それは突然やってきた。
昨日はACMAの、今期最後(ここアメリカは夏休みまでが1年で、夏休み後が次の1年の始まりになる)の演奏ミーティングがあった。
それに行く前ぐらいから、身体の調子がやや落ちているような気がした。
残念ながら、昨日のコンサートの出演者の中には、どうしようもなく聞き苦しい演奏をする人が数人居た。
ただ単純に間違える、というのではなくて、多分、練習の段階から、いろんなことを疎かにしていて、音楽をちっとも尊敬していないだろうな、と思える演奏。
上手下手以前の問題。もし、作曲者が、自分の作った曲をあんなふうに弾かれちゃってるのを聞いたら、きっとすごく悲しむだろうなあ、なんて思いながら聞いた。
やれやれ、とっくに死んじゃってる人達の曲でよかったよ、ほんとに……。
演奏会の後、遅れてやってきたAちゃんも交えて、ACMAの残ったメンバーと一緒にベルギーレストランに行った。
旦那はあまり高くなくて、けれども美味しくて、雰囲気の良いレストラン、というのを見つけるのが得意。
なので、ACMAのメンバー、特にプレジデントのアルベルトから、ミーティング後のレストラン指名の係を仰せつかることが多い。
昨日のレストランも然り。美味しいビールと一品物に、みんなもかなり満足げな様子。
少し早めに席を立ち、Aちゃんを送りがてら、彼女のアパートに少し寄ることにした。
その頃になると、かなり頭がぼんやりとしてきて、部屋のソファに横になった途端に、どうにも目が開いてられないほど眠くなった。
彼らの話し声と、アメリカンエアコンのやかましい音を子守唄のように聞きながら目を閉じていた。
ひとんちのソファでうたた寝するなんて初めてだよな……と思うのだけど、どうしてもこうしても目が開かない。
けれども旦那がいつもの時差ボケパターンに襲われたら大変だ、ということで、彼女のアパートを10時半頃に出た。
運転中、眠気に襲われ始めた旦那を叱咤激励しながら、なんとか起きて無事に家に辿り着き、旦那は二階の寝室で、わたしは一階のゲスト部屋で寝た。
そして……、
わたしはなんと、旦那がいつもの時間に起きて、朝の運動や食事をして、後ろの庭の芝刈りをして、もうそろそろお昼ご飯を食べようかという時間まで寝た!?
そして、起きてからも、眠くて、怠くて、重くて、どうしようもなくしんどくて仕方が無かった。
少し用事をしては横になり、食べては横になりして、なんとか回復しないもんだろうかと様子を伺っていた。
今日は夕方から再びマンハッタンに行き、Aちゃんに昨日渡し忘れた日本からのお土産を届け、アンドリューとモーリーの引っ越し祝いに行く予定になっている。
嗚呼、でも、なんてこった?!どないもこないも、怠過ぎて身体が言うことを聞かない。
こんなのはすごく久しぶり。重たい漬物石を腹に抱えるナスビと化した自分。
祝いに来るわたし達のために、今朝から料理の準備をしてくれているであろうアンドリューとモーリーのことを思う旦那は、知識の限りを使い、あの手この手でわたしの回復のために頑張ってくれるのだけれど、
当のわたしはというと……まことに不甲斐無いことに……どうしてもナスビから人間に進化できずに居た。
「仕方ない……ボクひとりで行ってくる」と言う、旦那の苦渋の判断を聞き、ウォ~ッとばかりに奮起してヨロヨロと立ち上がり、四つん這いで階段を上がり、下着を鷲掴みにして、熱めのシャワーを浴びた。
吐き気が少々、頭の鈍痛も少々、倦怠感も少々、胡椒も少々、なかなかの味付けになった半ナスビ人。
「行ける、かも……」
「ほんと?ほんとに?ほんとに大丈夫?」
嬉し気な旦那の声に頷くと、いきなり出発準備が完了。髪の毛も濡れたまま、顔も洗ったままで出発。
アンドリュー&モーリーの新しい新居となった、マンハッタンの最北端、ワシントンハイツにあるアパートメントは、大理石と板張りの床で統一された、それはそれは広々としたすてきな部屋だった。
主寝室のシャワールーム、独立したバスルーム、それから新しいシステムキッチンもすべて新品。大理石の自然なヒンヤリ感がとても気持ちいい。
アンドリューが手作りしたという棚も圧巻。どこかのショールームで見て気に入った、アンティーク調の棚を真似て作ったという代物。
ガスの配管を軸に、特別のペンキを塗った木材を使って、それはそれは渋い棚を作り上げていた。
ショールームでは50万もしたその棚とほとんどそっくりに作られた手作りの棚。かかった費用は3万円?!
もちろん、作るにあたっては、手間と苦労がしっかりかかってはいるけれど……。
それをしげしげと見ながら褒めまくるわたしを、チラチラと心配気に盗み見する旦那。
こういう作業にはてんで興味が無い旦那は、日曜大工に励む男を夫に持つ妻を、ちょいと羨ましがるわたしの心の中がすっかり見えている。
できちゃった結婚のふたりにとって、9月に生まれてくる赤ちゃんのため、というのが、新しい住居探しの最も大切な理由。
ほんの目と鼻の先に、まるでリゾート地のような広大な公園があり、マンハッタン島の中でも一番海抜が高いこともあって見晴らしも満点。
悠々と流れるハドソン川が一望できる散歩道や、絶妙な距離間をもって置かれたベンチなどを見ながら散策した。
小さな子供連れの家族がとても多くて、これもきっと彼らがここを選んだ理由のひとつになっているんだろうな、と思った。
マンハッタン中央まで地下鉄で約半時間。その地下鉄の駅も、家を出てすぐの所にある。
引っ越しにあたり、処分できる物を徹底的に処分してきたモーリーと、持ち物すべてをそのまま持ち込んできたアンドリュー。
モーリーとふたりっきりになった短い時間に、彼女のちっちゃいけれどけっこう数はある不満話を一気に聞いた。
ある夫婦の始まり始まり~。幕が開いて、物語が始まった。でもきっと、彼女なら大丈夫。
アンドリューの数多いガールフレンドを逐一見てきたわたしが、あなたには太鼓判を押させてもらいます!と思いながら聞いていた。
夕方まで蒸し暑くて、どこの家の窓でもクーラーがガンガンついていたのに、夜になって外に出たら、そこは巨大な冷蔵室と化していた。なんてこった……。
そんな異様な寒さの中、アンドリューの持ち物の巨大で真っ黒なファイルキャビネットを、うちに婿入りさせようということになり、無理矢理車に詰め込もうとするも失敗。すっかり身体が冷えてしまった。やばい……。
もうナスビには戻りたくない。ボケナス、おたんこナス、まうみナス。
旅行前の突貫仕事(伴奏バイトに多過ぎた演奏会)、強行スケジュールの旅行、それと更年期のホルモンの大暴れ、そして多分、事故の後遺症。
今日もまた、今度は真っ昼間から、隣のプールでカモ夫婦が優雅に泳いでいた。
ちょっとあんたも、わてらみたいにゆっくりしなはれや~。
そう言われているような気がした。
昨日はACMAの、今期最後(ここアメリカは夏休みまでが1年で、夏休み後が次の1年の始まりになる)の演奏ミーティングがあった。
それに行く前ぐらいから、身体の調子がやや落ちているような気がした。
残念ながら、昨日のコンサートの出演者の中には、どうしようもなく聞き苦しい演奏をする人が数人居た。
ただ単純に間違える、というのではなくて、多分、練習の段階から、いろんなことを疎かにしていて、音楽をちっとも尊敬していないだろうな、と思える演奏。
上手下手以前の問題。もし、作曲者が、自分の作った曲をあんなふうに弾かれちゃってるのを聞いたら、きっとすごく悲しむだろうなあ、なんて思いながら聞いた。
やれやれ、とっくに死んじゃってる人達の曲でよかったよ、ほんとに……。
演奏会の後、遅れてやってきたAちゃんも交えて、ACMAの残ったメンバーと一緒にベルギーレストランに行った。
旦那はあまり高くなくて、けれども美味しくて、雰囲気の良いレストラン、というのを見つけるのが得意。
なので、ACMAのメンバー、特にプレジデントのアルベルトから、ミーティング後のレストラン指名の係を仰せつかることが多い。
昨日のレストランも然り。美味しいビールと一品物に、みんなもかなり満足げな様子。
少し早めに席を立ち、Aちゃんを送りがてら、彼女のアパートに少し寄ることにした。
その頃になると、かなり頭がぼんやりとしてきて、部屋のソファに横になった途端に、どうにも目が開いてられないほど眠くなった。
彼らの話し声と、アメリカンエアコンのやかましい音を子守唄のように聞きながら目を閉じていた。
ひとんちのソファでうたた寝するなんて初めてだよな……と思うのだけど、どうしてもこうしても目が開かない。
けれども旦那がいつもの時差ボケパターンに襲われたら大変だ、ということで、彼女のアパートを10時半頃に出た。
運転中、眠気に襲われ始めた旦那を叱咤激励しながら、なんとか起きて無事に家に辿り着き、旦那は二階の寝室で、わたしは一階のゲスト部屋で寝た。
そして……、
わたしはなんと、旦那がいつもの時間に起きて、朝の運動や食事をして、後ろの庭の芝刈りをして、もうそろそろお昼ご飯を食べようかという時間まで寝た!?
そして、起きてからも、眠くて、怠くて、重くて、どうしようもなくしんどくて仕方が無かった。
少し用事をしては横になり、食べては横になりして、なんとか回復しないもんだろうかと様子を伺っていた。
今日は夕方から再びマンハッタンに行き、Aちゃんに昨日渡し忘れた日本からのお土産を届け、アンドリューとモーリーの引っ越し祝いに行く予定になっている。
嗚呼、でも、なんてこった?!どないもこないも、怠過ぎて身体が言うことを聞かない。
こんなのはすごく久しぶり。重たい漬物石を腹に抱えるナスビと化した自分。
祝いに来るわたし達のために、今朝から料理の準備をしてくれているであろうアンドリューとモーリーのことを思う旦那は、知識の限りを使い、あの手この手でわたしの回復のために頑張ってくれるのだけれど、
当のわたしはというと……まことに不甲斐無いことに……どうしてもナスビから人間に進化できずに居た。
「仕方ない……ボクひとりで行ってくる」と言う、旦那の苦渋の判断を聞き、ウォ~ッとばかりに奮起してヨロヨロと立ち上がり、四つん這いで階段を上がり、下着を鷲掴みにして、熱めのシャワーを浴びた。
吐き気が少々、頭の鈍痛も少々、倦怠感も少々、胡椒も少々、なかなかの味付けになった半ナスビ人。
「行ける、かも……」
「ほんと?ほんとに?ほんとに大丈夫?」
嬉し気な旦那の声に頷くと、いきなり出発準備が完了。髪の毛も濡れたまま、顔も洗ったままで出発。
アンドリュー&モーリーの新しい新居となった、マンハッタンの最北端、ワシントンハイツにあるアパートメントは、大理石と板張りの床で統一された、それはそれは広々としたすてきな部屋だった。
主寝室のシャワールーム、独立したバスルーム、それから新しいシステムキッチンもすべて新品。大理石の自然なヒンヤリ感がとても気持ちいい。
アンドリューが手作りしたという棚も圧巻。どこかのショールームで見て気に入った、アンティーク調の棚を真似て作ったという代物。
ガスの配管を軸に、特別のペンキを塗った木材を使って、それはそれは渋い棚を作り上げていた。
ショールームでは50万もしたその棚とほとんどそっくりに作られた手作りの棚。かかった費用は3万円?!
もちろん、作るにあたっては、手間と苦労がしっかりかかってはいるけれど……。
それをしげしげと見ながら褒めまくるわたしを、チラチラと心配気に盗み見する旦那。
こういう作業にはてんで興味が無い旦那は、日曜大工に励む男を夫に持つ妻を、ちょいと羨ましがるわたしの心の中がすっかり見えている。
できちゃった結婚のふたりにとって、9月に生まれてくる赤ちゃんのため、というのが、新しい住居探しの最も大切な理由。
ほんの目と鼻の先に、まるでリゾート地のような広大な公園があり、マンハッタン島の中でも一番海抜が高いこともあって見晴らしも満点。
悠々と流れるハドソン川が一望できる散歩道や、絶妙な距離間をもって置かれたベンチなどを見ながら散策した。
小さな子供連れの家族がとても多くて、これもきっと彼らがここを選んだ理由のひとつになっているんだろうな、と思った。
マンハッタン中央まで地下鉄で約半時間。その地下鉄の駅も、家を出てすぐの所にある。
引っ越しにあたり、処分できる物を徹底的に処分してきたモーリーと、持ち物すべてをそのまま持ち込んできたアンドリュー。
モーリーとふたりっきりになった短い時間に、彼女のちっちゃいけれどけっこう数はある不満話を一気に聞いた。
ある夫婦の始まり始まり~。幕が開いて、物語が始まった。でもきっと、彼女なら大丈夫。
アンドリューの数多いガールフレンドを逐一見てきたわたしが、あなたには太鼓判を押させてもらいます!と思いながら聞いていた。
夕方まで蒸し暑くて、どこの家の窓でもクーラーがガンガンついていたのに、夜になって外に出たら、そこは巨大な冷蔵室と化していた。なんてこった……。
そんな異様な寒さの中、アンドリューの持ち物の巨大で真っ黒なファイルキャビネットを、うちに婿入りさせようということになり、無理矢理車に詰め込もうとするも失敗。すっかり身体が冷えてしまった。やばい……。
もうナスビには戻りたくない。ボケナス、おたんこナス、まうみナス。
旅行前の突貫仕事(伴奏バイトに多過ぎた演奏会)、強行スケジュールの旅行、それと更年期のホルモンの大暴れ、そして多分、事故の後遺症。
今日もまた、今度は真っ昼間から、隣のプールでカモ夫婦が優雅に泳いでいた。
ちょっとあんたも、わてらみたいにゆっくりしなはれや~。
そう言われているような気がした。