岩上氏の、沖縄の名護市長選挙についてのインタビュー記事を、ここに紹介させていただきます。
年明け早々の、この沖縄の市長選挙と東京の知事選挙、以前のわたしなら、まるでよそ事のことで、どの人が市長になろうが知事になろうが、別に気にもしていなかったでしょう。
でも、そういう生き方、暮らし方をしてきたからこその、今の日本の社会の有り様なのだと気づいてからは、
どんな小さな地域の、どんな為政者に対する選挙であれ、どれもこれもがつながっているのだと、だからどれもこれもがとても大切なのだと考えられるようになりました。
その中でも特に、これまでずっと、他国(米国)に自県の土地の一部を委ねさせられてきた沖縄県の、基地をめぐって『賛成』と『反対』の意思を明確にしている候補者の選挙は、
日本という国は、本当に独立国なのか、それとも独立しているように見せかけられただけの属国なのか、その在り方を根底から問うものであると思います。
どうか、投票する権利のある方々は、棄権をせず、ご自分の考えを票に替えて投じてください。
そして、他の地域にお住みの方々も、他人事などと捉えず、今自分が生きている社会の根本を問う選挙なのだという認識を持ち、成り行きをしっかりと見守ってください。
■【特集】2014年 沖縄県名護市長選挙
普天間飛行場の、辺野古移転の命運を賭けた、名護市長選挙。
1月12日、一貫して移設反対を掲げる稲嶺進・現市長と、移設推進を公言する末松文信候補による、戦いの火蓋が切って落とされた。
普天間飛行場の辺野古移転「賛成」vs「反対」
普天間飛行場の辺野古移設に対して、明確に「賛成」「反対」で分かれた名護市長選挙は初、だという。
これまでは、移設賛成派の候補者も、一応は「慎重派」であるように立ちまわっていた。
しかし今回は、昨年末に、仲井真弘多沖縄県知事が、辺野古移転の受入れを承認したこともあり、表立って「移設推進」を掲げる候補者があらわれた。
辺野古移転を受け入れることで「米軍再編交付金」を手にし、それを元手に街づくりをすると訴えるのは、末松文信氏。
島袋吉和・前市長のもとで、副市長を務めた人物である。
これまで、末松氏の応援には、自民党衆議院議員・小泉進次郎氏と、沖縄県知事・仲井真弘多氏、そして普天間飛行場を抱える、宜野湾市の佐喜眞淳市長らが駆けつけている。
それぞれが、辺野古移設の利害当事者だ。
国、県の思惑を背負って出馬した末松氏を迎え撃つのは、現役名護市長・稲嶺進氏だ。
2010年の市長選で「反移転」を掲げて、当時の島袋市長にせり勝ち、初当選を果たした。
以降、辺野古移設は進められておらず、それまで名護市に支払われていた、多額(年間17億円)の米軍再編交付金も打ち切られた。
防衛省からの補助金は打ち切られたが、独自の政策で、文科省や農水省から、補助金を引き出すことに成功した稲嶺市政は、
名護市の積立金を、この4年間で倍増させ、法人税の収入を伸ばすことにも成功した。
米軍再編交付金は、移転が済んだと同時に打ち切られるため、
いずれにしても名護市長には、基地に頼らない経済・雇用の、具体的な政策の実行が求められるといえる。
名護市長選挙は、もはや「イチ市長選」ではない
名護市長選挙は、「イチ市長選挙」とはいえない。
他国(米国)に自国の土地の一部を委ねるか否かの、答えを出す選挙でもあるからだ。
辺野古移転で建設が予定されている新基地の耐用年数は、200年。
米軍基地の固定化が懸念される。
独立国・日本の在り方を示すことにもなる、重要な問題である。
現役の名護市議会議員・東恩納琢磨氏は、名護市長選挙における、国や県の露骨な、恣意的な介入を批判し、次のように語る。
「国が、これほどまでに介入してくるのは、国の押しつけに『No』という自治体ができることに、恐怖を感じているからかもしれない。
何もこんな、サンゴやジュゴンがいるような海を埋め立てて、基地を造りますか?
自分のとこで考えてみれば、誰でも反対するだろう。
では、なぜ沖縄は反対してはいけないんですか?
『反対してはいけない』とばかりに、国が押し付けようとしてくる。
こんなやり方は民主主義ではない」
日本の未来を占う「名護市長選挙は」、1月19日に投開票日を迎える。
■「これは沖縄だけでなく日本全体の問題」 ~岩上安身による稲嶺進名護市長インタビュー
2014/01/11 【沖縄名護市長選】
普天間基地移設問題が焦点になっている名護市市長選。
市長選に立候補する稲嶺進名護市市長に、岩上安身が独占インタビューを行った。
以下、文字起こしを掲載する。
岩上:
今度の名護市長選、焦点は、辺野古の移設問題だと思います。
稲嶺さんは認めないという立場ですが、多くの県民が賛同し、自民党の議員や仲井眞知事も、自らが当選するときには、県外移設を主張していたのが一転。
年末、手のひらを返して、辺野古の埋め立て承認ということでした。
どう思いましたか。
稲嶺:
青天の霹靂というか、つい2、3日前まで県外、と言ってきていたし、県外をこれからもずっと要求していく、と話をしていました。
12月の県議会でも、県外をこれからもずっと要求していく、という話をしていたんですね。
なぜ沖縄でなければいけないか、なぜ県外ではダメなのか、というプロジェクトチームを立ち上げ、勉強会をして、知事に提言。
勉強会の中身は、県外を追求していくための論理的な根拠を勉強する、そのことによって、県内はダメなんだ、だから県外にすべきだ、と言ったんです。
知事も、任期あと1年しかないし、アイデンティティを示してくれるのでは、と考えていたんですが、
あそこまで驚くべき回答を聞いたときには、唖然としました。
公約は、政治家の命なんです。
公約は、誰に対してかというと、県民のためなんですね。
軸足が沖縄県民に向いていない、という答えになるんですよ。
岩上:
稲嶺さんは、辺野古への移設はならない、と言ってきましたが、
これまでも選挙の準備はされていたでしょうし、辺野古への受け入れは有り得ない、という立場での選挙運動も決まっていたわけですね。
対立候補の末松さんは、前市長の島袋さんが押したり、自民党が押したり、そして推進派だったと。
これは、白黒はっきり分かれた状態で闘うことになるということも、年末にはわかっていたわけですよね?
稲嶺:
前市長の島袋さんが、移設なくしては名護市の振興もできない、と言っていました。
県知事が承認をしたら、私もそれを認めましょう、といっていたんです。
市長なら、これからの名護市を背負っていくわけだから、自己の主張を推すべきなんです。
知事の主張に従うというのは、市長としての意識が弱いのではないか、と思うんですよね。
県内では、オール沖縄というふうに、反対の声をまとめる動きがありますので、
それを推進の方に出すと、共感を得られないのでは、というのがあったと思います。
彼らも、実は容認派です。
容認をするということで、選挙で勝てない、戦えないと。
だから、県外を打ち出したんだと。
そのことによって、焦点ぼかしをする。
あとは、ぼかしじゃなくて県外、というふうに要求するようになったんですが、彼らは、もともとそういうDNAというか素地はあったんですよ。
離党覚悟でやれという、自民党本部からの脅しを受けながらやった、と思うのですが。
岩上:
仲井眞知事があのように、電撃的に、安部総理との1対1の話で、180度変わってしまった、転んでしまったというのは、
直前までそうでないような素振りを示していたわけですから、青天の霹靂だったと思われたのか、それとも『やっぱりな』とお考えになったのか、どちらでしょう。
稲嶺:
そうするのではないかというのと、今までの知事の言動、閣僚や大臣が沖縄にきたときも、県外に移したほうが早いんだと、閣僚のみなさんに言ってきたわけですから。
それはパフォーマンスだったのかわかりませんけども。
片隅にそういう心配を持ちながら、言動をみて、我々はやはりそう信じていたい、というのがありました。
それを裏切られた気持ちでしたね。
岩上:
選挙の直前で、そういうタイミングが重なって、稲嶺さん個人に大変なプレッシャーがかかってから、回復できないうちに一つの流れをつくってしまおうと。
奇襲攻撃なのかと、傍からみているとそう見えますが、こういう手に出てきた知事、知事を説得してきた国、自民党、総理大臣本人まで、
稲嶺さんにかかるプレッシャーは、大きなものだと思います。
ご自身の中で、心が折れそうになるとか、ひるむとか、意気消沈することはなかったのですか?
稲嶺:
たぶん、直前に市長が承認するというのは、一つの諦めというか、国が説得している、知事も承認した、
もうこれは仕方ないんじゃないのという市民の諦めを煽って、流れを作ってしまうものだったのではないかと。
でも、これだけ県民に約束をしてきて、その気にさせて、ついに直前にそれをひっくりかえすというのは、許せないと思います。
県民を裏切るようなことをやっていたのでは、許せるものではないですから。
私は、あきらめ感を煽るというよりは、こんなことは絶対に許さないぞと、発奮することを感じているんです。
選挙で示さなければいけないと思った人も、一杯いると思います。
私ももちろんそうです。
岩上:
折れる、ということは無かったのですか?
稲嶺:
これこそ、負けたら名護市の未来なんて、グチャグチャになってしまう。
これはもう、がっかりだといって折れない。
余計に頑張らなきゃと、私は強く思っています。
岩上:
なぜ基地があってはいけないか。
新しく作ってはいけないか。
ありとあらゆる機会でお話になっていると思います。
今日、全国どこでも、海外でも見ることができます。
広い地域で見られるメディアですので、基地はなぜいらないのか、基地に反対する理由、
そして、基地がなくても、十二分に豊かな未来を、この名護にもたらすことができるという政策、
この二つについて、お話願いたいと思います。
稲嶺:
基地があってはいけないということは、コンパクトに言える話ではないのですが。
敗戦から始まる話ですね。
日本も占領下にあったわけですから。
1952年、独立のためのサンフランシスコ条約を結びましたね。
結ぶと同時に、日米安保条約、その後ろには、日米地位協定もあります。
3点が、セットで結ばれたんです。
分割して我々は、米軍の統治下に置かれました。
そうして軍の植民地という形で、27年間続いたんです。
それで、その間に、本土のほうでは、茨城県などから海兵隊が集まるようになりました。
沖縄は、日本全体の国土の面積で言うと0.6%、人口で言うと1%ですが、そんなとこに、軍の専用施設の74%近くが集中しているんです。
戦後68年間、ずっとです。
68年間で、私たちは、米軍基地があるがゆえの大きな負担を、ずっと背負ってきたのです。
その間、日本という国は、安保で守られているので、軍事費に予算投入しなくてもよかったわけです。
アメリカが守ってくれる、ということです。
その代わりに、経済振興のために、チカラを注ぐことができたんです。
それは、安保条約があったからですよ。
その安保の、いわゆる担保が、沖縄なんです。
沖縄が、その担保を担っている。
我々としては、これだけの間、負担を使いられてきたのですから、これ以上は勘弁してくれといっているわけです。
そしてこれまで、日米同盟も含めて、在日米軍の抑止力、いわゆる在沖米軍の抑止力が、今大事な時期だと。
ということで、今度の案も、沖縄になってきたわけです。
でも、森本前大臣は、軍事的には沖縄でなくてもいい。
それは、政治的に一番大きなのが沖縄なのだ。
ということは、これまで抑止力といってきたのは方便ではないかってことですよね。
沖縄では、嘘のことを「ゆくし」といいます。
だから沖縄では、「抑止力はゆくし力」と言っていますね。
要するに、根拠がなくなった。
日本全土の国土と国民生命を守るというのであれば、これはやっぱり、全国民が等しく恩恵を享受すれば、負担も分担しなければいけないのでは。
そういうことを全国で見ているということで、そのことを一番言いたいですよね。
これは沖縄だけの問題ではなくて、日本全体の問題です。
ですから、沖縄に閉じ込めることによって、今、沖縄問題に狭まってきているけれど、そうでないですよ、一緒に考えてくださいねというのが、県民の願いなわけです。
我々は、68年間も、差別の中で生きてきたのですから、もうごめんです。
これ以上、負担はさせないでくれというのが、まず、「いらない」ということの大きな理由ですね。
岩上:
他方で、仲井眞さん、豹変して、県外移設派から県内移設推進歯の姿を見せました。
仲井眞さんが、いい正月が迎えられると言っていたのは、交付金がどっさり出る、お金が3000億円落ちるということで、
そんなにお金がもらえるんであれば、沖縄は潤っていくのではないかと、他の道府県もそのように見てますし、
お金が落ちるんだったらと思っている方も、一部でいるかもしれない。
稲嶺さんは、ここにはからくりがあるんじゃないかとおっしゃっていますよね。
それについて教えてください。
稲嶺:
今回、3000億という話がありますが、国庫で3000億という金額は、そのおかげで他府県よりもたくさんのお金をもらっているのかっていうと、そうではないのです。
国庫で言うと、補助率が高いという意味での優遇はあるんですが、金額で言うと、全国よりもはるかに突出しているわけではないんです。
国交省とかそういうものは、全国で7番目くらいですね。
何も、沖縄が特別に多くもらっている、という話でもないわけです。
以前の太田知事の時は、4700億、という話もありました。
でも、それ以降、ずっと右肩下がりでした。
仲井眞知事になって、一括交付金を上げて、また上がってきましたけど、それでもって喜んでいるというのもあるのですが。
安保というわけで、担保として我々が担っているのですから、3000億どころではないですよ。
安保のおかげで、日本は、世界第2位という経済力まで来れました。
それはなぜか。
安保の中で、経済力を上げてきたからです。
GDPの何%かを、沖縄に渡すべきじゃないかと。
岩上:
ここちょっと重要なんですけど、例えば、金額はもっと増えるべきだと。
3000億で妥結した仲井眞はけしからんと。
これが6000億、1兆とかだったら、もう大喜びで、基地をどんどん受け入れよう、という話ではないんでしょうか?
稲嶺:
そういう話じゃなくて、これまで、そういう基地を受け入れることによって、代わりに、振興策という飴と鞭の構図がおかしい、ということです。
岩上:
他の都道府県だったらそんなことない、そんなものをする必要なしに交付金をもらっている、
沖縄だけが、そんな条件付きでもらっていることが、おかしいのではないかということですね。
稲嶺:
構造的な差別の中で、68年間ずっと置かれてきたわけです。
だからもう、これ以上の負担はごめんなのです。
岩上:
しかし、基地がなければ経済が成り立たないのでは、とか、基地と引き換えに、国から出る米軍再編交付金などがないと駄目なんじゃないかと。
対立候補の陣営は、はっきりと基地を受け入れる、そして、米軍再編交付金をガバっと受け入れて、名護を再振興させますよとしていますが、
稲嶺さんは、そういう交付金受け取りをしなくて、財政が圧迫して、大変苦しい状況になっているという宣伝にもなっている、と言われているようです。
これまで、実績として、名護市政は復興しているといいますが、そのことについてはどうでしょうか。
稲嶺:
私が就任した平成22年12月、予算書にもきちんと、防衛も納得の上で、予算書に計上されておりました。
ところが、国から、ゼロ回答で剥がされたんですよ。
岩上:
露骨ですね、やることが。
稲嶺:
手当の仕様がなかなかないですよ。
それでも、一番地域が望んでいること、例えば各地区の集会所、コミュニティセンター、2箇所が再編交付金でやるはずだったのが、それも剥がされたので。
それは、次の2月までの間には、別の事業のメニューを当てて、この2つはすぐに復活しました。
岩上:
政府との交渉やり直しをした、ということですね。
稲嶺:
いえ別の事業です。
防衛ではなくて、総務省だとか、他省庁の事業メニューを当てると。
この建設事業費に限り、平成22年はがくっと落ちました。
でも、予算の総額としては増えたんです。
それからずっと増えまして、21年度の予算が290前後でしたが、私の25年度には、358億くらいまでいっていますので。
そういう形で増えてきています。
全体が増えるのに併せて、建設関連費も増えています。
デマで流れているような事実は全くないです。
岩上:
総合予算が増えているのは驚きです。
防衛省1本だったのが、他からも出てきて、土建業者も事業ができるように潤ってきた。
基地は、ないと防衛安全は成り立たない、というのもあります。
他方で、基地はあってならない、辺野古の飛行場をつくるという話だけではなくて、その近くに、既にキャンプ・シュワブという基地がありますね。
新しい基地に反対するどころではだめだと。
キャンプ・シュワブの返還を求めて、その近くが素晴らしい観光地だから、大いに活かして、一大リゾート地を作り発展させようという声が出ました。
沖縄は、基地返還跡地で、観光や再開発で雇用を生んでいます。
これを知らない人も多いと思うんです。
国が後押ししているのが、中央のマスコミですよね。
中央のマスコミの嘘を、現場から破ってもらって事実を知らせれば、国も無茶できなくなると思いますが、どういうプランなのですか?
稲嶺:
基地がないと沖縄は食っていけないのではないか、という話があります。
しかし、観光客だって、今は600万人超えています。
当初は、県内経済のGDP15%くらいが、基地関連の収入だったんですが、今は、県全体からいうと、5%以下にまで落ちているんです。
これからも沖縄が生きていくには、観光産業に力を入れて行かなければいけないですよね。
観光の資源がある、青い海、青い空、世界遺産に登録しようという動きがあるくらい、豊かな資源があるんですから。
辺野古には、希少動物や海藻もあるんですよ。
県の指定する保全地区Aクラスでもありますが、そこを埋めて飛行場をつくろうとしているんですよ。
平和産業を推進していくべきだ、と思いますね。
軍事産業で、沖縄の未来は暗い、明るいものは全くないです。
自ら作り出していく、自ら稼ぐ構図をつくっていかないと、いつでも天から降ってくるようなお金を当てにしていたら、そこに振興はありえないですから。
基地の工事が終わったらお金が入って来ませんが、あと、あるのは飛行機が落っこちてくる危険性ですよね。
岩上:
島ごとミサイル3発で吹っ飛んでしまうと、昨日のシンポジウムでも言っていましたね。
沖縄に全貌展開していると、海兵隊が全滅してしまうので、後方に退かざるをえないと。
それなのに、基地をつくるという矛盾。
おかしいですよね。
稲嶺:
アメリカの再編計画というのは、何も沖縄じゃなくてもいい、嫌われてまでも沖縄にいる必要はない、としているんです。
でも日本政府が、『いや沖縄にいて欲しいと』。
前に、沖縄の海兵隊は撤退するという計画が、アメリカ側から起こったと言うんですよ。
そのときには、日本政府が止めたんです。
岩上:
このことは、大きく報じられていません。
でも、これ、重要な発見だと思います。
あともう一つ、観光産業というのは平和産業であると。
だから、平和でなければいけない。
これ。日本からきている観光客が一番多いと思うのですが、国外だとどこが多いのでしょう?
稲嶺:
やっぱりアジアですね。
香港、中国、台湾、フィリピンなどの留学生もね。
岩上:
今、日本の観光地って、どこ行っても中国の方ですよ。
アイヌの施設が観光地になっているんですが、私以外日本人がいないという。
もし、アジアと敵対関係がどんどんいったら、観光客がいなくなってしまうんですよね。
安部総理は、一方で軍事国家化を進めていますけど、こっち側で、外国人観光客を今からあと2倍3倍にしようという目標を掲げていますが、
観光立国なんて、とてもできないですよね。
稲嶺:
しかも靖国参拝なんてね。
それに、これまでの歴史と向き合って、謝るべきとこは謝る、正すべきとこは正すってことをしないと。
オリバー・ストーン監督が沖縄に来た時に、ピーター・カズニックという大学の先生がいましたけど、歴史に学ぶべきだとおっしゃっていました。
歴史に学べば、新しい先が見えてくると。
日本は歴史に学んでいない、と話をしていました。
沖縄の戦後史というのを紐解いていくと、いかに沖縄が、今の状況に追われるまで差別的なものであるかというのを勉強することで、
どうしなければいけないか、沖縄らしく生きていくには、ということを勉強しないといけないですね。
岩上:
この、差別で思い出すのはヘイトスピーチ。
我々は、この問題についてずっと取材し続けていますが、しかも、非常に不愉快なことがありました。
沖縄の前市長が、建白書をもって上京したときに、日章旗を掲げた右翼系市民や在特会のメンバーが、大変差別的な言葉を言っていました。
稲嶺:
私も一緒でした。
そうですね、被告人呼ばわれしました。
びっくりしましたよ。
沖縄では、そういう経験ありませんのでね。
岩上:
実はあの時、先頭でマイクを握っていたのは、田母神さんでした。
そのときの映像があります。
実は、田母神さんが、今年ある、2つの大事な選挙の一つ、都知事選に立候補しているわけです。
日中韓の対立の火付け役となった石原さんが推薦になって、田母神さんを推し出しているわけです。
こういう構図の中でやっぱり、名護の問題だけでなく、沖縄、日本全体の問題だと思います。
どうあるべきか、このような、極右というか排外的な主張が、まかり通っていくという日本であっていいのか。
稲嶺:
秘密保護法であったり、集団的自衛権であったり、戦前回帰、我が日本どこへ行く、といったようなね。
非常に怖いですね。
国際社会から孤立してしまうのではないかと思います。
日米同盟も大切でしょうけど、韓国、中国というような国を含めて、もっと歴史と向かい合いながら、
一番近いところと強調して、一緒に、国際社会の中で発展していこう、という形のものにしていかないと、孤立していくのではないかと心配ですね。
岩上:
昨日のシンポジウムをやっている間に、議会が、仲井眞知事に対する辞任勧告を決議。
これ、びっくりしました。
県民の意志というものは、仲井眞さんのような結論の中にあるものではないと思うのですが、それを聞いてどうでしたか?
稲嶺:
提案した皆さんは、各地域から付託を受けた方々です。
県民の代弁であると思います。
そこまでしなければいけないという原因は、仲井眞知事自身がつくったというわけですよ。
仲井眞知事は、それを真摯に受け入れなければいけない、ということですね。
岩上:
県が承認してもですね、名護が承認しなければ進められれない、というのは本当なんでしょうか?
稲嶺:
市長は、市域という広い面積を持っています。
その財産、あるいは個人の財産を守るのは、市長の役割ですから、埋め立てが進んでいく中で、市長の同意を得なければいけない、というのもいくつか出てきます。
だから、名護市が協力できませんということになれば、計画は進行できなくなります。
岩上:
もし当選したら、これは守られますか?
稲嶺:
私は、これを信念としてやってきました。
市民からの付託も得ています。
絶対にダメです。
名護市は受け入れられませんということは、きちんと約束したいと思います。
岩上:
いろいろな脅しがあるのではないですか?
稲嶺:
今のとこはないですけどね。
今、外堀を作ってるんじゃないですかね。
岩上:
身の危険は大丈夫ですか?
稲嶺:
大丈夫です。
沖縄は、治安が安定していますので。
岩上:
キャンプ・シュワブの返還は、求めるのですか?
稲嶺:
これは、県の返還プロジェクトが昔あったんですけど、それにシュワブは入ってなかったんですよ。
シュワブを組み込んでいく計画に入れていきます。
岩上:
最後に一言、有権者の中に、ご支援されている方がいるんじゃないかと思うので、皆さんに向かって一言お願いします。
稲嶺:
選挙戦も頑張っておりますが、市外からも、オリバー・ストーンさんなど外国の著名人の皆さんも、辺野古移設には反対だと言ってくれています。
大義は私たちにある、我々がやっているのは世界の常識だと。
全国の皆さんも、名護のこと沖縄のことに関心を持っていただいて、共通の認識として、もうこれ以上、米軍基地が作られるようなこと、沖縄の人間を苦しめることはやってほしくない。
そのことについて、皆さんもぜひ、ご理解頂きたいなと思います。
岩上:
どうもありがとうございました。
(IWJ・鈴木美優)
■沖縄の問題は「世界」の問題 ~自民党を離党した仲里利信 元沖縄県議会議長へ岩上安身が緊急インタビュー
元自民党県連トップで、辺野古移設に反対し、自民党を離党した仲里利信・元沖縄県議会議長に1月13日、岩上安身が緊急インタビューを行った。
インタビューは、那覇市にある、仲里氏の自宅で行われた。
自民党県連本部の顧問を務めていた仲里氏は、県連が公約に反して、米軍普天間基地の名護市辺野古移設を容認する方針へ転じたことに抗議し、11月末に辞任届けを提出。
12月24日には、大田昌秀元知事らと連名で、申請の不承認を求める仲井真弘多知事宛ての緊急申し入れ書を、県庁に提出したが、
同月27日、仲井真知事は、辺野古埋め立てを承認した。
仲里氏は、1月10日に行われた「新外交イニシアチブ(ND)シンポジウム~普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」に登壇し、
「二度と戦争をさせないために、辺野古には絶対に基地を作らせないこと」と発言するなど、辺野古移設に強く反対する姿勢を示している。
19日に投開票を迎える名護市長選でも、自民推薦の末松文信候補ではなく、現職の稲嶺ススム候補を支援する、との姿勢を明らかにしている。
・2014/01/10
【沖縄名護市長選】
辺野古移設を巡り名護市内でシンポジウム
稲嶺氏「移設強行なら、抵抗の先頭に」 ~新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」
→ http://iwj.co.jp/wj/open/archives/119158
自民党離党の発端は、選挙応援した議員の「裏切り」
インタビュー冒頭、自民党離党という決断に至った真意について、
前回衆議院選挙で、仲里氏が後援会長を務めた西銘(にしめ)恒三郎衆院議員(3期)が、公約を破棄して辺野古移設容認に転じたことが発端だ、と語った。
仲里氏は、西銘氏が自民党新人議員に対して、「辺野古推進に変わらないと除名されるぞ」と圧力をかけていたことも明らかにした。
「西銘氏は(はじめから)辺野古推進だった」という声も耳にしたと述べ、「有権者への背信行為だ」と、西銘氏や自民党政府の姿勢を批判した。
そしてその後の、県連や仲井真知事の変節について、仲里氏は、
「よもや知事まで(変わるとは思わなかった)。
12月の定例会でも、『県外・国外』という答弁を貫いていた。
東京に行って3日くらいで変わってしまった」と、驚きを隠さない。
「環境調査の不備も指摘されているなか、解決策も公表せずに了承した」と、知事の決定は青天のへきれきであったことを明らかにした。
仲里氏は、「世論調査では、73%の沖縄県民が県内移設反対であり、それが民意である」と述べ、
自身が自民党を離党したことに対しても「抗議の声は一つも来ない」と、地元の反応は好意的であると強調。
「知事の決定で辺野古移設への大勢は決まった」という、本土メディアの報道とは、異なる事実を明らかにした。
沖縄の問題を世界中に伝えていく
また、海外からも、ノーベル賞学者のノーム・チョムスキー氏や、映画監督のオリバー・ストーン氏ら、世界の識者29人が移設反対声明を出すなど、
反対の動きは世界的な輪に広がるだろう、という期待が高まっている。
仲里氏は、沖縄が米軍統治下にあった1962年、キャラウェイ高等弁務官の圧政に対し、
「(琉球)立法院議員団が、沖縄の窮状を国連に訴え、一週間後には制限が撤廃された」という過去を紹介した。
その後、ケネディー大統領が、キャラウェイ氏の権力を制限し、沖縄の日本復帰へと動き出した、という歴史がある。
仲里氏は、「今回の件でも、国連の人種差別委員会などに訴え、世界の世論を喚起すれば、日米政府は民意を無視したやり方を見直すだろう」と語り、
辺野古案の撤廃、そして沖縄県民の差別解消に向けて、世界規模で働きかけていく意欲を見せた。
沖縄振興予算は単なる「見せかけ」
仲井真知事は、今回提示された沖縄振興予算を、「有史以来だ」と、手放しで評価している。
しかし、3460億円といわれる振興予算の中身を見ると、
「330億円が那覇空港の第二滑走路建設費、195億が沖縄科学技術大学院大学。
これらの国の直轄費用をくっつけて、トータルとして『見せかけ』ている」と、仲里氏は分析。
沖縄振興のための真水部分は「半分程度」と主張した。
明治大学の池宮城(いけみやぎ)秀正教授の調査によると、国庫支出金と地方交付税が、沖縄県は県民一人当たり31万5000円。
財政や人口規模のほぼ等しい他県9県の平均42万円よりも、はるかに少額である。
また、国の沖縄への投下資金約10兆円に対し、沖縄が納税した国税は7兆2千億円であり、差し引きで、わずかな恩恵しか得ていないという。
「これでどうして『沖縄はたかり』だと言えるのか」と、ケビン・メア元米国務省日本部長の「沖縄はゆすりたかりの名人」という過去の発言に対し、怒りをあらわにした。
沖縄の交付金に口を出しているのは、日米政府だけではない。
吉本興業の大崎洋社長は、昨年7月琉球大学の講演で、
「基地があることで国の交付金がつく。
交付金がなくなった時、次の世代が何で暮らすのか」と発言している(琉球新報2013年7月24日「働く意義 考えて 大崎吉本興業社長、琉大で講義」http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-209993-storytopic-7.html
)。
仲里氏は、「国税を払っているのに、タダで基地の恩恵を受けているという印象を与える。県民への侮辱だ」として、県連を通じて抗議をしたことを明らかにした。
特定秘密保護法と辺野古問題は、連動している
尖閣諸島を巡る中国との軍事的緊張について、仲里氏は、
「琉球政府の頃から、沖縄と中国との関係は、ぎくしゃくしたものではない」と述べ、経済・文化・人脈を通じた友好的交流の歴史を紹介した。
一方、安倍総理が打ち出す「積極的平和主義」とは、実質は「日本を『戦争を作る国』にすること」だとして、
集団的自衛権の行使など、中国を念頭に、日本政府が進める軍事強化の動きに警笛をならした。
また、特定秘密保護法について、「言論統制にもつながる戦前回帰だ」と述べ、
「法案成立を急いだのは、辺野古移設反対の声を鎮圧することにも連動している」という持論を展開した。
1月11日に、JR大阪駅南口前で、辺野古移設反対の抗議行動が行われたが、それに対して、警察や機動隊による弾圧が行われた。
仲里氏は「お上を気にしながらでは、言論もあったものではない」と、言うべきことはしっかりと主張していくという姿勢を示した。
(取材:IWJ 原佑介、記事:IWJ 野村佳男)
年明け早々の、この沖縄の市長選挙と東京の知事選挙、以前のわたしなら、まるでよそ事のことで、どの人が市長になろうが知事になろうが、別に気にもしていなかったでしょう。
でも、そういう生き方、暮らし方をしてきたからこその、今の日本の社会の有り様なのだと気づいてからは、
どんな小さな地域の、どんな為政者に対する選挙であれ、どれもこれもがつながっているのだと、だからどれもこれもがとても大切なのだと考えられるようになりました。
その中でも特に、これまでずっと、他国(米国)に自県の土地の一部を委ねさせられてきた沖縄県の、基地をめぐって『賛成』と『反対』の意思を明確にしている候補者の選挙は、
日本という国は、本当に独立国なのか、それとも独立しているように見せかけられただけの属国なのか、その在り方を根底から問うものであると思います。
どうか、投票する権利のある方々は、棄権をせず、ご自分の考えを票に替えて投じてください。
そして、他の地域にお住みの方々も、他人事などと捉えず、今自分が生きている社会の根本を問う選挙なのだという認識を持ち、成り行きをしっかりと見守ってください。
■【特集】2014年 沖縄県名護市長選挙
普天間飛行場の、辺野古移転の命運を賭けた、名護市長選挙。
1月12日、一貫して移設反対を掲げる稲嶺進・現市長と、移設推進を公言する末松文信候補による、戦いの火蓋が切って落とされた。
普天間飛行場の辺野古移転「賛成」vs「反対」
普天間飛行場の辺野古移設に対して、明確に「賛成」「反対」で分かれた名護市長選挙は初、だという。
これまでは、移設賛成派の候補者も、一応は「慎重派」であるように立ちまわっていた。
しかし今回は、昨年末に、仲井真弘多沖縄県知事が、辺野古移転の受入れを承認したこともあり、表立って「移設推進」を掲げる候補者があらわれた。
辺野古移転を受け入れることで「米軍再編交付金」を手にし、それを元手に街づくりをすると訴えるのは、末松文信氏。
島袋吉和・前市長のもとで、副市長を務めた人物である。
これまで、末松氏の応援には、自民党衆議院議員・小泉進次郎氏と、沖縄県知事・仲井真弘多氏、そして普天間飛行場を抱える、宜野湾市の佐喜眞淳市長らが駆けつけている。
それぞれが、辺野古移設の利害当事者だ。
国、県の思惑を背負って出馬した末松氏を迎え撃つのは、現役名護市長・稲嶺進氏だ。
2010年の市長選で「反移転」を掲げて、当時の島袋市長にせり勝ち、初当選を果たした。
以降、辺野古移設は進められておらず、それまで名護市に支払われていた、多額(年間17億円)の米軍再編交付金も打ち切られた。
防衛省からの補助金は打ち切られたが、独自の政策で、文科省や農水省から、補助金を引き出すことに成功した稲嶺市政は、
名護市の積立金を、この4年間で倍増させ、法人税の収入を伸ばすことにも成功した。
米軍再編交付金は、移転が済んだと同時に打ち切られるため、
いずれにしても名護市長には、基地に頼らない経済・雇用の、具体的な政策の実行が求められるといえる。
名護市長選挙は、もはや「イチ市長選」ではない
名護市長選挙は、「イチ市長選挙」とはいえない。
他国(米国)に自国の土地の一部を委ねるか否かの、答えを出す選挙でもあるからだ。
辺野古移転で建設が予定されている新基地の耐用年数は、200年。
米軍基地の固定化が懸念される。
独立国・日本の在り方を示すことにもなる、重要な問題である。
現役の名護市議会議員・東恩納琢磨氏は、名護市長選挙における、国や県の露骨な、恣意的な介入を批判し、次のように語る。
「国が、これほどまでに介入してくるのは、国の押しつけに『No』という自治体ができることに、恐怖を感じているからかもしれない。
何もこんな、サンゴやジュゴンがいるような海を埋め立てて、基地を造りますか?
自分のとこで考えてみれば、誰でも反対するだろう。
では、なぜ沖縄は反対してはいけないんですか?
『反対してはいけない』とばかりに、国が押し付けようとしてくる。
こんなやり方は民主主義ではない」
日本の未来を占う「名護市長選挙は」、1月19日に投開票日を迎える。
■「これは沖縄だけでなく日本全体の問題」 ~岩上安身による稲嶺進名護市長インタビュー
2014/01/11 【沖縄名護市長選】
普天間基地移設問題が焦点になっている名護市市長選。
市長選に立候補する稲嶺進名護市市長に、岩上安身が独占インタビューを行った。
以下、文字起こしを掲載する。
岩上:
今度の名護市長選、焦点は、辺野古の移設問題だと思います。
稲嶺さんは認めないという立場ですが、多くの県民が賛同し、自民党の議員や仲井眞知事も、自らが当選するときには、県外移設を主張していたのが一転。
年末、手のひらを返して、辺野古の埋め立て承認ということでした。
どう思いましたか。
稲嶺:
青天の霹靂というか、つい2、3日前まで県外、と言ってきていたし、県外をこれからもずっと要求していく、と話をしていました。
12月の県議会でも、県外をこれからもずっと要求していく、という話をしていたんですね。
なぜ沖縄でなければいけないか、なぜ県外ではダメなのか、というプロジェクトチームを立ち上げ、勉強会をして、知事に提言。
勉強会の中身は、県外を追求していくための論理的な根拠を勉強する、そのことによって、県内はダメなんだ、だから県外にすべきだ、と言ったんです。
知事も、任期あと1年しかないし、アイデンティティを示してくれるのでは、と考えていたんですが、
あそこまで驚くべき回答を聞いたときには、唖然としました。
公約は、政治家の命なんです。
公約は、誰に対してかというと、県民のためなんですね。
軸足が沖縄県民に向いていない、という答えになるんですよ。
岩上:
稲嶺さんは、辺野古への移設はならない、と言ってきましたが、
これまでも選挙の準備はされていたでしょうし、辺野古への受け入れは有り得ない、という立場での選挙運動も決まっていたわけですね。
対立候補の末松さんは、前市長の島袋さんが押したり、自民党が押したり、そして推進派だったと。
これは、白黒はっきり分かれた状態で闘うことになるということも、年末にはわかっていたわけですよね?
稲嶺:
前市長の島袋さんが、移設なくしては名護市の振興もできない、と言っていました。
県知事が承認をしたら、私もそれを認めましょう、といっていたんです。
市長なら、これからの名護市を背負っていくわけだから、自己の主張を推すべきなんです。
知事の主張に従うというのは、市長としての意識が弱いのではないか、と思うんですよね。
県内では、オール沖縄というふうに、反対の声をまとめる動きがありますので、
それを推進の方に出すと、共感を得られないのでは、というのがあったと思います。
彼らも、実は容認派です。
容認をするということで、選挙で勝てない、戦えないと。
だから、県外を打ち出したんだと。
そのことによって、焦点ぼかしをする。
あとは、ぼかしじゃなくて県外、というふうに要求するようになったんですが、彼らは、もともとそういうDNAというか素地はあったんですよ。
離党覚悟でやれという、自民党本部からの脅しを受けながらやった、と思うのですが。
岩上:
仲井眞知事があのように、電撃的に、安部総理との1対1の話で、180度変わってしまった、転んでしまったというのは、
直前までそうでないような素振りを示していたわけですから、青天の霹靂だったと思われたのか、それとも『やっぱりな』とお考えになったのか、どちらでしょう。
稲嶺:
そうするのではないかというのと、今までの知事の言動、閣僚や大臣が沖縄にきたときも、県外に移したほうが早いんだと、閣僚のみなさんに言ってきたわけですから。
それはパフォーマンスだったのかわかりませんけども。
片隅にそういう心配を持ちながら、言動をみて、我々はやはりそう信じていたい、というのがありました。
それを裏切られた気持ちでしたね。
岩上:
選挙の直前で、そういうタイミングが重なって、稲嶺さん個人に大変なプレッシャーがかかってから、回復できないうちに一つの流れをつくってしまおうと。
奇襲攻撃なのかと、傍からみているとそう見えますが、こういう手に出てきた知事、知事を説得してきた国、自民党、総理大臣本人まで、
稲嶺さんにかかるプレッシャーは、大きなものだと思います。
ご自身の中で、心が折れそうになるとか、ひるむとか、意気消沈することはなかったのですか?
稲嶺:
たぶん、直前に市長が承認するというのは、一つの諦めというか、国が説得している、知事も承認した、
もうこれは仕方ないんじゃないのという市民の諦めを煽って、流れを作ってしまうものだったのではないかと。
でも、これだけ県民に約束をしてきて、その気にさせて、ついに直前にそれをひっくりかえすというのは、許せないと思います。
県民を裏切るようなことをやっていたのでは、許せるものではないですから。
私は、あきらめ感を煽るというよりは、こんなことは絶対に許さないぞと、発奮することを感じているんです。
選挙で示さなければいけないと思った人も、一杯いると思います。
私ももちろんそうです。
岩上:
折れる、ということは無かったのですか?
稲嶺:
これこそ、負けたら名護市の未来なんて、グチャグチャになってしまう。
これはもう、がっかりだといって折れない。
余計に頑張らなきゃと、私は強く思っています。
岩上:
なぜ基地があってはいけないか。
新しく作ってはいけないか。
ありとあらゆる機会でお話になっていると思います。
今日、全国どこでも、海外でも見ることができます。
広い地域で見られるメディアですので、基地はなぜいらないのか、基地に反対する理由、
そして、基地がなくても、十二分に豊かな未来を、この名護にもたらすことができるという政策、
この二つについて、お話願いたいと思います。
稲嶺:
基地があってはいけないということは、コンパクトに言える話ではないのですが。
敗戦から始まる話ですね。
日本も占領下にあったわけですから。
1952年、独立のためのサンフランシスコ条約を結びましたね。
結ぶと同時に、日米安保条約、その後ろには、日米地位協定もあります。
3点が、セットで結ばれたんです。
分割して我々は、米軍の統治下に置かれました。
そうして軍の植民地という形で、27年間続いたんです。
それで、その間に、本土のほうでは、茨城県などから海兵隊が集まるようになりました。
沖縄は、日本全体の国土の面積で言うと0.6%、人口で言うと1%ですが、そんなとこに、軍の専用施設の74%近くが集中しているんです。
戦後68年間、ずっとです。
68年間で、私たちは、米軍基地があるがゆえの大きな負担を、ずっと背負ってきたのです。
その間、日本という国は、安保で守られているので、軍事費に予算投入しなくてもよかったわけです。
アメリカが守ってくれる、ということです。
その代わりに、経済振興のために、チカラを注ぐことができたんです。
それは、安保条約があったからですよ。
その安保の、いわゆる担保が、沖縄なんです。
沖縄が、その担保を担っている。
我々としては、これだけの間、負担を使いられてきたのですから、これ以上は勘弁してくれといっているわけです。
そしてこれまで、日米同盟も含めて、在日米軍の抑止力、いわゆる在沖米軍の抑止力が、今大事な時期だと。
ということで、今度の案も、沖縄になってきたわけです。
でも、森本前大臣は、軍事的には沖縄でなくてもいい。
それは、政治的に一番大きなのが沖縄なのだ。
ということは、これまで抑止力といってきたのは方便ではないかってことですよね。
沖縄では、嘘のことを「ゆくし」といいます。
だから沖縄では、「抑止力はゆくし力」と言っていますね。
要するに、根拠がなくなった。
日本全土の国土と国民生命を守るというのであれば、これはやっぱり、全国民が等しく恩恵を享受すれば、負担も分担しなければいけないのでは。
そういうことを全国で見ているということで、そのことを一番言いたいですよね。
これは沖縄だけの問題ではなくて、日本全体の問題です。
ですから、沖縄に閉じ込めることによって、今、沖縄問題に狭まってきているけれど、そうでないですよ、一緒に考えてくださいねというのが、県民の願いなわけです。
我々は、68年間も、差別の中で生きてきたのですから、もうごめんです。
これ以上、負担はさせないでくれというのが、まず、「いらない」ということの大きな理由ですね。
岩上:
他方で、仲井眞さん、豹変して、県外移設派から県内移設推進歯の姿を見せました。
仲井眞さんが、いい正月が迎えられると言っていたのは、交付金がどっさり出る、お金が3000億円落ちるということで、
そんなにお金がもらえるんであれば、沖縄は潤っていくのではないかと、他の道府県もそのように見てますし、
お金が落ちるんだったらと思っている方も、一部でいるかもしれない。
稲嶺さんは、ここにはからくりがあるんじゃないかとおっしゃっていますよね。
それについて教えてください。
稲嶺:
今回、3000億という話がありますが、国庫で3000億という金額は、そのおかげで他府県よりもたくさんのお金をもらっているのかっていうと、そうではないのです。
国庫で言うと、補助率が高いという意味での優遇はあるんですが、金額で言うと、全国よりもはるかに突出しているわけではないんです。
国交省とかそういうものは、全国で7番目くらいですね。
何も、沖縄が特別に多くもらっている、という話でもないわけです。
以前の太田知事の時は、4700億、という話もありました。
でも、それ以降、ずっと右肩下がりでした。
仲井眞知事になって、一括交付金を上げて、また上がってきましたけど、それでもって喜んでいるというのもあるのですが。
安保というわけで、担保として我々が担っているのですから、3000億どころではないですよ。
安保のおかげで、日本は、世界第2位という経済力まで来れました。
それはなぜか。
安保の中で、経済力を上げてきたからです。
GDPの何%かを、沖縄に渡すべきじゃないかと。
岩上:
ここちょっと重要なんですけど、例えば、金額はもっと増えるべきだと。
3000億で妥結した仲井眞はけしからんと。
これが6000億、1兆とかだったら、もう大喜びで、基地をどんどん受け入れよう、という話ではないんでしょうか?
稲嶺:
そういう話じゃなくて、これまで、そういう基地を受け入れることによって、代わりに、振興策という飴と鞭の構図がおかしい、ということです。
岩上:
他の都道府県だったらそんなことない、そんなものをする必要なしに交付金をもらっている、
沖縄だけが、そんな条件付きでもらっていることが、おかしいのではないかということですね。
稲嶺:
構造的な差別の中で、68年間ずっと置かれてきたわけです。
だからもう、これ以上の負担はごめんなのです。
岩上:
しかし、基地がなければ経済が成り立たないのでは、とか、基地と引き換えに、国から出る米軍再編交付金などがないと駄目なんじゃないかと。
対立候補の陣営は、はっきりと基地を受け入れる、そして、米軍再編交付金をガバっと受け入れて、名護を再振興させますよとしていますが、
稲嶺さんは、そういう交付金受け取りをしなくて、財政が圧迫して、大変苦しい状況になっているという宣伝にもなっている、と言われているようです。
これまで、実績として、名護市政は復興しているといいますが、そのことについてはどうでしょうか。
稲嶺:
私が就任した平成22年12月、予算書にもきちんと、防衛も納得の上で、予算書に計上されておりました。
ところが、国から、ゼロ回答で剥がされたんですよ。
岩上:
露骨ですね、やることが。
稲嶺:
手当の仕様がなかなかないですよ。
それでも、一番地域が望んでいること、例えば各地区の集会所、コミュニティセンター、2箇所が再編交付金でやるはずだったのが、それも剥がされたので。
それは、次の2月までの間には、別の事業のメニューを当てて、この2つはすぐに復活しました。
岩上:
政府との交渉やり直しをした、ということですね。
稲嶺:
いえ別の事業です。
防衛ではなくて、総務省だとか、他省庁の事業メニューを当てると。
この建設事業費に限り、平成22年はがくっと落ちました。
でも、予算の総額としては増えたんです。
それからずっと増えまして、21年度の予算が290前後でしたが、私の25年度には、358億くらいまでいっていますので。
そういう形で増えてきています。
全体が増えるのに併せて、建設関連費も増えています。
デマで流れているような事実は全くないです。
岩上:
総合予算が増えているのは驚きです。
防衛省1本だったのが、他からも出てきて、土建業者も事業ができるように潤ってきた。
基地は、ないと防衛安全は成り立たない、というのもあります。
他方で、基地はあってならない、辺野古の飛行場をつくるという話だけではなくて、その近くに、既にキャンプ・シュワブという基地がありますね。
新しい基地に反対するどころではだめだと。
キャンプ・シュワブの返還を求めて、その近くが素晴らしい観光地だから、大いに活かして、一大リゾート地を作り発展させようという声が出ました。
沖縄は、基地返還跡地で、観光や再開発で雇用を生んでいます。
これを知らない人も多いと思うんです。
国が後押ししているのが、中央のマスコミですよね。
中央のマスコミの嘘を、現場から破ってもらって事実を知らせれば、国も無茶できなくなると思いますが、どういうプランなのですか?
稲嶺:
基地がないと沖縄は食っていけないのではないか、という話があります。
しかし、観光客だって、今は600万人超えています。
当初は、県内経済のGDP15%くらいが、基地関連の収入だったんですが、今は、県全体からいうと、5%以下にまで落ちているんです。
これからも沖縄が生きていくには、観光産業に力を入れて行かなければいけないですよね。
観光の資源がある、青い海、青い空、世界遺産に登録しようという動きがあるくらい、豊かな資源があるんですから。
辺野古には、希少動物や海藻もあるんですよ。
県の指定する保全地区Aクラスでもありますが、そこを埋めて飛行場をつくろうとしているんですよ。
平和産業を推進していくべきだ、と思いますね。
軍事産業で、沖縄の未来は暗い、明るいものは全くないです。
自ら作り出していく、自ら稼ぐ構図をつくっていかないと、いつでも天から降ってくるようなお金を当てにしていたら、そこに振興はありえないですから。
基地の工事が終わったらお金が入って来ませんが、あと、あるのは飛行機が落っこちてくる危険性ですよね。
岩上:
島ごとミサイル3発で吹っ飛んでしまうと、昨日のシンポジウムでも言っていましたね。
沖縄に全貌展開していると、海兵隊が全滅してしまうので、後方に退かざるをえないと。
それなのに、基地をつくるという矛盾。
おかしいですよね。
稲嶺:
アメリカの再編計画というのは、何も沖縄じゃなくてもいい、嫌われてまでも沖縄にいる必要はない、としているんです。
でも日本政府が、『いや沖縄にいて欲しいと』。
前に、沖縄の海兵隊は撤退するという計画が、アメリカ側から起こったと言うんですよ。
そのときには、日本政府が止めたんです。
岩上:
このことは、大きく報じられていません。
でも、これ、重要な発見だと思います。
あともう一つ、観光産業というのは平和産業であると。
だから、平和でなければいけない。
これ。日本からきている観光客が一番多いと思うのですが、国外だとどこが多いのでしょう?
稲嶺:
やっぱりアジアですね。
香港、中国、台湾、フィリピンなどの留学生もね。
岩上:
今、日本の観光地って、どこ行っても中国の方ですよ。
アイヌの施設が観光地になっているんですが、私以外日本人がいないという。
もし、アジアと敵対関係がどんどんいったら、観光客がいなくなってしまうんですよね。
安部総理は、一方で軍事国家化を進めていますけど、こっち側で、外国人観光客を今からあと2倍3倍にしようという目標を掲げていますが、
観光立国なんて、とてもできないですよね。
稲嶺:
しかも靖国参拝なんてね。
それに、これまでの歴史と向き合って、謝るべきとこは謝る、正すべきとこは正すってことをしないと。
オリバー・ストーン監督が沖縄に来た時に、ピーター・カズニックという大学の先生がいましたけど、歴史に学ぶべきだとおっしゃっていました。
歴史に学べば、新しい先が見えてくると。
日本は歴史に学んでいない、と話をしていました。
沖縄の戦後史というのを紐解いていくと、いかに沖縄が、今の状況に追われるまで差別的なものであるかというのを勉強することで、
どうしなければいけないか、沖縄らしく生きていくには、ということを勉強しないといけないですね。
岩上:
この、差別で思い出すのはヘイトスピーチ。
我々は、この問題についてずっと取材し続けていますが、しかも、非常に不愉快なことがありました。
沖縄の前市長が、建白書をもって上京したときに、日章旗を掲げた右翼系市民や在特会のメンバーが、大変差別的な言葉を言っていました。
稲嶺:
私も一緒でした。
そうですね、被告人呼ばわれしました。
びっくりしましたよ。
沖縄では、そういう経験ありませんのでね。
岩上:
実はあの時、先頭でマイクを握っていたのは、田母神さんでした。
そのときの映像があります。
実は、田母神さんが、今年ある、2つの大事な選挙の一つ、都知事選に立候補しているわけです。
日中韓の対立の火付け役となった石原さんが推薦になって、田母神さんを推し出しているわけです。
こういう構図の中でやっぱり、名護の問題だけでなく、沖縄、日本全体の問題だと思います。
どうあるべきか、このような、極右というか排外的な主張が、まかり通っていくという日本であっていいのか。
稲嶺:
秘密保護法であったり、集団的自衛権であったり、戦前回帰、我が日本どこへ行く、といったようなね。
非常に怖いですね。
国際社会から孤立してしまうのではないかと思います。
日米同盟も大切でしょうけど、韓国、中国というような国を含めて、もっと歴史と向かい合いながら、
一番近いところと強調して、一緒に、国際社会の中で発展していこう、という形のものにしていかないと、孤立していくのではないかと心配ですね。
岩上:
昨日のシンポジウムをやっている間に、議会が、仲井眞知事に対する辞任勧告を決議。
これ、びっくりしました。
県民の意志というものは、仲井眞さんのような結論の中にあるものではないと思うのですが、それを聞いてどうでしたか?
稲嶺:
提案した皆さんは、各地域から付託を受けた方々です。
県民の代弁であると思います。
そこまでしなければいけないという原因は、仲井眞知事自身がつくったというわけですよ。
仲井眞知事は、それを真摯に受け入れなければいけない、ということですね。
岩上:
県が承認してもですね、名護が承認しなければ進められれない、というのは本当なんでしょうか?
稲嶺:
市長は、市域という広い面積を持っています。
その財産、あるいは個人の財産を守るのは、市長の役割ですから、埋め立てが進んでいく中で、市長の同意を得なければいけない、というのもいくつか出てきます。
だから、名護市が協力できませんということになれば、計画は進行できなくなります。
岩上:
もし当選したら、これは守られますか?
稲嶺:
私は、これを信念としてやってきました。
市民からの付託も得ています。
絶対にダメです。
名護市は受け入れられませんということは、きちんと約束したいと思います。
岩上:
いろいろな脅しがあるのではないですか?
稲嶺:
今のとこはないですけどね。
今、外堀を作ってるんじゃないですかね。
岩上:
身の危険は大丈夫ですか?
稲嶺:
大丈夫です。
沖縄は、治安が安定していますので。
岩上:
キャンプ・シュワブの返還は、求めるのですか?
稲嶺:
これは、県の返還プロジェクトが昔あったんですけど、それにシュワブは入ってなかったんですよ。
シュワブを組み込んでいく計画に入れていきます。
岩上:
最後に一言、有権者の中に、ご支援されている方がいるんじゃないかと思うので、皆さんに向かって一言お願いします。
稲嶺:
選挙戦も頑張っておりますが、市外からも、オリバー・ストーンさんなど外国の著名人の皆さんも、辺野古移設には反対だと言ってくれています。
大義は私たちにある、我々がやっているのは世界の常識だと。
全国の皆さんも、名護のこと沖縄のことに関心を持っていただいて、共通の認識として、もうこれ以上、米軍基地が作られるようなこと、沖縄の人間を苦しめることはやってほしくない。
そのことについて、皆さんもぜひ、ご理解頂きたいなと思います。
岩上:
どうもありがとうございました。
(IWJ・鈴木美優)
■沖縄の問題は「世界」の問題 ~自民党を離党した仲里利信 元沖縄県議会議長へ岩上安身が緊急インタビュー
元自民党県連トップで、辺野古移設に反対し、自民党を離党した仲里利信・元沖縄県議会議長に1月13日、岩上安身が緊急インタビューを行った。
インタビューは、那覇市にある、仲里氏の自宅で行われた。
自民党県連本部の顧問を務めていた仲里氏は、県連が公約に反して、米軍普天間基地の名護市辺野古移設を容認する方針へ転じたことに抗議し、11月末に辞任届けを提出。
12月24日には、大田昌秀元知事らと連名で、申請の不承認を求める仲井真弘多知事宛ての緊急申し入れ書を、県庁に提出したが、
同月27日、仲井真知事は、辺野古埋め立てを承認した。
仲里氏は、1月10日に行われた「新外交イニシアチブ(ND)シンポジウム~普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」に登壇し、
「二度と戦争をさせないために、辺野古には絶対に基地を作らせないこと」と発言するなど、辺野古移設に強く反対する姿勢を示している。
19日に投開票を迎える名護市長選でも、自民推薦の末松文信候補ではなく、現職の稲嶺ススム候補を支援する、との姿勢を明らかにしている。
・2014/01/10
【沖縄名護市長選】
辺野古移設を巡り名護市内でシンポジウム
稲嶺氏「移設強行なら、抵抗の先頭に」 ~新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」
→ http://iwj.co.jp/wj/open/archives/119158
自民党離党の発端は、選挙応援した議員の「裏切り」
インタビュー冒頭、自民党離党という決断に至った真意について、
前回衆議院選挙で、仲里氏が後援会長を務めた西銘(にしめ)恒三郎衆院議員(3期)が、公約を破棄して辺野古移設容認に転じたことが発端だ、と語った。
仲里氏は、西銘氏が自民党新人議員に対して、「辺野古推進に変わらないと除名されるぞ」と圧力をかけていたことも明らかにした。
「西銘氏は(はじめから)辺野古推進だった」という声も耳にしたと述べ、「有権者への背信行為だ」と、西銘氏や自民党政府の姿勢を批判した。
そしてその後の、県連や仲井真知事の変節について、仲里氏は、
「よもや知事まで(変わるとは思わなかった)。
12月の定例会でも、『県外・国外』という答弁を貫いていた。
東京に行って3日くらいで変わってしまった」と、驚きを隠さない。
「環境調査の不備も指摘されているなか、解決策も公表せずに了承した」と、知事の決定は青天のへきれきであったことを明らかにした。
仲里氏は、「世論調査では、73%の沖縄県民が県内移設反対であり、それが民意である」と述べ、
自身が自民党を離党したことに対しても「抗議の声は一つも来ない」と、地元の反応は好意的であると強調。
「知事の決定で辺野古移設への大勢は決まった」という、本土メディアの報道とは、異なる事実を明らかにした。
沖縄の問題を世界中に伝えていく
また、海外からも、ノーベル賞学者のノーム・チョムスキー氏や、映画監督のオリバー・ストーン氏ら、世界の識者29人が移設反対声明を出すなど、
反対の動きは世界的な輪に広がるだろう、という期待が高まっている。
仲里氏は、沖縄が米軍統治下にあった1962年、キャラウェイ高等弁務官の圧政に対し、
「(琉球)立法院議員団が、沖縄の窮状を国連に訴え、一週間後には制限が撤廃された」という過去を紹介した。
その後、ケネディー大統領が、キャラウェイ氏の権力を制限し、沖縄の日本復帰へと動き出した、という歴史がある。
仲里氏は、「今回の件でも、国連の人種差別委員会などに訴え、世界の世論を喚起すれば、日米政府は民意を無視したやり方を見直すだろう」と語り、
辺野古案の撤廃、そして沖縄県民の差別解消に向けて、世界規模で働きかけていく意欲を見せた。
沖縄振興予算は単なる「見せかけ」
仲井真知事は、今回提示された沖縄振興予算を、「有史以来だ」と、手放しで評価している。
しかし、3460億円といわれる振興予算の中身を見ると、
「330億円が那覇空港の第二滑走路建設費、195億が沖縄科学技術大学院大学。
これらの国の直轄費用をくっつけて、トータルとして『見せかけ』ている」と、仲里氏は分析。
沖縄振興のための真水部分は「半分程度」と主張した。
明治大学の池宮城(いけみやぎ)秀正教授の調査によると、国庫支出金と地方交付税が、沖縄県は県民一人当たり31万5000円。
財政や人口規模のほぼ等しい他県9県の平均42万円よりも、はるかに少額である。
また、国の沖縄への投下資金約10兆円に対し、沖縄が納税した国税は7兆2千億円であり、差し引きで、わずかな恩恵しか得ていないという。
「これでどうして『沖縄はたかり』だと言えるのか」と、ケビン・メア元米国務省日本部長の「沖縄はゆすりたかりの名人」という過去の発言に対し、怒りをあらわにした。
沖縄の交付金に口を出しているのは、日米政府だけではない。
吉本興業の大崎洋社長は、昨年7月琉球大学の講演で、
「基地があることで国の交付金がつく。
交付金がなくなった時、次の世代が何で暮らすのか」と発言している(琉球新報2013年7月24日「働く意義 考えて 大崎吉本興業社長、琉大で講義」http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-209993-storytopic-7.html
)。
仲里氏は、「国税を払っているのに、タダで基地の恩恵を受けているという印象を与える。県民への侮辱だ」として、県連を通じて抗議をしたことを明らかにした。
特定秘密保護法と辺野古問題は、連動している
尖閣諸島を巡る中国との軍事的緊張について、仲里氏は、
「琉球政府の頃から、沖縄と中国との関係は、ぎくしゃくしたものではない」と述べ、経済・文化・人脈を通じた友好的交流の歴史を紹介した。
一方、安倍総理が打ち出す「積極的平和主義」とは、実質は「日本を『戦争を作る国』にすること」だとして、
集団的自衛権の行使など、中国を念頭に、日本政府が進める軍事強化の動きに警笛をならした。
また、特定秘密保護法について、「言論統制にもつながる戦前回帰だ」と述べ、
「法案成立を急いだのは、辺野古移設反対の声を鎮圧することにも連動している」という持論を展開した。
1月11日に、JR大阪駅南口前で、辺野古移設反対の抗議行動が行われたが、それに対して、警察や機動隊による弾圧が行われた。
仲里氏は「お上を気にしながらでは、言論もあったものではない」と、言うべきことはしっかりと主張していくという姿勢を示した。
(取材:IWJ 原佑介、記事:IWJ 野村佳男)