ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

牙をむく人でなしたちから、子どもを救えなくて、それで大人といえるのか?

2013年12月17日 | 日本とわたし




先週の水曜日に、マンハッタンの劇場で公開された『フタバから遠く離れて』というドキュメンタリー映画を観に行きました。
会場に入るのを待っている間に、制作者の舩橋監督の講演と懇親会があることを知り、こちらは日本語でオッケーだということで、またまた行ってきました。

講演は7時からで、ミドルマンハッタンにある『日本人会館』とやらで行われるとのこと。
普段そういう所に足を運ばないわたしは、そのビルのことを全く知りませんでした。
月曜日は、とりあえず今年中は、5時45分に終ることになっているので、45分から50分の間にやってくるバスがいつものように遅れるのを期待して、
雪と氷だらけの坂道を、バス停目指してダッシュしたのですが(心臓がヤバかった)……なんとあと10メートル、という所で、
目の前をスーッと、わたしのことなんか全く気にもしていない顔して(当たり前)、ものすごいスピードで走り去って行ってしまいました……。
なんで今夜に限って!と可愛らしい?悪態をつきながら、しょうがないので電車駅に向かい、6時半の電車に乗ることに。

電車が来るまで暇なので、雪だらけの駅をパチリ。


空には、とても高いところに、まん丸のお月さん。


雪というより白い氷。


電車が入ってきました。


初めて乗った時、この押しボタンのことを知らないで、延々とドアが開くのを待っていた自分を思い出します、これを見るたびに。


ペンシルバニアステーションからは、歩いて行くにはちょいと時間がかかり過ぎるので、地下鉄を乗り継いでいくかタクシーか、という苦渋の選択!
講演はもう始まっているので、エイッとばかりに奮発して、タクシーに乗りました。
もらったハガキには、15ウエストと書かれていたのだけれども、だからタクシーから降りて散々探したのだけれども、
どこにもそれらしきビルは見つからず、周りの、地元の人らしきおっちゃんの集団に尋ねたら、15イーストちゃうか、というヒントをもらい、
見つけました、やっとやっと。

ということで、30分近くも遅刻してコソコソっと入っていった部屋には、舩橋監督の話に熱心に聴き入る日本人のみなさんがぎっしり。
久々の日本オンリーの世界。

講演の内容を、手持ちのハガキ(この記事の一番上)の余白にできるだけ書き込んだんですけれども……足らん、全然!
まあでも、せっかくなので、とりあえずここに移しておきます。



・発表されている放射能汚染の核種が、セシウムに限られているが、他の核種の汚染状況も実は測られていて、それを政府は把握している。

・特にストロンチウムは、様々な都市に拡散していて、ホットスポット的な汚染が発生している。

・那須は乳牛で有名な土地だが、ストロンチウムの汚染が深刻である。けれども今だに牛乳が出荷されている。

・20ミリシーベルトの被曝量の強要は、とんでもない棄民である。


↑この、20ミリシーベルトという被曝量の強要が、人道上いかに許されないことであるか、ここでもう一度、先日の記事から抜粋します。

ベラルーシにおける、移住に関する基準

無人ゾーン:
1986年に住民が避難した、チェルノブイリ原発に隣接する地域

↓以下の土壌汚染はすべて、セシウム(Cs)、ストロンチウム(St)、プルトニウム(Pul)の三種、それぞれの密度が、きちんと提示されています。

移住義務(第1次移住)ゾーン:
Cs137 1480kBq/㎡以上(40/k㎡以上)
St90 111kBq/㎡以上(3.0/k㎡以上)
Pul 3.7kBq/㎡以上(0.1Ci/k㎡以上) 

移住(第2次移住)ゾーン:
Cs137 555~1480kBq/㎡以上(15~40/k㎡以上)
St90 74~111kBq/㎡以上(2~3/k㎡以上)
Pul 1.85~3.7kBq/㎡以上(0.05~0.1Ci/k㎡以上)

年間の被曝量は、5mSvを越える可能性がある。


移住権利ゾーン:
Cs137 185~555kBq/㎡以上(5~15/k㎡以上)
St90 18.5~74kBq/㎡以上(0.5~2/k㎡以上)
Pul 0.37~1.85kBq/㎡以上(0.01~0.05Ci/k㎡以上)

年間の被ばく量は、1mSvを越える可能性がある。


定期的放射能管理ゾーン:
Cs137 37~185kBq/㎡以上(1~5/k㎡以上)

年間の被ばく量は、0.1mSvを超えない

1ミリシーベルトの空間線量から5ミリシーベルトを超える可能性があるところに関しては、移住権利ゾーンという事にしていて、
5ミリ以上の空間線量がある場合は移住ゾーンと、単純に日本に伝えられているが、
でもそれは、3つの要件を合わせて判断されている

被ばく量の考え方

3つの要件を合わせて判断する
1.土壌汚染
2.空間放射線量
3.内部被ばく量


一定の土地に住んでいる住民を観察し、
ホールボディカウンターによる内部被ばく量の検査を、定期的に行い、
上の三つの要件を合わせて、年間5mSvを超えると判断されたら、強制移住、あるいは移住推奨がなされる。
そしてその費用は、国から支払われる

内部被ばく量に関しては、
子どもは20Bq/kg、大人は70Bq/kgを超えない方がいい、と考えられている。




↓引き続き、舩橋監督の講演から

・実はこの20ミリシーベルトの被曝を強要しようということに関しては、当時の政府の中でも非難が上がり、5に引き下げようとしたが、
経産省の方から、賠償金と避難民の多さは計り知れないとして、国体の維持のために中止せよとの通達が来た。

・国体とはなんだろう。人の命や健康と天秤にかけられるものなのか。国体、すなわちそれは国民ではないのか。

・少々の犠牲は仕方がない。そうやって国は、国民を見捨ててきた。

・双葉町の人たちには、月々10万円のお見舞金が支払われている。避難所にいる人には、プライバシーが保てないからということで、2万円増の12万円。
けれどもそれは決して補償でも謝罪でもなく、迷惑をかけているからという意味で出ている。

・避難した人たちが失った家に対しては、2011年3月10日現在の不動産評価を引用している。
その評価価格は個々に違うのが、双葉町は特に古い家が多く、二束三文で買い叩ける。

・今現在は、ひとまず6年は戻るまでにかかるので、待ってほしいと言われている。
お年寄りたちは、その6年を指折り数えて待っているが、6年経って本当に帰れるのかどうかなど、誰にもわからない。
もうすでに、3年近い月日が経とうとしているが、日本では、その待っている時間に対するチャージが全く無い。

・アメリカでは、こういう場合、待ち時間(日数)に対しても、賠償金が発生する。
待たせれば待たせるほど、その賠償にかかる金額が増えていくので、加害者は具体的に敏速に行動に出なければいけなくなる。
日本にもこの制度を作るべき。
待たされていることにチャージする。待たされていることを当たり前と思わない。

・日本は、平面的な対処には長けているが、5年10年30年という、長期的な展望を含んだ対処ができない。
そして、何事もきちんとという、妙な思い込みがある。
例えば、巨大な自然災害などで、食糧の補給が困難になった地域が発生した場合に、アメリカでは、ヘリコプターから食糧がドスンドスンと落とされる。
その半分は落下により使い物にならない可能性があったとしても、とりあえずゼロよりはまし、という現実を選択する。
日本ではどうだろうか。

・最も被害を受けた人たちが、最も無視されている。

・ニュースバリューが無くなる→メディアは無視する。
この双葉町を例にとっていうと、最初の1週間は、60名ものマスコミ関係者が押し寄せてきた。
次の週にはそれが半分の30人ぐらいになり、1ヵ月もすると10名、2ヵ月目には、僕ひとりになった。

・今も、避難されている方は、1万5千人にものぼる。
この人たちの、何の展望も具体的な形も持てないまま、ただひたすら自力で待たなければならない人たちの、個々の苦しみを、
自分のこととして考えて欲しい。

(映画の中で、たった2時間の帰省を許された町民の方々が、持ち帰りたい物のリストを作り、持ち帰った物があるが、それらの線量はどうだったのかと尋ねたら)
・すべての線量を測り、除染し、それでも中には持ち帰れなかった物もあった。
けれども、箪笥の中に仕舞われていた物などは、比較的線量は低かった。
中には、高級な酒をどうしても持ち帰りたいという人がいて、高線量のため、だめですと言われたのだが、
自分が飲むだけだ、飲みたいから飲む、といってきかなかった人もいた。

・僕は、こうしたドキュメントを作ることで、政治的メッセージを送ろうとも、世の中を変えようとも思っていない。
もし本当に、政治を変えたいと思うのであれば、立候補している。
自分が撮ったフィルムを観た人が、どんなふうに受け取るか、それもその人それぞれの自由であり、メッセージを強制するつもりもない。
けれども、この不条理は伝えなければならない。
国体の維持という、国民の犠牲をなんとも思わない現実、その現実に苦しめられる人たちの個々の姿を、映像を通して伝えていきたい。


外に出ると、寒さが一段と増していました。





こないだうちに来ていたこなっちゃんの友だち、ゆいなちゃんが、マンハッタンで2週間過ごし、うちの近くの空港から飛び立つというので、
アメリカ旅行最後の日を、うちで泊まることになりました。

朝6時起きやというのに、いろいろと話したくて、またまた夜更かし……。
夜中から降り始めるはずだった雪が、明け方からになり、わたしが運転する車よりもバスの方が安全だということで、
電車駅の前から出発する、空港行きのバスまで送り、ホッと一安心……とパソコンの前に座ったら……、

ゆいなちゃんのEチケットの領収書がポツンと……。

ぎゃ~!飛行機が予定通りに飛ぶかどうか確かめるのに借りたまんまで!
今どきは、パスポートさえあったらチケットは手に入るけれども、彼女がそれを承知してるかどうか……空港は英語ばっかりやしなあ……。
おまけに、バスの運転手に、この子はユナイテッドのターミナルで降りたいから、と伝えてあげようと思ってたのに、それも忘れたっ!

大丈夫かなあ……。

でもまあ、4週間の旅で得た英語力で、なんとか乗り切るであろうと、自分に言い聞かせ、二度寝をしました。

日本の若い子たち、そして小さな子たち。
わたしたち大人が受け継がそうとしている社会が今、どれほど狂っているか、どれほど命がおろそかにされてるか、
そのことをせめて、知らなければならないと思います。
知っても、別にそれがどうした、どうにもならないと思う人もいるかもしれません。
けれども知って、こんなことでは申し訳ないと思った人は、なにかひとつでも、自分ができそうなことを探してみませんか?
無理してしなくてもよい、続けられそうなことを、見つけてみませんか?
もうすでに、子供たちの疎開先として、受け入れ体制を作ってくださっている方々とつながる、
もうすでに、放射能汚染との関わり方を模索し、検査し、食物の流通を築いてくださっている方々とつながる。
なにも別に、新しいことをし始めなくても、そういった方々とつながって、自分にできることを手伝う。

せめて子どもたちの疎開だけでも、早急に実現させたい。

監督も、何度も何度も、そうくり返し言っておられました。

首相と呼ばれている男が、「中国の脅威」に対抗するために軍事力を増強する、Drone(無人航空機)を購入する、などと言い出したそうですね。
友人からのメールで知りました。
ついでですから、その友人のメールの一部をここに。
『被災者はほったらかし、福島は収束からほど遠い。
福島の子どもたちの年間許容放射能限度量の基準は上げ、医療費や補償金を減額し、その金をお前のおもちゃのために使うと~?
国民をあまりにバカにするのもいい加減にしやがれ!』

キチガイという言葉は、差別用語になっていて、使えないのだそうですけれども、わたしはこの男に限り、この言葉を使いたいと思います。
いつかきっと、独房に放り込んでやる。
コメント (8)
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