3.11。
東北が、日本が、甚大な被害と痛みを被り、今だ大勢の方々が、それまで享受していた暮らしを取り戻せないまま苦しんでおられる。
そんな、言葉に言い表せないような辛さと、数などにしてまとめてはいけない理不尽さが蔓延している状態の日々が、ちょうど1000日を迎えた日に、
安倍という男が頂点に立つ政権が、非常に暴力的に、己が政治的に得た数を使い、
世にも愚かな、法ともいえない、提案すること自体が間違っている法案を、ゴリ押しして通そうとしている。
自民党の、いや、官僚の、いや、アメリカ政府の、長年抱き続けてきた夢。
すべての主権者である国民を圧殺し、自分たちの思うがままに国を操る。
こんな悲惨な世界に暮らすことを、未来の日本の人たちに押しつけるのはやめよう。
もう、放射能汚染と原発のゴミ以上に、負の遺産を残すのはやめよう。
立ち上がって、玄関から、会社から、学校から外に出て、国と自分と家族を守るために、声をあげよう!
内田樹氏のブログ『内田樹の研究室』から、転載させていただきます。
文字数の制限で、二回に分けさせてもらいます。
↓以下、転載はじめ
12月3日の「特定秘密保護法案に反対する学者の会」記者会見
12月3日の記者会見の様子を、今回も、集英社の伊藤君が文字起こししてくれました。
いつもありがとうございます。
僕は行けませんでしたが、平田オリザさんや、平川克美くんや、安藤聡さんも行ってくださって、たいへんな熱気で、メディアも驚いていたそうです。
では、その熱気を感じてください。(文中の強調は内田によるものです)
■2013年12月3日特定機密保護法案に反対する学者の会記者会見@学士会館■
●司会挨拶●
司会・佐藤学(学習院大学教授、教育学):
特定機密保護法案に反対する学者の会、本日2006名の学者の声明をもって、私どもで記者会見を行いたい、というふうに思っております。
最初にですね、第一列に並んでいる方々のご紹介を、ちょっとご紹介を致します。
向かって左側から、東京大学教授,政治学がご専門の宇野重規先生。
続きまして、慶応大学教授の小熊英二先生。
それから、専修大学教授の廣渡清吾先生。
それから、立教大学名誉教授の栗原彬先生。
それから、大阪大学教授の平田オリザ先生。
東京大学教授の大沢真理先生。
それから、東京大学教授の小森陽一先生であります。
本日司会は、私、学習院大学の佐藤学が行います。
専門は教育学です。
去る28日ですね、11月28日、私ども、特定機密保護法案に反対する学者の会として、31名でございましたけれども、連名で記者会見を行いました。
報道関係の方達に、広く報道して頂いたことを、心から感謝申し上げます。
この31名は、ノーベル賞受賞者2人(白川英樹、益川敏英)を含む、さまざまな学問領域の中で、今日の事態に、非常に危惧を抱いた学者の声として、発表したわけでございます。
市民としての学者の声、と言った方がよろしいでしょうか。
それまで、各学会等々ですね、法学界とか、あるいは政治学関係で開かれた等々の学会意見に於いては、さまざまな取り組みが行われましたけれども、
学会を横断的に行うという意味で、31名の声明は意味があった、というように考えています。ちょうど、強行採決が行われた、2日後でございました。
そういうこともございまして、私どもも、緊迫した中で、声明を発表することができました。
そのときですね、当初、率直に申し上げて予定していなかったんですが、その28日頃ですね。
その当日頃から、賛同人というのが、どんどんどんどんメールに飛び込むような事態になりまして、
急遽、28日の場で、第二次発表を行おう、と。
12月3日、本日ですね、午後4時まで、この声明に賛同する方々を募って、
第二次発表を行おう、ということを急きょ決めまして、今日に至ったわけでございます。
わずか5日間でございました。
そのわずか5日間の間に、ご覧頂きますように、2006名の学者の方々、さらには、大学院生、学生多々、あるいは、専門職関係の方々の市民の方々を含め、
このほかに、483名の方が、本日の正午までですね、賛同頂きまして、本日の記者会見に至ったわけでございます。
非常に短期間でありながら、非常に急速な声が上がっていることを、まずご理解頂きたいと思います。
それほど、声を上げなかった方々も含め、我々、学問に携わるものは、今日の事態に、極めて危機感を抱いています。
戦後最大の民主主義の危機というふうに、私たちは呼んでいるわけですけれども、そういう危機感を抱いて、本日に臨んでおります。
なお、私どもの後ろにいる方々は、この賛同人の2006名の中から、本日、一緒に列席をすることで、ご一緒させて頂いている方々でございます。
それでは、まず、私の方から、声明文を読み上げます。
そのあと、何人かの方々に、発言を求めていきたいというふうに思っています。
(声明文読み上げ)
*声明文は、特定秘密保護法に反対する学者の会、公式サイトをご覧ください。
●賛同人の見解●
佐藤学:
それではですね、この賛同に、本日からですね、前回は31人の会でございましたが、
本日、この場をもってですね、2006人の会、というふうにさせて頂きたいというふうに思います。
最初にですね、この31人にも加わって頂きました栗原彬先生の方から、一言お願いしたいと思います。
栗原彬(立教大学名誉教授、政治社会学):
栗原彬と申します。
わたしは、政治社会学者ですけれども、学者としてよりも、一人の市民として、この法案に反対致します。
その理由を申し上げます。
この法案というのは、この私たちの声明の中にもありましたように、特定秘密の範囲を、無限にたてかえにすることはできる訳ですね。
それで、その結果、つまり、例えばテロの抗議を巡って、昨今話題になっていますように、
行政府が、恣意(しい)的に、これを取り締まろうと思えば、もう簡単に取り締まりができる。
そういうふうな法案である訳ですね。
これは、私たちがよく知っている、山口県の上関町の上関原発を巡っての、中国電力の最近の対応が、
なんといいますか、行政府とか企業と、それが加害者であって、それで市民が被害者であるという、そういう構図が逆転しているんですね。
これは、30年間にわたって、原発立地に反対してきた人たちがいる訳ですけれども、その中から4人の市民を選んで、それを裁判に訴える。
つまり、企業が、工事を妨害したと、そういう理由をくっつけてですね、異議申し立てをする市民を、訴訟に持って行く。
こういう逆転現象ですね。
これを、スラップ訴訟というふうにいう訳ですけれども、これと同じ事が、この本案によって行われようとしている。
それで、
監視されるべきなのは行政府であるのに、逆に市民が、とりわけ異議申し立てをする市民が、取り締まりの対象になっていく。
そういう、逆転が行われている訳ですね。
しかも、上関原発のように、
訴訟に持って行かなくても、取り締まりができるという、ですね、
そういう恫喝(どうかつ)的なものです。
実際、これは公聴会の意見を無視する、それから、国際的な人権団体の異議申し立てを、また無視する。
これは、ある意味では当然であります。
なぜならば、そういう市民の意見を聞いて、行政府が自分たちの政策を変えていく、法を変えていくというふうなことではなくて、
逆に、
この法っていうのが、が市民を取り締まる、そういう方向に向かっている。
そういう、
逆転した法って言いますか、そういうものですね。
これは、現代の治安維持法です。
つまり、これは、やっぱり治安立法なんですね。
治安立法なんですよ。
それで、
しかも、これはナチの全権委任法に限りなく近いんです。
つまり、行政府が、これが特定秘密だ、これは特定秘密に触れている、というふうに判断すれば何でも、それが取り締まりができるっていうね、ちょっとものすごい法な訳ですね。
こういうふうな法を認める訳にいかない。
市民として、この
異議申し立て、
デモンストレーションとか
意見表明っていうのはですね、
こういう公的に認められている市民参加の、
私たちの権利の一端なんですよね。
これが、取り締まりの対象になるような、こんな法なんて、冗談じゃないと言えます。
私は、これは反対です。
佐藤学:
それでは宇野重規さん、次にお願いします。
宇野重規(東京大学教授、政治学):
私は、このような場に立つ資格はないものと思っておりますが、
2000人を超える全国の研究者と共に、声を上げたい、意思表示をしたいという一念で、この場に参りました。
私は政治学者です。
政治学者として、いろいろな問題点に関して、より個人的に意見を持っておりますが、必ずしもこういう形で、意思表明をしようとは思いません。
ただ、私、今回に関しては、
これは政治、あるいは民主主義の、基盤そのものを危うくしかねない。
こういうものを座視するならば、それは政治学者として、自らの任務を座視することになると思って参りました。
今年になって私は、差別撤廃の東京大行進という、
ヘイトスピーチに対抗するデモにも賛同致しましたが、
あれは、要するに、
民主政治に於いて、所属、意見の違いのある人間を認めない、おまえはいなくなれ、という、
これは、民主政治の基本ルールの違反である。
これを許す訳にはいかない。
そして今回、この特定機密保護法案とは、まさに政治における、あえて言えば、政治における真実というのは、どのようにして明らかにされねばならないのか。
さらに三権分立。
こういう、
政治における基本的な土台が、この法案によって危ぶまされるのではないのか。
そのような危惧を、どうしても私は否定することができません。
政治において、秘密が必要だ。
すべてを公開することはできない。
このように政治家は言います。
確かに、少なくとも、
同時代的には公にできない、そういうような秘密もあるのかもしれません。
しかしながら、私は、
これは極めて限定的に解釈されるべきだと思っております。
これが無限に解釈されたとき、市民が政治を判断する上で、最も重要な情報、これが市民に与えられない。
そのような中で、
政治に意思決定を行われるということは、
我が国の歴史を振り返るまでもなく、大きな不幸の原因となろうとしている。
その意味で、
無限に秘密を拡大することは許されない。
さらにそれは、
仮に、同時代的には公開できないとしても、それは歴史の中で、必ず検証されねばならない。
その意味で、果たして、この法案を推進する政治家たちが、自らが歴史において裁かれる、歴史という法廷の前に立つ、
それぐらい、どうしても秘密にしなければいけない、自分は政治的生命を賭けても、そう判断する。
それだけの覚悟があって、やっているのか。
そうではなく、ただ、普通にやっていればいい、当たり前のことをやっていれば処罰されない。こういうふうに、多くの政治家は言います。
しかし私は、
何が普通か、何が当たり前かを、政治家によって判断されたくはありません。
もう一つ、権力分立です。
私は特に、政治学の中の政治思想史を研究しております。
政治思想史を研究している人間として、
権力というものは、他の権力によってチェックされない限り、かならず暴走する。
この政治学の教えを、大切に思っております。
今回の法案、もしこのまま通りますと、
一つ目はまず、立法権の側からによる、例えば国政調査権、あるいは議会に於いて、秘密をもし明らかにした場合、
それに対する議員の付帯特権を含め、
果たして立法権が、行政権の暴走を防ぐことができるのか。
行政権が秘密立法的に判断する、かつ、それをチェックするシステムは、行政権内部にしかない。
そして、最終的に、それが司法の場に於いて、果たしてもたらされるのか。
そして、司法の場に持ち込まれた時に、果たしてそれは、秘密という名の下に、いろいろなところが黒字で消されたままになっているのではないか。
それが、権力というシステムの崩壊につながりかねない。
そういう意味で私は、この三権分立というのを、昨今の風潮ではますます軽視されがちですが、大切にしたいと思っております。
そのような意味でも、私はこの法案は、このまま通すことを許す訳にはいかない、と思っております。
以上です。
佐藤学:
続きまして、大阪大学の平田オリザさんです。
平田オリザ(大阪大学教授、劇作・演出):
大阪大学の平田です。
諸先輩、専門の方々を前にして、私がここに座らせていただいているのは、私が、学術の世界と芸術の世界、両方に籍を置いているからだと思っております。
私たち芸術家はよく、
炭鉱のカナリアに例えられる訳ですけれども、
悪政が広がる時、一番最初に表現の場を失うのが、私たち芸術家です。
この演劇の世界に、昔から、道化というのがよく出てくる訳ですね。
この道化っていうのは、「王様は裸だ」と秘密を、おちゃらけながら、暴いたりするのが役割なんですけれども、
それで大様の癇(かん)に触れて、よく首をチョンッとはねられたりする訳ですけれども、
これは、道化が生きられない世の中みたいなのは、やっぱりよくない訳ですよね。
そういうことは、社会にどうしても必要な存在だったと思っております。
世の中の多くの方は、特定秘密保護法案、これが通ったからといって、すぐに何か、その圧迫されるようなことはないだろう、と思われているところもあるかもしれませんが、
私は今日、大阪大学から来ておりますので、皆様もご承知のように、
大阪市、大阪府は、ですね、もうこの2年間、圧政の状態にある訳です。
例えば、先週、ある大阪市役所の職員から、非常に厚い、長いお手紙を頂きました。
便箋7枚くらいの封書です。
なぜ封書なのか、ご理解頂けますよね。
要するにもう、
大阪市、大阪府に於いては、それが個人のアドレスであっても、メールは検閲される可能性があると、
大阪市、大阪府庁の職員は、もう萎縮をしてしまっている訳です。
こういう状態が、もうすでに起こっている。
これがこの、秘密保護法が通れば、これが加速されて、
要するに行政で、要するに学術は、芸術に、あるいは、表現の世界との重要な交流というのもほとんどなくなって、
今、先生方がおっしゃられた、
私たちが、その行政をチェックする、
あるいは、
行政が暴走したときに、それに対して異議申し立てをする機能というのが、明らかに失われる。
失われるどころか、その萌芽(ほうが)さえも摘み取られてしまう、
萎縮させられてしまう。
そういう現状にある大阪の人間としては、この法案は、非常に危険であると思っております。
これに反対し、抗議したいと思います。
大沢真理(東京大学教授、経済学、社会政策研究):
東京大学の大沢と申します。
経済学部出身の社会政策研究者です。
近年では、所得格差や貧困の問題に、発言をして参りました。
その経験から申し上げます。
つまりですね、貧困率。
貧困の程度というような、権力者にとっては往々にして不都合なデータが、
いかに長年の間、封じられてきたかということを、身をもって痛切に知っているという立場から、
やや、特定秘密保護法案というスペスティックなテーマにしたら、広げすぎているかもしれませんけれども、申し上げたいと思います。
それは今、平田さんがおっしゃった、窓口の、一線の役人を萎縮させ、ガードを強めさせるという事が、
特定秘密というような、おどろおどろしいと、一般市民の方は思われるかもしれません。
ですけれども、そのコアの秘密を取り巻いて、幾重にも、いかに不都合な例だというのが封じられていくかということを、知っているからでございます。
貧困率については、そもそも、「調査をするな」という圧力が、研究者に対してはかかっておりましたし、
国が集めた統計の中から計測をしようと思っても、その計算をするなという圧力が、公然・隠然と絶えず掛かっておりました。
それから、国際機関や、研究者が行った貧困率の計測に関しては、「統計が悪い」という批判、「使っている統計が間違っている」という批判が行われております。
国会答弁も行われました。
しかしこれは、白を黒とまではいわなくても、実は、緑のデータを赤と言いくるめてでも、
こういう貧困問題を直視したくないということが、長年、60年以上続いてきた。
この風向きが変わったというのは、民主党政権が発足をしたら、一ヶ月のうちに、厚生労働省が貧困率を計測して、大臣記者会見で発表をした。
それから、
生活保護基準以下の所得しかないのに、生活保護を受けている人は、そのうち何%しかないかというようなことも、
厚生省・厚生労働省は、60年以上計測してきませんでしたけれども、この計測というのもやられることになりました。
やっと風穴があいたと思った間もなく、今の状況ですから、こうやって一度風穴があいて、また呼び戻しという中で、一線の窓口のお役人たち。
それから、その
お役人たちと接触をする研究者の中でも、管理的な立場にある人たちが、いかに萎縮していくかということは、もう容易に想像がつくかと思います。
このことに限らず、研究、あるいは大学教育の世界で最近、
ボトムアップよりも、トップダウンというものを強く進めようという動きが、非常に急テンポで進んでいます。
高等教育、それから、それと結びついて切り離せない学問研究というものに対して、非常に圧力が掛かる恐れがあるということを感じる中で、
この特定秘密保護法案は、何としても廃案にしていかなければならないと考えて、賛同人になりました。
以上です。
佐藤学:
それでは、小熊英二さんです。
小熊英二(慶應義塾大学教授、社会学):
3つのことを申し上げます。
第一に、
この法案は不備が多く、外交や防衛の情報を扱った実務経験者からも、これでは外交・防衛の交渉に繋がらない、という批判があること。
第二に、
この法案が、半世紀以上を規定するにもかかわらず、あまりにも審議・議論が形式的、かつ拙速であり、議論が深まっていないこと。
第三に、
この法案を運用する可能性のある政治家の方が、非暴力でのデモンストレーションを、テロと同一視するような感覚でいるとすれば、運用にたいへんに不安が残ると、
以上のことから、反対に表明をすることに致しました。
なお、
(12月)5日と6日の、国会の正面の所で抗議集会が開かれる事が、外で詳細が配られますので、受け取って帰って頂ければ幸いです。
佐藤学:
それではですね、続きまして、東京大学の小森陽一先生、お願いします。
小森陽一(東京大学教授、文学):
私は文学研究者です。
文学研究は、なによりも、言葉を自由に使って表現する事が、前提になります。
そしてその事はまた、
民主主義の重要な前提として、今の日本国憲法の、前文の第一文で強調されていることを、改めて思い起こす必要があると思います。
つまり、
自由をもたらす恵沢を確保するということが、
政府の行為によって、二度と戦争の起こることのないように決意する、ということに繋がっている。
この文脈が、私は、日本国憲法の起草の中で、最も重要な指標のひとつだ、というふうに考えています。
しかし、私どもが出した声明にもあるように、
この特定秘密保護法は、
取材・報道の自由、表現・出版の自由、そして学問の自由、
つまり、
私たちが、憲法第二十一条で保障されている、民主主義の一番根本にある、
同時にまた、日本が戦争を遂行し続けた大日本帝国憲法下において、治安維持法が維持されていた体制において、とことん、権力によってつぶされ、命まで奪われていった、
そうした
表現の自由を、明らかに踏みにじるものだというふうに考えて、
私は、文学という自らの専門の立場からも、この特定秘密保護法を、断固として廃案に追い込みたいと思います。
そして何より大事なことは、
3.11以降、多くの普通の人たちが、自分たちの思いが、立法府で実現されていないと思えば、直ちに立法府に駆けつけて発言をする。
また、行政府が、きちっと自分たちの意向を代表しないのなら、首相官邸前で発言する。
そして、司法がおかしい判決を出したら、直ちに抗議する。
こういう、直接民主主義的な当たり前の行動が、行われ始めている中での、この特定機密保護法は、明らかに声を裏切っている。
すべての主権者である国民を圧殺する、そういう法律に他ならないと思います。
佐藤学:
それでは廣渡先生。
廣渡清吾(専修大学教授、法学):
廣渡でございます。
私は法律はやっておりますので、法案を読んで、ほとんどもう、欠陥商品なので、いちいちを取り上げると、解釈にきりがない。
これについては、刑事法学者の声明が、すでに出ておりまして、詳細に分析をしておりますけれども、
特徴的な、私が今、特に遺憾だと思っていることは、
政府の活動によって、政府が保有する情報、あるいは政府の活動から生ずる情報は、国民のものであるという原則が、
情報公開の原則の下で、確立したはずなのです。
それで、小熊さんがおっしゃったように、今、政府が外国と交渉しているとか、いろいろなクリティカルな状況の中で、
秘密にしなければならない事項は、全くない訳ではなくて、あると思います。
け
れども、原則と例外を逆にしてはいけないんですね。
ですから、
なぜ情報公開の原則があるか。
それは民主主義の基本であるからです。
したがって、国民の知る権利との調和を考えながら、
もし守らなければいけない秘密があるとすれば、非常に厳格なシステムを作って、秘密の保護をはかる、というのが普通の考え方です。
諸外国の立法は、そういう考え方を元に、つくられていると思います。
しかし、
今回の特定機密保護法案は、そういう水準に全く乗らない法案であって、
私は、
提案すること自体が、間違っている法案だと思います。
そこで、憲法の問題とちょっと引っかけてお話ししたいと思うんですけれども、
一番、
誰が見ても問題なのは、これは処罰をする法律ですね。
秘密を漏らしたり、秘密にアクセスしようとしたりする人を、処罰する法律です。
ですから、刑罰を科する法律です。
日本国憲法の三十一条は、法律の手続きによらなければ、刑罰を科すことはできない。
いわゆる、
罪刑法定主義の原則を定めています。
これは、この特定機密保護法案は、どういうシステムをそこで採ろうとしているか。
行政の長が、秘密を特定すると、それで、一つの犯罪構成要件ができる事になっています。
国民は、何が特定された秘密か、わかりません。
「
不特定特定秘密」です(苦笑)。
したがって、これはもっぱら、国民に対する関係、あるいは国会に対してもそうですし、裁判所に対してもそうですけれども、
行政、これは
政府が、都合の悪いことを隠すための法案になっている訳ですね。
それで、ひとつの犯罪構成要件ができることになっています。
そして、犯罪構成要件が不明確なままで、処罰をしようとしている。
従って、
法律学者は、この法案は、日本国憲法31条に違反している、というふうに言ってます。
政府の活動を、国民が批判的に検証するというのは、これは民主主義の基本です。
ですから、情報の管理は、さっきから何度も皆さんおっしゃってるように、民主主義の基本です。
従って、これにふさわしいものでなければならない。
全く落第の答案だと思います。
最後にもうひとつ。
この憲法違反の法案が、このまま参議院で可決され、日本の法律になったら、これは、憲法改正をせずに憲法を改正をしたのと同じことになりますですね。
憲法に違反した法律が国会で通ったら、それは、
憲法改正しないのに憲法改正したことになります。
ちょっと話が飛びますけれども、安倍内閣が、憲法9条の解釈を変えて、集団的自衛権を認めようとしています。
これは、元の法制局長官、歴代の法制局長官も、それは、憲法9条を無視することになると。
集団的自衛権を認めるならば、憲法9条を改正するのが筋である、と言っています。
従って、明示的に憲法を改正しないで、憲法の内容を形骸化するということに、この特定秘密保護法案も、集団的自衛権も、同じ筋道のものになると思います。
実は、これが、つまり、明示的に憲法を改正しなくても、憲法を実質的に形骸化させるという道が、麻生副総理が言った、「ナチスの手口」です。
以上です。
佐藤学:
もう、私もひとことだけ。
特定秘密保護法案が現実に発効する。
そういう事態を、ちょっと想定してみてください。
一番発効する可能性が高い状態、これは、集団的自衛権の行使です。
その
集団的自衛権の行使、つまり、日本の自衛隊が海外で戦争を行う、あるいは、戦争を誘発してしまう、そういう事態が生じたときに、
それがいったい、どういう根拠でその判断がなされてるのか、どういう情報に基づいてなされているのか自体が、国民には知らされない。
そうしますと、国民の知らないところでですね、あるいは、国民の意思決定の関わらないところで、戦争を起こすことが可能になるわけですね。
また、そこに巻き込まれることが可能になるのでありまして、これは最も、今回の特定秘密保護法案の、危険性の一番頂点にある問題だろう、というふうに理解しています。
それではですね、これだけの参列者がいらっしゃったものですから、全員というわけにはちょっといかないんですけれども、
何人かの方で、ぜひここでとおっしゃる方、挙手いただけますか。
短くお願いします。
2名から3名でお願いしたいんですが。
はい、所属とお名前お願いします。
●参列者意見●
タケウチ(科学者会議学会):
科学者会議学会のタケウチと申します。
なんか、ちょっと1年休会になって、名簿には入ってませんけれども、科学者会議学会のタケウチと申します。
私は、手短かに言いますが、この法案というのはですね、まさしく「亡国の法案」である。国を滅ぼす。
それは3点ある。
1つとして、
今まで諸先生方が言ってきましたけれども、これは民主主義を根本から否定するものであるということ。
2つ目として、
多分、もしこの法案が通るということになるとすればです、なるとすればですよ、日本から離れる人がどんどんどんどん増えてくるでしょう。
そういう意味の亡国です。
あと、第3点としまして、
これはあってほしくはないのですが、理性ではなくてですね、数の力で、数の暴力でもって決めた法案が通るっていうことになると、理性が蹂躙されるということになります。
ということは、極左と極右のですね、テロの応酬が、将来出てくることが十分考えられる。
これ、非常に、内戦状態に近いようなですね、危惧すべき状況です。
この法案っていうのは、この3つの点でですね、まさしく亡国の法案であって、デモクラシーの法案ではありません。
以上です。
佐藤学:
それでは続いて、お願いいたします。
よろしいでしょうか、ぜひ、遠慮なさ…はいどうぞ。
木下ちがや(明治学院大学非常勤講師、政治学):
木下ちがやと申します。
政治学を専攻しています。
私はこの3年間、ずっと、脱、反原発のほうに関わってきたんですが、その視点からして、何人かの発言がありましたけど、
まさに今回の法案と、そしてまぁ、石破さんの発言に対してですけども、やっとですね、この日本の社会の中で少しずつ、本当に直接、自分で声を上げていくっていうことをですね、地道に積み上がったきたわけですね。
本当にそれをですね、真っ向から突き崩すっていう内容に、ますます、時間が経つごとに明らかになってくるっていうのが、今の現状だと思います。
本当にもうこの数週間、今、特にSNS、ツイッターが発達しまして、いろんな議論がなされてますけども、
この2日ぐらい、急速にですね、この法案について危険だという(ことが)、一斉に広まってます。
恐らく、この数日に渡って、マスコミの方々も、恐らく、去年の官邸前抗議のように、どんどん人が増えてくる、どんどん人が集まってくるという光景を、必ず目にすると思います。
ですから、そのことを絶対見逃さないで、それを、そうした民主主義というのを、ぜひこれから数日間、
最後の焦点の視点で、取り上げていってほしいというふうに、強く要望します。
佐藤学:
では、あと、おひとりぐらいということで、よろしくお願いします。
岡田憲治(専修大学教授、政治学):
専修大学の岡田憲治と申します。
政治学を専攻しております。
短いメッセージをひとつだけ、贈らせていただきます。
この会合を報道なさっている報道関係者の皆さん、マスメディアの方々は、我々の友人です。
言葉を使って、世界をきちんと切り分けて、世界に何があるか、どんな問題があるか、
そのことをえぐり出して、共に考えるための素材を提供する、言葉をめぐって働く友人です。
あなた方が、この世の中に、なぜ存在する意味があるかということを、もう一度考えて、
お互い励まし合いながら、この問題を、きちんと世界に伝えてもらいたいと思うし、我々もそのために協力するので、頑張ってほしいのです。
以上です。