ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

人として、大人として、日本人として、

2013年12月15日 | 日本とわたし
チェルノブイリ事故が起こった時、わたしはお腹の中には、長男くんが育ってた。
妊娠がわかって間もなくのことやった。
ニュースで、事故の悲惨な様子や、強制避難を余儀なくされた人たちの、背中を丸めて歩く姿を、
ああ、わたしもこの子も、日本でよかったと、しみじみと感謝しながら観てた。

日本なら大丈夫。
安心で安全で、万が一事故が起こっても、あんなふうにはなるまい。

ああ、わたしはなんと、お気楽な母親やったことか。

それにしても、この人でなしっぷりは、想像の域をはるかに超えている。
そしてそれは、全く許されるべきものではないことやのに、日本国民と呼ばれる人たちは、
もう2年と9ヵ月もの間、許してるか、許すとか許さないとか考えることも面倒で、あるいは忙し過ぎるからという理由で放置してる。
一部の怒れる国民を除いて。

人道という観点からいうと、酷いことで有名な国が数カ国あるけれども、
今や日本は世界一!

ウソ八百並べた人間にまんまと騙されて(騙されてない、自発的に選んだと言いたい人もいるやろう)、原発ホイホイの自民党を返り咲きさせ、
それまでも充分見捨てられてた被災地の子供は、その様子をいったい、どんな気持ちで見つめてたのか。

もうこれ以上、子供たちを悲しませるのはやめよう。
もうこれ以上、子供たちを苦しませるのはやめよう。
自分のできること、それをしよう。

きーこさんが文字起こししてくださった、鎌仲監督の言葉です。
↓以下、転載はじめ

<チェルノブイリ事故27年の体験>保養所に行きビックリした200人の官僚たちは日本に戻ってきて何か言ったのか?
12/4鎌仲ひと­みさん(文字起こし)


2013年12月4日 参議院議員会館
子どもの安全な場所での教育を求める ふくしま集団疎開裁判 記者会見



文字起こし部分のYoutube→http://youtu.be/3qYP47HRpfo?t=2h19m1s

鎌仲ひと­み(映像作家):

みなさんお疲れ様です、鎌仲です。
今日は、資料の変わりに、チラシを持ってきました。



今回は、この映画の中で、ベラルーシを取材しておりまして、
それで2回にわたって、2012年と2013年にそれぞれ1ヶ月ぐらい、ゴメリ州を中心にして取材をしてきました。
その結果、今日の記者会見で、是非申し上げたい事があるという事で参りました。



先程みなさんがおっしゃってらした、
日本には、土壌をきちんと実測した放射能汚染地図がないという事なんですね。
ですから、汚染の広がりがどれ位のものになっているのか?という事が、
国民に広く、そしてしかも、汚染地に住んでいる当事者自身に、知らされていないという問題点があります。




これが、ゴメリ州の汚染地図で、ベラルーシが、国の科学者の総力を挙げて、
全国の汚染地図を、1986年から75年間分、作っています。
放射線核種が、それぞれ年月にしたがって、どれ位減衰していくのかという事を、単純に計算したものなんですけれども、
これが教育のある無しに関わらず、見れば、
「自分がどこに住んでいて、どれ位の汚染のところに今いるのか」ということが、一目瞭然になるんですね。
これを基本として、ありとあらゆる放射線防護の対策を立てている、これがベースだと。
まずこれを持たなければ、対策は立てられないんだよ」という事をおっしゃっていました。

それはですね、今、日本政府はつくっていないんですね。
作る気もないらしいです。

それで、刻一刻と、いま除染をしている訳ですけれども、
一方でベラルーシも取材していますが、福島にも行っています。
そうすると、除染をしているので、その線量が下がっているところもあるんですね。
そうするとですね、これは、ベラルーシの移住に関する基準を、ザクっと書いてあるんですけれども、

移住に関する基準 ベラルーシ

無人ゾーン
1986年に住民が避難した、チェルノブイリ原発に隣接する地域

移住義務(第1次移住)ゾーン
Cs137、St90、Pulによる土壌汚染密度が、
それぞれ1480、111、3.7kBq/㎡以上(40,3.0.1Ci/k㎡以上)の地域

移住(第2次移住)ゾーン
Cs137、St90、Pulによる土壌汚染密度が、
それぞれ555~1480、74~111、1.85~3.7kBq/㎡(15~40、2~3、0.0.5~0.1Ci/k㎡)の地域
年間の被曝量は、5mSvを越える可能性がある

移住権利ゾーン
Cs137、St90、Pulによる土壌汚染密度が、
それぞれ185~555、18.5~74、0.37~1.85kBq/㎡
(5~15、0.5~2、0.01~0.05Ci/k㎡)の地域
年間の被ばく量は、1mSvを越える可能性がある

定期的放射能管理ゾーン
Cs137による土壌汚染密度が37~185kBq/㎡(1~5Ci/k㎡)の地域。
年間の被ばく量は、0.1mSvを超えない



ウクライナもベラルーシも、
1ミリシーベルトの空間線量から5ミリシーベルトを超える可能性があるところに関しては、移住権利ゾーンという事にしていて、
5ミリ以上の空間線量がある場合は移住ゾーンと、単純に日本に伝えられていますけれども、
でもそれはこういうふうにですね、3つの要件を合わせて判断する、という事にしています。


被ばく量の考え方

3つの要件を合わせて判断する
1.土壌汚染
2.空間放射線量
3.内部被ばく量


一定の土地に住んでいる住民を観察し、
ホールボディカウンターによる内部被ばく量の検査を、定期的に行い、
上の三つの要件を合わせて、年間5mSvを超えると判断されたら、強制移住、あるいは移住推奨がなされる。

内部被ばく量に関しては、
子どもは20Bq/kg、大人は70Bq/kgを超えない方がいい、と考えられている。


一つは土壌汚染、そして空間放射線量、そして内部被ばく量なんですね。
これは、非常に流動的なデータです。
ですから観察をして、そしてどうもこれは1ミリシーベルト以上の被ばくをしてしまうな、年間。
5ミリ以上の被ばくをしてしまうな、年間。
なんかそこらへんにあるもので、一番リーズナブルに食べ物を食べて生活をしている一般の住民が
やっぱりこれだけの被ばくをしてしまうのであれば、移住しなければいけないんじゃないかという判断をですね、
やっぱり関係省庁が、とか関係の人達が、きちんと住民に勧告する、というシステムをつくっている訳なんですね。

日本にもこれは必須だ、と思います。

で、子どもは20Bq/kg、大人は70Bq/kgを超えない方がいい、と考えられていますが、
どうもですね、私が2012年に行った時には、私の内部被ばくはゼロだったんですね。
検出されませんでした。
2013年、9か月後に行った時には、20Bq/kgになっておりまして
私は非常に気を付けて暮らしているんです。
だけれども、それ位になってしまっているとすれば、
ま、それは、ベラルーシに行ったら、ベラルーシの物を食べていますけれど、
福島に行ったら福島のものも、出してくれらら食べずざるを得ないんですけれども、
でもこれはまんべんなく日本中に、やはり、外食産業の中に入り込んでいる可能性がある、と考えた方がいいですね。



それで、例えば中国が、輸入規制をしている日本の食品の放射線計測データというのを最近みますと、
やはり結構海産物がですね、冷凍物のものが、100を超えています
それは、日本の中でも出回っているんじゃないか?と、私は思っているんですね。

それでやはり、私が福島に通うたびに思うのは、
もうとにかく風化をしてしまって、「危険だ」という様な事は言わない方がいいと。
で、すごく、福島産のものも安全だし、規制値以内だから食べてもいいし、
空間線量も下がっているんだから、ここにずっと住んでていいんだ。
という声が、非常に大きい
んですね。

これは単にそれを言う人達だけに罪があるというよりは、
もちろんそれを言ってきた人にはすごい重大な責任があると思いますけれども、
でももうすでに定着させられてしまっている福島の人達は、
「自分たちがずっとここに住みたい!」っていう人達がすごく多いんですね。


ですから、私の提案としては、この『小さき声のカノン』という映画をつくっているんですけど、
1カ月に1回、鎌レポというのを出していますが
その1回目で、300km~600km、チェルノブイリ原発から離れた地点に住んでいる人々が、
いま、特に女性を中心にして、甲状腺障害、橋本病とか機能障害とか、線種とか腫瘍がですね、いますごく出ている
んですね。

これに関しましては、この担当しているお医者さんは、この女性は29歳で、腫瘍がすでにあるんですね。
でも、事故の時は3歳だったんです。



こういう感じで出てきているので、小児だけではなく、全人口の甲状腺癌というのは、
ガーーッと、小児甲状腺がんのピークが下がっても増え続けまして、いま高止まりをしています。
そしてそれは、広く認識されている考え方では、2086年、つまり100年、この状態が続くだろう
それは、小児甲状腺がんだけじゃないですね。
つまり、今27年経って、事故当時児童だった子どもたちが、ゆくゆくは、やがてすごいリスクを出してくる

それは、津波のように、まず第1波があり、第2波があり第3波があるように、
年齢ごとに、ちょっと時間差であらわれてくるという事が、すでに27年の体験の中から出てきているんですね。



たとえばウクライナではですね、この子はお父さんが、11歳の時に、30km圏内から3日目に避難したんですけれども、
100km離れたキエフで出会った女性と、結婚して生まれた子どもがですね、目と耳に障害があります。

そうすると、その障害を発見したお医者さんはすぐに、「これはチェルノブイリのせいだ」と断定しました。
そしてそれは認められて、ちゃんと医療補償をもらっているんですね。



で、やっぱり、免疫低下とか慢性疾患がすごく増えています
2代目3代目に増えているんですね。



だから、子どもたちの内部被ばく量を下げるためにも、未だに、27年経った今でも
この子なんか、15年経ってから生まれているんですけれども、保養を受けています



こういう保養施設が、50か所以上ベラルーシにあって、
毎年、4万5000人の子どもたちが、最低24日以上の保養を無料で受けています。
3歳から18歳まで無料です。

で、この持っているカルテに、何をしなさい、あれをしなさいというプログラムが書いてあって、
ひとりひとり自分のプログラムを持って、ここで過ごして、そして健康を維持するっていう事を、国家予算でやっているんですね。

で、日本とベラルーシは、2国間協定を去年結びまして、今年、初めての実務会議を、7月にやりました
私が「取材させてくれ」って言ったら、外務省は「ダメだ」と言って、取材させてくれなかったんですけど、
後で聞いたところによりますと、この保養所で国際会議をやった
そこに200人の、厚生労働省とか、環境省とか総務省とか、日本の官僚たちが来て
「すごいビックリしてた」って通訳の子が言うんですよ。
そこの通訳の子が、私の取材をずっとしてくれていたので、ま、1日だけ、その会議に貸し出したんですね。
そして帰ってきて、「すっごい、日本人がビックリしてた」て言うんですが、
その200人の官僚たちは、日本に戻ってきて、
「こんなことをベラルーシがやっていた」と、「私たちは見習わなければいけない」と言ったのか?


言ってないんですよ
私はこれを、すごく広めたいと思っています。

だから、この4つを、私は提案したいんですけれども、

・福島の子どもたちに甲状腺検査を実施しているが、福島の子どもたちだけではだめ。
茨城や群馬、東京など、首都圏や宮城県も含めた地域で、検査を受けられるようにすべき。

・甲状腺エコー検査とともに、血液検査や、ホールボディカウンターによる内部被ばく量検査などを、合わせて行うべき。

・東京大学の児玉龍彦先生は、放射線由来の甲状腺がん独特の、ゲノム異常があることを言及。
ゲノムの修復が3本になる特徴があり、
放射能汚染地域以外で起きた小児甲状腺がんには、この3本の過剰修復がない。
むげに放射能由来ではないと否定するのではなく、きちんと調べるべき。

・ベラルーシやウクライナでは、原発事故収束作業員の健康検査を全員、登録して続けている。
日本もそうするべき。



ベラルーシやウクライナでは、原発事故作業員の健康検査を、全員登録して今も続けているんです。
全ての人のカルテが、80万人分のカルテが、今もあります



だから、この子たちは、首都圏の子たちなんですけど、セシウムがオシッコから出てるし、



先程の方が、ここで匿名でお話しされた、その方がここで証言されたことが、全部起きています。
これはやっぱり、子供最優先で、そこに定住しようと決めた親がいたとしてもですね、
意識のある親も、意識のない親の子も、等しく保養や疎開ができる仕組みを、一刻も早くつくらないと
日本のすごく広範囲にわたって、子どもたちの健康がこれからますます悪くなっていく、というふうに危惧しています。

終わります。


質問
2:45:40

Q:
子どもたちの保養する先なんですけど、私たちが行っている保養との違いを教えていただきたい。
ベラルーシで行っている保養システムとの違い。

鎌仲:
日本の場合はなんかこう…短いんですよね。
この保養所は、2012年には取材が出来なくて、2013年に、駐日の在ベラルーシ大使が代わったんです。
で、新しい大使にお願いしたら、彼は科学者で、科学アカデミーの会員で、
10日ではダメだ。
24日、そうやって隔離されなければ、身体の中から放射性物質を出し切ることができない
それは、本当に長い試行錯誤で出てきた結論なので、
保養は24日以上というのが必須である。

あと、食べるものに関しても、ミネラルが豊富であるとか、
全てストロンチウムまで検査してクリーンなものを24日間必ず通しで食べさせるということ。
水も、ものすごくいいものを使っていて、
検査しまくって、環境が確保されたところに、健康増進を目的としてプログラムを組んでいると。
それは何故かというと、この27年間で、
子ども達の健康が、事故前から、総合的にものすごく損なわれているという認識を、国家が持っている
から。
もしそれをやらなかったら、4万5000人にケアをしなかったら、子どもたちの健康状態は下がっていく一方だからやっているわけで、
その、子どもたちの一人一人が、何らかのちょっとした慢性病を抱えてしまっているわけです、複数の
それに対応する療法をやっているんですけど、
それは、絶対化学薬品を使わない、自然療法でやっている。
だから、物理的にマッサージをしたり、温熱療法をしたり、あるいはプールの中で歩かせたりという、
症状に応じた、彼らがあみ出した、自然の健康増進法を適用して、24日間一人一人に合わせてケアをするという、それが保養なんですよ。

でも日本の場合は、ちょっとストレス解消に行きましょうとか、気分転換に行きましょう。
でも、それでも私は、短期であれば、精神的なプラス面はあると思うんですけれど、
でも本来のベラルーシがやっている保養というのは、もっともっと、毎時的に、子どもたちの健康にアプローチすることなんですね。


Q:
いま、4万5000という数字が出たんですけれども、それは何の数字ですか?

鎌仲:
毎年、それだけの子どもが、保養を受けているという事です。
でも、それにプラスして、実は海外にも沢山出ているので、最低国家が補償しているのが、年間4万5000人だということです。
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「歪んだ真実『ICRP物語』を元に原子力政策を推進。国民はこの催眠術から覚めなければならない!」

2013年12月15日 | 日本とわたし
市民のためのがん治療の会に掲載されていた、西尾正道医師の記事を紹介させていただきます。

福島健康被害、ICRP等国際機関基準で判断して良いか
『低線量放射線被ばく―福島の子どもの甲状腺を含む健康影響について」(1)』
(独) 国立病院機構 北海道がんセンター 名誉院長 西尾正道
 
福島第1原発事故後2年以上経過したが、なお今後の健康影響については、科学的な議論がなされていない。
『絆』が強調され、風評被害を抑える事や、地域再生だけを目的とした姿勢で、対策が進められている。
健康被害に関する知見は、基本的に、原子力政策を推進する立場で作られた、ICRP(国際放射線防護委員会)報告の情報で操作されている。
医療関係者の教科書も、事故後配布された学生向けの副読本も、ICRP報告の内容で書かれている。
本稿では、広島・長崎の原爆の調査データを基に、60年以上前に作られたICRPの健康被害の内容を、
最近の知見も加えて見直し、放射線の人体への影響について、根源的な視点で考えてみる。
また、40年間、小線源治療に携わってきた放射線治療医の実感から、内部被ばくや甲状腺の問題、そして今後の課題について報告する。
(西尾 正道)

なお、本稿は、全国保険医団体連合会『月刊保団連』臨時増刊号1125,2013.5.31に掲載されたものを、
同会のご厚意により、転載させていただきました。
ご協力に深謝いたします。
長文ですので、3週に分けて、連載させていただきます。(會田)

1. 放射線の基礎知識
放射線は、波長を持った電磁波と粒子線の二つに、大きく分けることができる。
紫外線以上の、波長の短いX線やγ線は、人体に当たれば電離作用があり、狭義の放射線(光子線)とされている。
また粒子線は、花粉よりずっと小さな粒子で、質量を持っているため、遠くには飛ばず、また、簡単な遮蔽物でブロックされる。
粒子線の典型的なものは、α線、β線で、体内ではα線は40μm(ミクロン)、β線はエネルギーによる違いはあるが、1mm~2cm程度しか飛ばない。
 
放射線の人体影響は、被ばく形態により異なる。
まず、外部被ばくと内部被ばくである。
外部被ばくでは、X線やγ線は、一回突き抜けて終わりだ。
医療用の使い捨ての注射器などは、20、000Gyの放射線を照射して滅菌し、使われている。
また、ジャガイモは、発芽防止のために、150Gy照射されたものを食べているが、これらの物に、放射線は残留していない
しかし、α線やβ線を出す放射性物質が、吸人・食事・創傷等より体内に入って、体内で被ばくする場合は、残留するし、継続的に被ばくすることとなる。
図1に、外部被ばくと内部被ばくの違いを示す。
 
被ばくの影響の時間的因子として、急性被ばくか慢性被ばくかにより異なるが、この線量率効果についてはよく解かっていない。
例えて言えば、お酒一升を一晩で飲むか、一ヵ月で飲むかの違いである。
また、被ばくした範囲では、全身被ばくか局所被ばくかが問題となる。
10Gy(X線では=10Sv)の線量を、全身被ばくしたら死亡するが、放射線治療では、病巣局所に、標準的に60Gy前後を照射するが、命取りにはならない。
今回の事故による被ばくは、慢性的な全身被ばくで、外部被ばくも内部被ばくも含んだ被ばくとなる。

図1 外部被ばくと内部被ばくの違い



2. ICRPが根拠としている原爆被害分析の問題点

現在の、放射線健康被害に関するICRPの根拠は、広島・長崎の原爆の、急性被ばくのデータである。
しかし、「被爆者」の定義が、爆心地から2Km以内の人とされたため、2km以上離れた人(この地点での推定被ばく線量が約100mSv)を比較対照としたものである。
そのため、原爆の被害は過小評価となり、また、2Km以遠の100mSv以下の人達は、きちんとした調査がされていない。
為政者は、「100mSv以下では発がんはない」と強調しているが、
国際的にもコンセンサスとなっている、「しきい値なしの直線仮説」の立場から言えば、
「100mSv以下は、調査していないから分からない」と言うのが正しい言い方である。
図2に「しきい値なしの直線仮説」の概念図を示すが、点線部分は不明、というだけなのである。

図2 放射線によるがんの発生率(しきい値なしの直線仮説)


ICRPの基本的な姿勢は、低線量であれば、傷ついた遺伝子は修復されるため、発がんはないとし、その閥値は100mSvと主張していたが、
100mSv以下の低線量でも発がんする、という多くの報告を受け、ICRP2007年勧告においては、1Svで5.5%の過剰発がんがある、としている
この直線仮説で考えれば、1億人が20mSv被ばくした場合は、11万人の過剰発がんが出ることになる。
 
しかし、放影研から発表された50年余の追跡調査の論文 (Radiation Research. 177:229-243、2012.)では、
被爆による発がんリスクは、ICRPの報告より、1桁多い被害が報告されている

 
放射線防護の原則は、確定的影響は起こさないことであり、低線量被ばくで生じる確率的影響は、社会全体で許容できる低い確率に抑えることである。
そのため、確率的影響は、医学的な概念ではなく、極めて社会的概念なのである。


3. 年間線量限度の根拠と国際機関の見解の相違
 
放射線の人体影響に関する報告は、ICRP勧告が国際的に採用され、わが国もこの勧告に洽って、法体系が作られている。
一方、チェルノブイリ事故で被害をこうむった欧州の環境派グループが中心となり、1997年に立ち上げたのが、ECRR(欧州放射線リスク委員会)である。
この科学者・専門家達は、疫学的な実態を重視し、ICRPのリスクモデルを再検討し、慢性被ばくや内部被ばくも考慮する立場である。
表1に、ICRPとECRRの違いを示すが、こうした立場の違いで、
今回の福島原発事故による、今後50年間の過剰発がん者予測において、
ICRPは6,158人 としているが、ECRRは原発から200km 圏内の汚染地域で、417,000件と予測している。

表1 ICRPとECRRの違い



4.『100mSv以下は安全』の嘘
 
100mSv以下でも健康障害が報告されているが、
国際的に権威を持っているICRPは、これらの報告に対して、科学的な根拠がないため、反論することもできずに無視する、という姿勢をとっている。

100mSV以下の被ばくでの発がん報告を、少し紹介する。
医療被ばくでも発がんが増加するとする、代表的な論文が出ている。
2004年に、CT等の放射線診断で、日本のがんの3.2%が、放射線診断によるものとの報告である。

また、モントリオールのマギール大学チームの論文(Eisenberg、et al: CMAJ 23:2160-9,2010.)では、
心筋梗塞になって、血管造影やCT等のX線を用いた検査・治療を受けた患者82、861名を追跡した結果、
12、020名にがんが発生
した、という調査より、10mSv増すごとに3%ずつ発がん率が高くなる、というデータを報告している(図3)。

図3 低線量X線被曝と発がんリスク


さらに、CT検査を受けた子供では、50mSvの線量で、有意に白血病と脳腫傷が増加し、約3倍になると報告(Pearce、et al: Lancet 380:499-505,2012.)されている。
 
また、15カ国の原子力施設労働者、407,391人の追跡調査の報告(E Cardis、et al : BMJ、 2005.6.29)では、
労働者の被ばく線量は、集団の90%は50mSv以下で、個人の被ばく累積線量の平均は19.4mSVであったが、
1Sv被ばくすると、白血病のリスクが約3倍となり、100mSv被ばくすると、白血病を除く全がん死のリスクが9.7%増加し、
慢性リンパ性白血病を除く白血病で死亡するリスクは、19%増加すると報告されている。
 
また、原爆披爆者とチェルノブイリの被ばく者と原発労働者の、合計407、000人を比較したデータ(Occup Environ Med. 66(12):789-96,2009.)では、
同じ線量を一度に浴びても、慢性的に浴びても、被ばく線量が同じであれば、
むしろ、長い期間だらだら被ばくしている方が、発がん率は高いと報告されている(図4)。

図4 原爆披爆者とチェルノブイリの被ばく者と原発労働者のERR


日本の原発労働者に関する調査結果も、2010年に放射線影響協会がまとめ、ホームページ(http://www.rea.or.jp/ire/gaiyo)で公開している。
このデータでは、日本の原発労働者20万3千人の、平均累積被ばく線量は13.3mSvであるが、
10mSvの被ばくの増加で、全がんの腫傷が4%えている。
個別にみると、肝臓がんが13%、肺癌が8%えていた。
この不都合な真実を、原発労働者は酒飲みや喫煙者が多いため、と説明しているが、
実際に原発労働者は、一般人との比較でも、喫煙率も飲酒歴も同程度である。



5. チェルノブイリ原発事故の教訓から
 
チェルノブイリ事故での小児甲状腺がんの増加は、事故後10年経過した1996年に、IAEAは認めざるを得なくなったが、それ以外の健康被害は否定している。
しかし、最近の多くの報告で、深刻な健康被害の実態が明らかとなってきた。 
「衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団」が、Dr.Olha V. Horishna著『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故の健康被害~』を報告書として提出したが、その内容は深刻である。
そこでは、高度汚染ほど、子供の染色体異常誘発因子の割合が増加していることや、
1987~2004の比較で、
・小児の新生物または腫瘍は、8倍以上増加 、
・小児の行動障害、及び精神障害は、およそ2倍、
・小児の泌尿器系、生殖器系の罹患率は、ほぼ7倍、
・先天性異常は、およそ5倍、
と報告されている。

さらにウクライナでは、毎年2000人を超える新生児が、心臓異常もしくは胸部異常で死亡しているとされ、
多指症、臓器奇形、四肢の欠損または変形、発育不全と関節拘縮症が、事故前より有意に増加している。
 
ソビエト連邦からウクライナが独立したことにより明らかにされた、ウクライナ政府報告書をもとに書かれた「チェルノブイリ原発事故・ 汚染地帯からの報告-チェルノブイリ26年後の健康被害」(2012年9月, NHK出版)でも、慢性疾患の増加が報告され、
事故後に生まれた子供の78%が、慢性疾患に苦しんでいるという(図5)。

図5 被曝した親から生まれた世代の健康な子供と慢性疾患を持つ子供の割合


そして、チェルノブイリ事故の健康被害に関する、調査報告の決定版とも言えるものは、
「Chernobyl - Consequences of the Catastrophe for People and the Enviroment (チェルノブイリ─大惨事が人々と 環境におよぼした影響)」で、
2010年10月に、ニューヨーク科学アカデミーより出版されたが、福島原発事故後まもなく絶版とされた、いわくつきの本である。
しかし関係各位の努力により、チェルノブイリ事故の起こった4月26日に翻訳され、「チェルノブイリ被害の全貌」(岩波書店)と題して出版された。
このヤブロコフら3人で著した報告書は、英訳されていない現地の論文約5000編や、病歴を参考として詳細な分析を行って書かれたものであり、
約300編の英訳された論文のみを参考としているICRP・IAEAの分析資料とは、比較できない労作である。
そこでも、現在汚染地域においては、健康な子供は20%に満たないと言う。
また、IAEAでは4000人死亡としているが、1986-2004年の期間に、医学データをもとに分析すると、98.5万人が死亡し、
その他に、奇形・知的障害が多発していることも報告している。
著者の一人であるヤブロコフは、「健康被害は多種多様で、がんはその十分の一にすぎない」とも述べている。
 
がんだけではなく、先天障害の発生や、他の疾患の増加も報告されている。
最近出た論文(Kar1 Sperling, et al:Genetic Epidemiology 38:48-55,2012.)では、西ベルリンやベラルーシュでは、事故後と次の年(1987年)には、
5mSv以下の被ばくでも、ダウン症候群の出生が非常に増えているとし、
100mSv以下では先天障害児は生まれないとする、IAEAの見解とはかけ離れた現実を報告している。


6. 甲状腺がんの問題について
 
セシウムはカリウムと類似した体内勤態であり、心筋も含め筋肉など、ほぼ全臓器に取り込まれる。
子供の場合は、甲状腺にも多く取り込まれる(図6)。

図6  病理解剖各臓器別セシウム137の蓄積


事故後に設立されたゴメリ医科大学初代学長である、ユーリー・バンダジエフスキー(病理解剖学者)は、
解剖して得た臓器のCs-137蓄積量と、その心電図異常の関係も報告している。
体内にCs-137が38~74Bq/Kg蓄積していれば、8割以上に心電図に異常が出現し、
74Bq/Kgでは、9割近くが心電図に異常を認めている。

図7 セシウム137蓄積の度合いと心電図変化のない子どもの割合
【%,セシウム137体内蓄積線量(Bq/kg)】



物理学的半減期8日のヨウ素が消失している現在でも、甲状腺癌が増加している問題は、
低線量被ばくほど有害事象は遅れて発症するという、放射線の晩期有害事象の特徴の可能性と、
セシウム汚染が続く地域に住み続けていることによるものという可能性は否定できない。また、放射線は血管内皮細胞に作用することから、
循環器疾患を中心とした慢性疾患の増加も、汚染地域に住み続けていることが原因として考えられる。
チェルノブイリ事故の教訓から、甲状腺検査が開始されたが、
福島県民健康管理センターで超音波装置による甲状腺検査が開始され、現在まで3名の甲状腺癌(疑い症例も含め10名)が発見された。
また、40~50%の高いのう胞発生率が報告されている。

この結果の評価は、議論のあるところであるが、ここでは私見を述べる。
 
100mSv相当の内部被ばくでも、事故直後に行われたサーベイメーターによる甲状腺測定では、0.2μSv/h程度しか検出できず、
またSPEEDIのデータ隠蔽などにより、被ばく推定線量すら明確ではない。
チェルノブイリ事故と比べ、放出量は約1/6と少ないが、汚染範囲が狭く、実質的には同程度の汚染である。
県民健康管理センターの見解は、放射線ヨウ素100mSv(等価線量)以下では発癌は無いとし、
甲状腺検査の目的は、保護者の不安の解消や、現時点での甲状腺の状態を把握し、
今後、長期にわたる甲状腺がんの増加が無いことを、確認するための調査であるとしている。

 
放射性ヨウ素の取り込みは、甲状腺がんの発生に関与していることは、よく知られている。
山下俊一らのチェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトの調査報告(「放射線科学 42巻10号-12号,1999.」)では、
結節患者の細胞診で7%に甲状腺がんがあり、がん患者の半数以上が、周辺リンパ節転移や肺などへの遠隔転移も認め、
半減期の長いセシウム-137などによる、慢性持続性低線量被ばくにより、
将来的には、青年から成人の甲状腺がんの増加や、他の乳がんや肺がんの発生頻度増加が懸念される
、と述べている。
山下俊一らの最終的なチェルノブイリの20万人の、子供達の大規模調査結果報告の論文(山下俊一:日本臨床内科医会会誌 23巻5号,2009.)の要旨を表2に示すが、
ここでは10~100mSvの間でも発がんは起こると、現在の姿勢とは異なる記載が見られる。

表2 チェルノブイリの20万人の子供達の大規模調査結果の論文要旨


通常の臨床では、3mm程度で所見として採用し、診療録に記録として記載し、1mm程度ののう胞は無視しているのが現状である。
しかし、福島県の健康管理センターの検診においては、1mm以上ののう胞までも検出率に加えているため、超高率となっている。
しかも、超音波検査の経験の少ない臨床検査技師を、掻き集めて行っている検査体制では、
1mm程度ののう胞は血管の断面と間違うこともあり、精度の高い検査とは言い難い

   
チェルノブイリ調査では、のう胞は5mm以上を採用(当時の検査機器の画像解像度が粗いため) しており、
その基準で結節も含め比較すると、
チェルノブイリ(事故10年後)では、5mm以上ののう胞:0.5%、5mm以上の結節:0.5%であり、
福島では1年後の検査で、5mm以上ののう胞:2.5%、5mm以上の結節:0.5%である。
のう胞発生率は、1年後にもかかわらず、となっている。
1年後と10年後の比較でもあり、最終的には経過を見て判断する必要がある。
ただ、チェルノブイリ地域の子供達の調査結果(のう胞:0.5%)や、非汚染地域の長崎県の子供達の検査結果(のう胞:0.8%)と比べて、極めて高い検出率となっている。
高いのう胞保有率に関しては、医学雑誌(Masahiro Ito, et al: Thyroid 5: 365-368, 1995.)に報告がある。
1993~1994年に検査を行った、ゴメリより放射能汚染が少ないモギレフ地域(12285名)では、
がんの発生は0%で、直径5ミリ以上のう胞発生率は0.16%であったが、
ゴメリ地域では、がんの発生は0.24%で、のう胞発生率は1.19%であった、と報告されている。

また、頸部周辺に、治療のため放射線照射歴のある患者の、甲状腺の切除標本の報告(Valdiserri RO, et al:Arch Pathol Lab Med. 1980 Mar;104(3):150-152,1980.)では、80%にのう胞形成が見られたが、
メイヨ・クリニックの剖検1000例中、甲状腺疾患歴や放射線照射歴のない症例では、15.6%であったという報告(Mortensen JD, et al:J Clin Endocrinol Metab. 15:1270-80,1955.)がある。
 
これらの報告から、放射線被ばくが多いほど、のう胞が多くなる可能性が示唆されており、
また5ミリ以上ののう胞から、1割程度は甲状腺がんが発生する、とも言われており、注意していく必要がある。
 
超音波検査の他の問題点としては、結節とのう胞のみの所見を拾い上げているだけの、単純な評価となっていることである。
超音波検査では、術者がリアルタイムで、プローブを動かして診断することが重要であり、
のう胞や結節の境界の形状不整や、境界不明瞭の低エコー腫瘤、 随伴する石灰化(微細~粗大)の有無や、内部に貫通する血流の有無などを判断して、総合的に診断するのが一般的であるが、
臨床検査技師によって行っているため、説明もせず、画像も渡さないので、不信感をつのらせるものとなっている。
また、調査研究として行われていても、「研究同意書」も貰わずに行っており、倫理規定違反の状態でもある。
こうした現状に対して、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」は2012年7月20日付けで、
抗議と要請文を小宮山厚労省大臣(当時)、福島県知事、山下俊一(福島県民健康管理センター長)の3者に提出したが、
その要請内容の主なものは、以下の諸点である。

① 超音波画像等の検査結果を被験者本人または保護者に渡すこと
② 全国の他施設でも甲状腺の検査を行えること(被ばく者の定義が必要)
③ 甲状腺超音波検査を低放射線汚染地域の子供達に実施し比較することすること
④ 医師法21条では診療録以外の画像資料は2年間の保存義務であるが、本検査の画像は50年間の保存とすること
⑤ 全国の甲状腺専門医による検査体制をつくり、全国の他施設でも甲状腺の検査が行えること(被ばく者の定義が必要)
⑥ 所見のあった被験者は年一回の検査をすること
⑦ 移住・転居しても検査の継続性を担保すること
などである。
 
福島県立医大の鈴木真一は、
「甲状腺がんは最短で4~5年で発見というのがチェルノブイリの知見。今の調査はもともとあった甲状腺がんを把握している」と述べ、放射線の影響を否定した。
1990年以前は、十分な検査が行われていなかったことも考慮すべきである。
しかし、臨床症状を呈して診断された小児甲状腺がんは、非常に稀であるが、
検診で、1万人に1人の頻度でがんが発見されても不思議ではなく、今後の経過を見ていくしかない。
移住・疎開している人々や、将来福島県外で生活する人々の事を考慮し、今後は全国の甲状腺専門医も関わった検査体制が必要である。


7.避難基準の問題
 
病院内の放射線管理区域の境界は、1.3mSv/3月間(年間5.2mSv)を超えてはならず、放射線障害防止法や電離則や医療法で規制されている。
空間線量率で言えば0.6μSv/hとなる。
しかし現在、為政者は、一般公衆の被曝限度を20倍に引き上げ、福島住民に強いている。
年間20mSvとは、内部被ばくは除外しても2.28μSv/hとなり、管理区域の3.8倍の線量となる。
放射線管理区域では、18歳未満の作業禁止(労働基準法)や、飲食の禁止(医療法)が定められており、国が法律違反をしている異常な状態である。
表3に、チェルノブイリと日本の避難基準の比較を示す。
日本政府は、20mSv未満の地域に住まわせている。
チェルノブイリでは、5mSv以上の地域は全員強制避難で、1~5mSvの地域は住んでも移住してもよいとし、本人に選択を認める移住権利ゾーンとしている。


表3 チェルノブイリと日本の避難基準の比較


また、チェルノブイリでの5mSvの考え方は、外部被ばくで3mSv、内部被ばくで2mSvと考え、合計5mSvとしているが、
日本では、外部被ばくだけの数値である。
 
英国(症例2万7千名 対 対照3万7千名)より、
自然放射線で5mSvを越えると、1mSvにつき小児白血病リスクが12%有意に増加するという報告(Kendall GM. et al. : 2013 Jan;27(1):3-9. doi: 10.1038/leu.2012.151. Epub 2012 Jun 5.)も見られる。
その他に、555kBq/m2以上の汚染地域では、10年後に乳癌の多発や、呼吸機能の低下、老化の進行などが報告されており、
日本もせめて、チェルノブイリに準じた対応をすべきである。



8. 食品汚染の問題について
 
チェルノブイリ事故後に、ヨーロツパからの輸入食品が汚染されていたことがわかり、輸人食品は370Bq/Kgに規制された。
しかし、事故直後に政府は、それを上回る暫定規制値を作った。
国際法では、原発からの排水基準は90Bq/Kgであるが、暫定規制値においては、2倍以上の放射性物質を含んだ水を飲料水とさせていた
セシウムの新規制値では、一般食品は100Bq/Kg、牛乳や乳児用食品は50Bq/Kgとされているが、
他の核種に関しては放置していることも問題である。

図8 食品中の放射性セシウムの規制値(単位:Bq/Kg)


規制値ぎりぎりの牛乳を、毎日200ml飲めば、毎日10Bq摂取することになり、1年程すれば蓄積して約1400Bqとなる(図9)。

図9 Cs-137を経口摂取した場合の体内放射能の推移


もちろん、Cs-137の体内蓄積量は代謝により異なることから、一概には言えないが、
体重20Kgの子供であれば70Bq/Kgとなり、高率に心電図異常をきたしてもおかしくない値となる。
 
暫定規制値を定めた時には、農産物の作付土壌の汚染は5000Bq/m2 以下と規制したが、
新規制値を守るためには、作付土壌に関しても規制すべきであり、20mSvまでの地域に住まわせ生産活動を行っていれば、
規制値を上回る生産物が産地偽装され、全国に流通するリスクは避けられない
こととなる。
 
事故後に、ドイツのキール海洋研究所は、日本近海と将来の太平洋放射能汚染長期シュミレーションを公表し、
「海のチェルノブイリ」であり、人類的犯罪である、と断罪している。

空気中に出された放射能雲が運んだ放射性物質が、太平洋の海水を汚染し、また原発から海に排出された汚染水が、黒潮によって拡散する。
現在、東電敷地内に保管されている高濃度汚染水も、最終的には海に流出することから、
生物濃縮した海産物を食す人間の、内部被ばくも深刻なものとなる可能性がある
10年後には、アメリカ西海岸からアラスカの汚染度が高くなり、米国の漁民から日本に対して、将来損害賠償の訴訟を起こされる事態もあり得る
 
国土を除染しても、最終的に、汚染水は地下や河川へ流れ、海、魚介類へ、人へと引きつがれる。
自然界にある放射性物質は、物理的な半減期でしか減弱せず、Cs-137も放射能の強さは、60年経過しても1/4にしか減弱しない。
長い海洋汚染との闘いが始まっている。



9. 解明されていない低線量内部被ばくの課題
 
1950年に発足したICRPは、第一委員会が外部被ばく委員会、第二委員会が内部被ばく委員会だったが、1951年に内部被ばく委員会を潰した
この時に、初代の内部被ばく委員会委員長だったカール・モーガン氏は、
「原子力開発の光と影」(昭和堂, 2003年) という著作の中で、
ICRPは、原子力産業界の支配から白由ではない。この組織が、かつて待っていた崇高な立場を失いつつある理由が分かる」と書いている。

内部被ばく委員会から報告書が出れば、原子力労働者の被ばく問題が浮上し、原子力政策を進めることができなくなるからである。
この時点から、内部被ばくを隠蔽する歴史が始まったと言える。
 
内部被ばくの測定は、ホールボディカウンタによるものが一般的だが、対外からの測定では、γ線だけしか測定できない。
また、精度の高いホールボディカウンタでも、検出限界は250~300Bq/bodyであり、最高精度でも5Bq/Kgが検出限界である。
 
α線やβ線は、尿や爪や毛髪や歯などの生体試料を採取して、バイオアッセイ(生物検定)や、質量分析器により測定するしかない
非常に手間暇がかかり、高度な技術が必要であり、検体をフランスやドイツや米国に送っている。
また、染色体異常のチェックも望まれるが、全く行なわれていない
なお、尿の測定で、尿から1Bq出たら、体内には大雑把な計算ではあるが、100倍~200倍あるとされ、
ホールボディカウンタより、50~60倍の精度で測定が可能と言われている。
こうした測定をする姿勢もなく、測定検査体制の構築すら考えない日本の現状は、悲しい限りである。

後略

最後に
 
著者は、2013年2月1日に、為政者に要請書を提出したが、その内容要旨を表5に示す。
今後の被ばく医療体制は、診療報酬を統一し、長期的な視点で行う必要がある。
しかし、原発事故関係の国民の健康管理業務は、厚労省から環境省に移管されたため、
医療のプロフェッショナルが不在で、診療報酬の取り決めもできない状態であり、全く無責任である
と言わざるを得ない。

表5 2013年2月1日に政府に提出した要望書の要旨


これを契機に、社会の在り方を、本当に真剣に考えるべきである。
人口が減少する国で、右肩上がりの経済成長は望めない。
真実を歪め、「ICRP物語」により原子力政策を推進してきたが、国民はこの催眠術から覚めなければならない。
脱原発・脱被ばくは、後世の子孫に対する責任であり、人間としての見識なのである。
(了)

略歴
西尾 正道(にしお まさみち)


1974年札幌医科大学卒業後、国立札幌病院・北海道がんセンター放射線科勤務。
1988年同科医長。
2004年4月、機構改革により、国立病院機構北海道がんセンターと改名後も、同院に勤務し今年3月退職。
がんの放射線治療を通じて、日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。
著書に、
「がん医療と放射線治療』、
「がんの放射線治療」、
「放射線治療医の本音-がん患者2万人と向き合って-」、
「今、本当に受けたいがん治療」の他に、放射線治療の専門著書・論文多数。
放射線の健康被害に関しては「放射線健康障害の真実」」(2012年4月刊、旬報社)を出版している。
「市民のためのがん治療の会」顧問、協力医。
コメント (2)
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米国『今年の冬はよく雪降る冬か』事情

2013年12月15日 | 米国○○事情
風邪をひいたこなっちゃんが、早めに旅を切り上げて日本に戻ったのは正解やったかもしれん。
あの日から以降、零下の毎日が続いてる。
こないだなんか、最低気温が零下8.5℃、最高気温でも零下4.5℃やったし……。

ちょっと前に、12月やというのに、こんな暖かくてもええのかしらん、などと言うてたのが夢のよう……。

昨日はまた、朝から粉雪がはらはらと舞い落ちてきて、外の動物たちはどないしてるんやろと窓から眺めてみたら、

いてるし……ほんで食べてるし……。


せっせとホリホリ。


カエデ爺さんのコブに乗っかってカリカリ。


再び戻ってホリホリ。


風邪ひきなや。

ピアノ部屋の窓から見える、2軒のおうちの裏庭も、すっかり雪化粧。


どこまで積もるんやろか……。


と、明けて快晴の今日。
樹氷がとんでもなく美しい!




おむかえのポンちゃんもキラキラ!


雪はこんくらい積もった。




木肌のなまめかしさよ。




パラパラと派手な音がするので見てみると、カエデ爺さんの氷が溶けて、霰みたいに落ちている。




つららに樹氷。自然はなんてべっぴんなんやろう。
 





ほんまは、今週末に、クリスマスツリーを買いに行く予定やったけど、
たいていは野外で売ってるので、氷と雪まみれになってる木を、うちまで運ぶことになるので断念する。
それに、ちょっと風邪ひいたみたいやし。

レモン湯飲んで、じっとおとなししとこ。
日本から戻った時差ボケ解消にと、雪かきやの、網戸とガラス戸の交換やの、旦那がせっせとやってくれてる。
感謝。
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