8月12日、猛暑の中でのBCリーグの観戦はいよいよ試合開始である。栃木は西岡が3番、飯原が5番に座る。一方の群馬は井野口が3番、ジョニーが6番に入る。群馬の強力打線が威力を発揮するのか、栃木の地元パワーがそれを上回るのかが楽しみである。
栃木先発は、元ソフトバンクの育成選手で今季から加入の齋藤。左腕からスリークォーター気味に投げる。まずは群馬先頭でNPBへの期待もある青木を打ち取るが、続く大堀、井野口に連打を許す。
一死1・3塁となって群馬4番の速水がライトに犠牲フライを放つ。これで群馬が1点先制する。
一方の群馬先発は同じ左腕の南。小柄ながら小気味のいい投球を見せる。栃木は2番の青木が内野安打で出塁し、早速西岡に打順が回る。スイッチヒッターなので右打席だ。しかし惜しくも三塁ゴロ。後続も倒れて無得点である。
栃木は2回も2四球とバントで二死2・3塁とチャンスを作るも得点に至らない。
続く3回裏、一死から青木が二塁打で出塁。そして西岡に回るが空振り三振に倒れる。ただここで4番のルーカスがセンター前に弾き返し、1対1の同点となる。ルーカスは送球の間に2塁を狙うがタッチアウト。それでも同点となり試合も盛り上がる。
3回裏を終わった時点で約10分の給水タイムが入る。選手の熱中症予防のための取り組みで、観客に向けても水分補給を呼びかけるアナウンスが流れる。この日の宇都宮は猛暑日になったようで、スタンドにいるとたまに涼しい風も吹き抜けるが暑いのは暑い。私もいったん球場の外に出て、普段買うことのないかき氷を注文する。かき氷には体温を下げる効果があり、熱中症の防止にもなるそうで、たまにはこうした食べ物も食わず嫌いすることなくいただかなければなと思う(ビールでは体温は下がりません)。
4回表、群馬はジョニーにレフトへの大きな当たりの二塁打が出る。その後、李のヒットで二死1・3塁と勝ち越しのチャンスだが齋藤がしのぐ。
5回表、群馬先頭の青木が内野安打で出塁し、続く大堀のバントは齋藤が二塁へ送球するも間に合わず野選となる。井野口は空振り三振だが、次の速水にレフト前のヒットが出る。これで2対1と群馬が勝ち越し、さらに返球が悪送球となる間にもう1点が入る。3対1とここで群馬がリードする。
次の富田のところで齋藤は降板し、右腕の前田につなぐ。一死1・3塁のところで打席にはジョニー。ここで栃木ファンのオッサンから「4・6・3!!」という声援が飛ぶ。これは4-6-3のゲッツーでチェンジという願いなのだが、そのジョニー、注文通りに4-6-3のゲッツーに倒れる。これには三塁側スタンドからオッサンに「予言通りや」との大きな拍手が起こる。
試合中盤の休憩直後の6回表、群馬は一死2塁から笠井がバントを決める。これを前田が一塁に悪送球して、ランナーが生還する。4対1、栃木の守備の乱れに乗じたものだが群馬がリードして終盤に向かう。
7回表には群馬が井野口のヒットをきっかけに、富田のタイムリーで5対1と点差を広げる。このまま群馬が楽勝なのかなと思わせる。
7回裏、栃木のラッキー7には黄色のジェット風船が飛ぶ。この風船もスポンサーからの提供によるもので、GOLD LUSHの面々が7回表の前からスタンドに出向いて観客一人一人に無料で配って回っていた。普段ジェット風船は飛ばさないが、独立リーグなら話は別だ。球団歌『金色の勇者』が流れるのに続いて風船が宇都宮の青空に舞う。
7回は文字通りラッキー7だったようで、栃木は連打で二死1・3塁のチャンスを作り、1番内山のヒットで5対2と追い上げる。続く途中出場の松井にもヒットが出て二死満塁。ここで西岡を迎える。ホームランバッターではないが、ここで本塁打なら6対5と一気に試合がひっくり返るチャンスである。コールも「ホームラン、ホームラン、西岡!」と送られる。
しかし期待の西岡は1塁ゴロに倒れ、結局無得点。これで勝負は決まったかと思えた。7回裏を終えたところでまたも給水タイムとなる。
5対2で群馬が3点リードのまま9回裏を迎え、マウンドには群馬3人目の田代が上がる。先頭の途中出場の山﨑がレフトへの二塁打を放つ。一死後、内山の四球で1・2塁として、打席には代打の申。ここで申がレフト越えの二塁打を放ち、5対4と追い上げる。さらに申が生還すれば同点となる場面で、三塁側スタンドも大いに盛り上がる。
そして迎えるは、というか、こういうところで打順が回ってくるのが西岡。2塁走者が還れば同点というチャンスだったが、力のないレフトフライに倒れる。結局この日の西岡は無安打に終わったのが残念である。
さらに同点のチャンスはタイムリーも放っているルーカスに託されたが、センターフライに倒れて試合終了。5対4、群馬が辛うじて逃げ切った形である。それでもこの首位攻防戦の結果、群馬が栃木を上回ってBCリーグ後期東地区の首位に立った。終わってみれば群馬12安打、栃木10安打という乱打戦であった。
試合終了後、栃木が敗戦だったにも関わらずグラウンドにはお立ち台のボードが運ばれてきた。この試合のMVPのスポンサー表彰ということで、まあ、敗戦だったから敢闘賞といっていいだろう。9回に代打で2点二塁打を放った申と、先発で5回途中降板の齋藤の二人が受賞した。
試合終了後はBCリーグ恒例のお見送り。ただここが他と違っていたのは、単に「応援ありがとうございました」とお辞儀をするのではなく、参加者全員とハイタッチをするもの。混乱を避けるためか西岡や寺内監督の姿はなかったが、他の選手やさらにはGOLD LUSHの面々が一列に並ぶ。そしてこれも恒例なのか、ハイタッチと同時に花の種の袋を配るサービス。ただハイタッチが終わると選手たちも急いで球場に引き上げてしまい、サインを・・というわけにはいかなかったのが残念である。岡田コーチのごとくは両手を前に出してきっぱりと拒否していた。
この試合唯一いただいたのが先発の齋藤のもの。将来NPBへの復帰はあるのだろうか。
そろそろ宇都宮市街に戻ろうと思う。やはり栃木もクルマ社会なのか、西川田の駅に向かって歩く人の姿はまばらだ。
サインの件はおいておくとして、この日観戦した印象として、球団もファンも盛り上がろうとあれこれ行われているのが見てとれて、地域にもすっかり根付いているように思えた。この日の観客数は1800人を超えていて、BCリーグの試合としても結構多かった。
また機会があれば他の関東北信越のチームの主催試合も観たいものである・・・。