先日行われた時刻表検定試験。試験そのものは金沢で受験したのだが、実はその前日は富山県内をウロウロとしていた。しばらく、その日の様子のことを書くことにする。
前日を富山で過ごそうというのは、一緒に受験する「大和人トラベルがたり」の大和人さんと決めたこと。「北陸に行くのなら、初乗車の富山ライトレールとか万葉線に乗ってみたい」とのことだったので、私も富山は好きなところでちょくちょく訪れているので、道案内がてら行きましょうかということになる。それで宿泊も富山とし、当日の朝金沢に移動しようということになった。
大和人さんは大阪を朝7時11分発の「サンダーバード1号」で富山には10時25分に着くとのことで、富山駅で合流とする。で、東京からなら上越新幹線とはくたか号の乗り継ぎでそれより少し前に富山に到着するのだが、今回「北陸フリーきっぷ」を使うこともあり、それであれば前日から「北陸」」号に乗り、富山に早朝入ることにする。それなら合流までの時間、何かして過ごせるし(どこかの線に乗りに行ってもいいし)、寝台特急に乗ることも滅多にないので、B個室「ソロ」を入手。
上野駅近くの立ち飲み屋で引っかけた後、「北陸」の客となる。折りしも東京から西へ向かうブルートレインが近々廃止になるというニュースもあり、寝台列車の発車シーンを見られるのもあとどのくらいだろうか。その中で「北陸」は結構善戦しているようで、金曜日とあって寝台は満席である。東京から北陸、北陸から東京の往復フリーきっぷが好評で、「北陸」も選択できるからだろう。
発車間際に車掌が個室のカードキーを持ってきて、「寝台券はお出しいただかなくて結構です。どうぞお休みください」という。明日の朝も早いので、早々に着替えて寝ることにする・・・。
翌朝5時33分。まだ夜明け前の富山駅着。ここで結構多くの客が下車する。私もここで降り、大和人さんが来るのを待つ。いやただ待つといってもホームでボーっとするわけではなく、どこかしらに出かけるのであるが。そこで向かったのは富山地鉄の電鉄富山駅。さすがに立山とか黒部渓谷を目指すには時間が足りないが、その手前まで乗ってくることはできる。
そこで、ホームに停まっていた列車を見て、まだ乗ったことがない不二越・上滝線でとりあえず終点の岩峅寺(いわくらじ)駅を目指すことにする。乗るのは元京阪特急「テレビカー」。足回りや塗装は富山地鉄仕様に変えられているが、シートの感触は往年のままである。
さて近郊私鉄らしく、駅間の間隔も短くこまめに駅に停車する。もっとも早朝の逆方向に向かう列車のため、富山の市街地を抜けると乗客もいなくなり、ほとんど私一人の貸切状態。そうするうちに少しずつ東の空が白んできて、立山連峰のシルエットがくっきりと窓の外に広がる。雲もなく、空気も澄んだ感じで気持ちよい。
電鉄富山から30分ほどで岩峅寺着。ここは寺田経由で立山に向かう立山線との合流地点だが、乗ってきた不二越・上滝線の線路はここで行き止まりとなる。駅の建物は神社を模したような独特のつくりで、格子戸を開けて出入りする待合室にはストーブが焚かれていた。さすがに晩秋の朝は冷え込む。
せっかく来たので少し歩くことにする。この駅舎の形が物語るように、歩いて7~8分のところに雄山神社の前立社壇というのがあるそうだ。駅名が「寺」なのに最寄が「神社」とはね。
そしてやってきた雄山神社。ここで旅の安全と検定試験の好成績を祈願する。朝の寺社参りは清々しいなと年寄りみたいなことを思う。ここ雄山神社は古くから立山信仰の拠点として、また神仏習合の霊場として(だから岩峅寺なのだ)多くの信仰を集めたところという。社殿の増設・修復には源頼朝、佐々成政なども支援したという。
すぐ脇を流れる常願寺川の冷たい流れで気を引き締めた後、再び富山地鉄の人となる。夜も明け、列車には通学の高校生の姿も目立つ。立山方面には向かわず、この後寺田まで行き、さらにJRとの接続駅である新魚津まで乗車する。途中からJRの線路が並走するが、あちらの特急がスピードがあるのに余裕を持って走っているように見えるのに対して、こちら地鉄はモーターが焼けるのではないかとハラハラするように一生懸命走る。JR対地方私鉄の対照というか、それぞれの特徴がよく出る区間である。
新魚津からは旧急行色の475系のボックスシートに揺られ、富山に戻る。ホームの立山そばで遅めの朝食とするが、それをすすっても大和人さんとの合流までにはまだ時間がある。
そこで、だ。北陸フリーきっぷを持っているのだから、時間もあることだし、高岡まで「サンダーバード1号」を出迎えに行くことにする。朝メールで「後ほどお会いしましょう」と送ったのだが、「富山駅で」とは書いていない。ちょいとサプライズということで高岡まで移動し、「サンダーバード1号」の入線を待つ。
やってきた特急。自由席だろうとそちらからのぞいてみるが、いない。おやおやと思いつつ指定席のほうに移動してみると、連日の激務と今朝の早起きで朦朧気味の大和人さんの姿を見つける。いきなり隣に腰掛けて「おはようございます」。さすがにちょっと驚いた様子。
ともかくこれで無事合流。高岡から富山までは13分の乗車で到着。中央出口ではなく北出口から駅を出る。改めてここから、富山の鉄道の乗り歩きの始まりである・・・。