釧路の名物といえば炉端焼きという。漁業の本場ならではの料理と思うのだが、いろいろ店を調べてみても結構高いものだ。炉端焼きの発祥とされる某店では焼き物はすべて「時価」という。料理屋で何が怖いといって、メニューに値段が書いていなかったり、あるいは「時価」としか書いていないのはいくらボラれるかわからないものだ。まあこれは極端としても、炉端焼きに限らず、北海道の料理というのは結構な値段を取るような気がする。ともすれば飲食は東京の格安店で済ませるのが一番経済的なのかもしれない。
それはさておき、幣舞橋の近くに「炉端焼きレストラン 煉瓦」というのを見つける。何でも明治時代の煉瓦造りの建物を改装したとかで、「雪の降る街で熱燗を傾けながら演歌を聞きながら親父が黙々と魚をあぶって・・・」という「演歌の花道」的な風情とはちょっと違うようだ。
違うのはそれだけではなく、魚を焼くのが親父ではなく、自分自身ということ。その分値段もリーズナブルになっているというわけだ。大人数のグループもいるが、私のような一人旅、あるいはカップルで来ている客も結構いる。
席に座るとすでに目の前には炭がくべられており、これで暖を取ることもできる。ホタテ、厚岸の牡蠣、定番のホッケなどを注文する。このように炭火で魚を焼くということも日常ではほとんどないことで、素人には焼けるタイミングが難しいところもあるが、そこはスタッフがちゃんと見ており、時折網の上をいじってくれる。ただあくまでも焼くのは自分であり、待っている間にもいろいろいじったりして退屈しない。
ボリュームある素材をじっくりと焼いて、それをむさぼり食う。味付けなどほとんどいらない。牡蠣も広島や松島のものとはまた違った柔らかな味がする。この時期ならではという氷下魚の味や、白糠の紫蘇焼酎「鍛高譚」なども一緒に楽しむ。残念なのはビールが「サッポロクラシック」でなかったことだが、素材の味はそれを補ってあり余るものだった。寒い夜だが、十分に温まる。こうしたレストラン形式の店というのもいいもので、途中からは外国人の団体もテーブルに席を占め、大いに賑やかになった。
食事を終え外に出ると風が強い。また雪も舞う。ただこのあたりの雪は日本海側のベタ雪とは異なり、パウダースノーというやつで体が濡れる感じがしない。ただ翌日にかけては強風、大荒れの天候が予想されているとかで、これからさらに東に向かうのに大丈夫かと気になる。早々にホテルに引き上げ、翌日も早いので休むことにする・・・・。