上越線が全線開通して77周年ということで、イベント列車「信濃川」「小出銀嶺」号の運転、長岡車両センターの見学会というのが行われるという。そのうち、高崎から長岡までの「小出銀嶺」号乗車のツアーに参加した。
雲もほとんどない好天の高崎駅ホーム。普段は「SLばんえつ物語」号で使われている12系客車が停まっている。これをまず牽引するのは、昭和37年製造という電気機関車EF60。大勢のファンが機関車に群がっている。
機関車も連結され、客車の扉が開く。いかにも「その筋」という客の姿が目立つ。何せ、「この列車に乗ること」がツアーそのものなのだから・・・。改装されたとはいえ、昔ながらの客車列車に乗って上越線を北上するのが楽しみである。
10時ちょうど、大勢の客に見送られて発車。1ボックスあたり2~3人という乗車率。発車後、乗車記念品と弁当が配られる。右に赤城山、左に榛名山がくっきりと姿を見せる。沿線には大勢のギャラリーがカメラの放列をなしている。やはり機関車が牽引する客車列車というのは多くの人の注目するところなのだろう。
渋川着。ここで定期列車をやり過ごすために30分以上停車する。ただしドア扱いはしないので外には出られない。
イベント用客車ということで展望車両のほかに売店スペースもあるのだが、弁当や記念グッズは混雑を避けるために「くじびきによる整理券方式」を取っていた。「榛名山」「谷川岳」「清水トンネル」などの組に分かれ、車内放送で順番に呼び出される。サボやキーホルダーといったところがオリジナル商品。
東京では桜が満開を迎えているが、上州の山のほうではまだ見所はこれからといったところ。利根川沿いをさかのぼり、水上着。
ここで、EF60からこの「小出銀嶺」号の目玉ともいえるDD14の重連に機関車を付け替える。高崎を出て初めての停車で、乗客が一斉にホームに出る。反対側ホームにも駆け出す。
このDD14、主に除雪作業を目的として製造されたものという。除雪用のロータリーヘッドをつけた格好というのをこれまでにも見たことがあるかもしれない。ただこれに客車を牽引させる、それも重連で・・・というのはこれまでに全くといっていいほどなかったとかで、それで珍しい走行ということで大勢のファンが集まったという次第。
こうして見ると、見慣れたデザインとは異なる、外国の鉄道写真に出てきそうな面構えである。ただこの機関車も現役で活躍するのは上越線や只見線、米坂線など、新潟近辺の豪雪路線というが、最近では自動車型のラッセル車で除雪することが多く、出番も現象しているとか。それにしても思い切ったイベントを考えたものだ。
水上を発車。清水トンネルをくぐり、三国峠を越える。電車と比べてゆっくりしたスピードであるが、昔の客車の旅はこんな感じだったんだろうな。やはり列車での三国峠越えとなると皆の頭に浮かぶのは川端康成の小説のあの書き出し・・・
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
・・・まさにその通り。車内から一斉に歓声が上がる。3月末とはいえまだ越後は雪国で、どんよりしたスキー客の姿も多い。越後湯沢の手前のカーブが撮影名所とかで、雪原の中に大勢のカメラの放列。やはり注目度が高いのだろうな。魚沼の里は一大イベントである。その一方で、少し離れたところからスナイパーのようにカメラを構える人もいて、オリジナルの一枚を狙おうとしている。
次の長時間停車は、列車名でもある小出。ここでは撮影タイムのほかに、魚沼市観光協会による地元産品の販売や、鉄道写真の展示で乗客を出迎えてくれる。今日列車を牽引しているDD14が除雪で活躍している写真も多く、やはり以前にこういう写真展か何かで見たことがあったのだろう。
小出からは信濃川沿いに走る。少しずつ雪も減ってきた。高崎を出てから、途中の停車時間を含めて5時間近い列車の旅もそろそろ終了である。14時48分、長岡駅着。ここでは回送までのしばらくの間、最後の撮影タイムである。
上越線全線開通77周年のイベントは、翌30日の長岡車両センターの見学会までとなっており、長岡に宿泊する人も多い(宿泊と見学会までセットのプランもあった)が、私はこのまま新幹線でとんぼ帰り。5時間近くかけて走った高崎までの道を、わずか1時間で走る。東京まででも2時間かからない。やはり速いな。再び戻った東京は、相変わらずの晴天であった。
なかなか面白い経験でしたね。