7日目の敗戦で白鵬の今場所後の横綱昇進が絶望にはなったものの、連日熱戦が繰り広げられる大相撲秋場所。今日の中日、国技館に見物に出かける。2年ほど前に一度国技館で観戦したことがあるが、テレビとはまた違った熱気や迫力を感じたものだ。久しぶりに、その雰囲気を楽しもう。こう書くと「お前の場合は相撲を観に行くのではなく、土俵に上がって取るほうと間違われるだろう」という人がいるかもしれないが、決してそんなことはありません。
もっと早く思い立っていれば前売り券を購入することができたのだがすでに遅く、朝の8時に当日券を求めて国技館前に並ぶ。既に100人以上の行列ができている。当日限定販売の自由席(2階席の最上段)も買えるのだが、窓口で私の番になると、思わず前の指定席を買ってしまった。(指定席といっても後ろのほうで、もう少し上が自由席になるんだが・・・)
券も確保したことだし、もう入ってしまおう。入口でもぎり役を務めるのはなんと元高見山の東関親方。他のスポーツならこういうのはアルバイトのやる役と相場が決まっているのだが、これも「協会の人間が自分たちで運営する」ということの一つか。場内案内係なども親方衆がやっていたりする。
さて、朝の8時半といえばこれから序ノ口の取り組みが始まるところ。場内はもちろん数えるほどの客しかおらず、これから次代の関取を目指す若い力士たちが次々に土俵に上がっては、今日の一番をこなす。もちろん力士の名前を知るはずもなく、手元の取組表と一々見比べながら確認するのだが、そのうち「大きいほうと小さいほう」とか、「左脚に包帯を巻いているほうと右腕にサポーターを巻いているほう」という見方になる。こうした若い力士にも懸命に声援を送る人たちに比べればいい加減な観戦である。
観客が少ないのをいいことに、2階のイス席から1階に降りて、いわゆる「土俵だまり」の席に行ってみる。周りにはどう見てもマス席の客でもなさそうな人たちが、同じようにやってきている。中には靴を脱いで完全にくつろいでいる客もいたが・・・。土俵上に繰り広げられているのがまだ修業中の力士といっても、お互いの身体がぶつかる音、息づかい、スピードというのは見ていて迫力ある。やはり「高い席」だけのことはある。
中日ということで、「新序出世披露」も行われる。もっとも9月場所のこととて、披露されたのは2名だけ。いずれも外国出身と思われる容貌。前相撲はずっとこの2人だけでとっていたのだろうか。
幕下以下の力士は1場所に7番取るが、その取組は「成績が同じもの同士」の対戦が基本という。つまりは、1番1番がふるい落としだ。その中で勝ち越した者、最終的に勝ち残った者が各段優勝となり、上位に上がることができる。サバイバル性といえば、関取以上の厳しさがあるかもしれない。何せ7番しかないのだ。米大リーグの1A~メジャーへの昇格の道、ゴルフのプロテスト、将棋の「奨励会」・・・いろいろとサバイバルの世界があるなと、そんなことを考える。
本場所の1日、朝の8時半から始まって結びの横綱戦まで、200番以上の取組がある。ただその全てを見るというのも疲れるから、こうして土俵だまりにおじゃましたり、その他館内を歩き回る。希望者は一旦外に出て再入場も出来る仕組みだ。
館内で食したもの。まず、国技館名物のやきとり(冷めても味がちゃんと利いていて美味い)、「白鵬弁当」(ゆで野菜にモンゴル塩を使用しているとか)、そして「ちゃんこ」。「ちゃんこ」は限定販売で、かなり行列した上でありついた一品である。野菜と肉がバランスよくとれるし、味付けもほどよい辛さで、これは力士ならずとも食が進むだろう。
さて取組のほうはそうする間に進み(十両の取組はほとんど見ていなかったが・・・)早くも幕内力士、そして横綱朝青龍の土俵入りである。テレビならちょうど放送席が替わるとかいう時間で、一区切りになるのだが、本場所では淡々とこれらの行事が続くような感じに見える。朝から国技館で過ごして、ようやく幕内にたどり着く。さすがにこのあたりになると、通路に場内整理係や警備員が配備されており、ちょっと土俵だまりにお邪魔するという芸当ができなくなる。
そして幕内の取組。やはり、はじめのほうの序ノ口、序二段の力士とは身体の張りや艶が全然違う(照明のせいもあるのだろうが)。やはり序二段の力士はこれからの原石、そして幕内力士の身体は一定の完成作品である。それは取組の内容にも現れている。
ただ、幕内の取組になって、時間の経つのが急に早く感じられた。永谷園の懸賞が5本もかかる高見盛の例の所作もあったり、安馬のひたむきな一番に大きな拍手が送られたり、玉乃島の豪快な「きめ倒し」にどよめいたり、白鵬が把瑠都をあっさりしりぞけたり、結びの朝青龍戦には26本の懸賞がかかり、スポンサー名を読みあげるだけで時間いっぱいぎりぎりになったり・・・。テレビで見ていれば仕切りの時間というのが長く感じることがあるのだが、生で見ているとすぐに時間一杯になるように私には感じられた。
そして最後は朝青龍が玉春日を問題なくくだし、中日の全取組が終了。外はすっかり暗くなり、雨も降り出していた。長い一日にも思えたが、あっという間に一日が終わったなという感もある。大相撲のチケットは決して安くないが、1日ずっと過ごせばそれ相応の値段を払ったのかな?という気がする。1場所に1回とか、そのくらいでまた来たいものである。
優勝争いは依然混沌としている今場所。さて優勝は・・・やはり横綱が最後に締めることになるのかな?明日からも目が離せない。