2024年の札所めぐり、JR西日本「駅からはじまる西国三十三所めぐりデジタルスタンプラリー」において残り訪問すべき駅が(しかも遠方に)ある中、スタンプラリーの期限も近づいている。その中で、こちらはこちらで・・ということで九州八十八ヶ所百八霊場めぐりである。
前回の九州八十八ヶ所百八霊場めぐりは2023年12月、えびの、都城と回り、第42番・弘泉寺、第41番・天長寺をたどって、宮崎県がコンプリートとなった。帰りは、南宮崎から日豊線全線開通100周年記念のイベント列車にて日向の車窓を楽しむことができた。
そして、今回の第14回、舞台はいよいよ九州南端の鹿児島県に移る。札所順でいえば、加治木にある第43番・法城院、そして鹿児島市に入って第44番・不動寺、第45番・大歓寺と続く。鹿児島県に入り、鹿児島市内に入ることで九州八十八ヶ所百八霊場めぐりもようやく折り返しとなる。もっとも、鹿児島県を薩摩、大隅で分けた場合、第43番・法城院を除いて全て薩摩に属する。そして大隅半島の札所がゼロなのに対して、薩摩半島は鹿児島、指宿、枕崎、そして伊集院と四隅に札所がある。他にも薩摩北部、かつてローカル線も走っていたエリアにも札所があり、鹿児島といってもほぼ薩摩だが、また何回かに分けて訪ねることになる。手始めの鹿児島行きは1月27日~28日の1泊2日とした。
まず目指す第43番・法城院の最寄り駅は日豊線の加治木。駅から徒歩5分ということで、この後は鹿児島市街なので今回も公共交通機関での巡拝が可能である。加治木は鹿児島からも近く、九州新幹線で鹿児島中央までアプローチして、日豊線に乗るのがよい。
ただ、八十八ヶ所めぐりとともに九州一周となると、鹿児島からアプローチした場合、前回までで九州東部をたどってコマが進んでいる都城、えびの、(あるいは志布志)とつながらなくなる。ここはもう一度、東からアプローチして加治木に向かうことにする。
その九州へのアプローチだが、前回と同様、九州新幹線で新八代に向かい、高速バス「B&Sみやざき号」に乗ることにした。前回はえびのインターで下車したが、今回は都城北まで進む。
もっとも、そこに至るまでにいろいろ検討した。関西から夜行フェリーに乗って九州に上陸する・・というのも旅の楽しみとしたい思いもあった。神戸発宮崎行き、あるいは大阪発志布志行き。土日の1泊2日しか時間が取れない現状だと、土曜日にいったん関西に向かい、神仏霊場めぐりをこなしてかあらフェリーに乗船。日曜日の朝に宮崎または志布志に上陸して西に向かうとして、時間的に加治木の法城院を回るのが精一杯で、そのまま鹿児島中央に向かって新幹線に乗ることになる。フェリー乗船はそれはそれで貴重な体験で面白いと思うが、南九州の滞在が弾丸ツアー並みの時間しかない。結局、関西、九州とも中途半端でしかなくなる。
都城北は高速道路上のバス停で、都城市街へは宮崎~都城間の路線バスで出ることができる。ただ、都城に着いたらそのまま日豊線で加治木に向かうかといえばさにあらず、ここで、ローカル線の吉都線、肥薩線への乗車を組み込む。これで九州一周のコマを鹿児島につなげることにして、27日の宿泊地は肥薩線と日豊線が合流する隼人駅・・の隣、霧島市の中心である国分とした。この地区に泊まるのは初めてで、一献の店も予約。フェリーで1泊とは別に、大隅のどこかの町に泊まることで楽しみも深まりそうだ・・。
いつも以上に前置きが長くなったが、1月27日、広島6時53分発「こだま781号」で出発する。日本旅行の「バリ得こだま」プランで西に向かう定番の列車である。8両編成のうち、指定席は5・6号車のみだが、同プランの利用客とおぼしきそこそこの乗車がある。とりあえず、終点博多まで700系レールスターの指定席でのんびり過ごす。
8時21分、博多に到着。次に乗るのは8時40分発「さくら403号」。博多始発で、JR九州の800系が使われているが、列車名は「さくら」である。途中の筑後船小屋、新大牟田、新玉名を通過するからだろう。
前回新八代に到着した後は、えびのインターに停車する便に乗るべく「B&Sみやざき号」を1本遅らせて、駅前の「松中信彦スポーツミュージアム」にも立ち寄ったのだが、今回はそのまま接続する9時40分発「B&Sみやざき403号」に乗車する。新幹線駅といっても小ぶりなもので、乗り場も出口からすぐのところにあるので、乗り継ぎは10分もあれば十分。ただ気になるのが、「B&Sみやざき号」が高速道路での渋滞等により新八代に遅れて到着した場合。バスの接続を新幹線が待つとは思えない。
さて車内は半数あまりの乗車率である。九州新幹線と宮崎方面のアクセス向上として開かれたのが高速バスの「B&Sみやざき号」で、九州新幹線と組み合わせた割引きっぷも発売されているが、普通の週末ならばバス1台でまかなえるくらいの需要ともいえる。
八代インターから九州自動車道に入る。前回は雨の中だったがこの日は晴天で、周囲の景色も見通せる。煙がたなびくのは日本製紙の工場だろうか。八代にも札所が1ヶ所あり、そのために八代に来る日もいずれあることだろう。
2020年の豪雨で氾濫した球磨川、そして被災して現在も不通の肥薩線の線路を見た後、九州道は球磨川から離れて山間を橋脚とトンネルで突き抜けていく。人吉まで最短距離で結ぶかのようである。九州道が開通した時点で肥薩線はローカル線になったといえるが、球磨川沿いの車窓、人吉~吉松間のスイッチバック、ループ線を絡めた車窓は観光路線として存在感を示していた。SLをはじめとした観光列車も人気だったが、2024年に入っても運休は続き、路線をどのような形で再生するのかも決まっていない。
九州八十八ヶ所百八霊場めぐりでいえば、人吉、そしてくま川鉄道沿線にも札所が固まっている。さすがに公共交通機関だけで回ることは難しく、レンタカーのお世話になりそうだ。
バスは矢岳越えの区間、6200メートル余りの加久藤トンネルを抜けて宮崎県に入る。
えびのジャンクションから宮崎道に入る。右手には霧島の山々がそびえる。このままバスで都城に向かうが、その後、吉都線で同じように霧島の山々を車窓で楽しむ予定である。えびの~都城の往復は無駄足とも思われるが、そこはローカル線にも乗るということで自分としては納得である。
都城インターの手前、高速道路上の停留所である都城北に到着。時刻表上ではこの便の到着予定は11時09分。都城駅方面に向かう宮崎からの路線バスは11時13分発とあるが、路線バスの乗り場までは200メートルあまり離れており、そもそも乗り継ぎは可能なのかと思っていたが、高速バスの到着が若干遅れた時点でアウト。まあ、もともとこの乗り継ぎは想定していなかったのだろう。
宮崎道の高架下のバス停に到着。バス停の名称は「高速都城北入口」。ちなみに今回、都城北から都城駅へのアクセスを探すのに苦慮した。宮崎交通のホームページなどにバス時刻の検索メニューがあるのだが、都城北からの路線バスを見つけるのが困難だった。検索メニューで「都城北」と入れたのではヒットせず、「高速都城北」と入れなければエラー画面となる。何やねんその柔軟性のない検索システム・・。
高速都城北入口の停留所から、11時43分発のバスに乗る。国道10号線に合流し、道の駅も経由する。
霧島酒造の工場の横も通る。九州、特に南に来ると焼酎は焼酎でも芋焼酎しかないお国柄だが、よりによってここが(宮崎県ながら薩摩の芋焼酎の)総本山か。この先も一献が控えているが、さすがに鹿児島まで来れば芋焼酎の軍門に下らなければならないかと、ある芋、もといある意味腹をくくるしかないかと思う。
・・・いや、単に芋焼酎が苦手なだけ。
都城駅に到着。ちょうど昼時なのと、この先吉都線、肥薩線で飲み鉄を楽しむための原材料を仕入れに、駅からいったん市街地方面に向かう・・・。