日付を入れてください」と近鉄の係員に頼む。年配の係員はちょっとためらった感じがしたが、それでも何もいわずスタンプを押した。「近鉄名古屋 8.12」という文字が残った。近鉄の検印が入った青春18って、いいのかな・・・?
停まっていたのは急行用の転換クロスシート車。冷房も効いているし、空いているし、先ほどの「ムーンライトながら」より居住性は断然よい。トイレもついているので心配ない。
先に眠れなかったのであればここで眠ればいいではないか。鳥羽まで2時間である・・・・。