今から約2年も前の古い記事ですが、今朝読み直してみて、良いなと思ったので紹介します。
ここアメリカの東海岸で暮らし始めて14年が経とうとしています。
この国の憲法については、まだきちんと全文を読んだことがありませんでした。
なので、
『女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利が、いまだに明文化されていない』
という事実に、仰天しているところです。
では、このアメリカ合衆国憲法の前文は、どのようなものなのでしょう。
『われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、
われらとわれらの子孫の上に、自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する』
対して、日本国憲法の前文は、
『日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、
政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、
ここに、主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、
その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を、地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、
政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげて、この崇高な理想と目的を達成することを誓ふ』
この前文は、いつ読んでも、胸が熱くなります。
日本国民としての誇りが、ふつふつと沸き上がってくるのです。
『日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を、地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する』
この世界観は、人智の、そして愛の集約ではないかと、しみじみ読むたびに思います。
さて、アメリカという国のユニークな成り立ちは、ここに暮らしてみてはじめて実感できたことなのですが、
これまでに、何度も何度も、銃撃事件が起きるたびに、修正第二条の武装する権利という条文について、喧々囂々、テレビや新聞の報道で論議されてきました。
が、強大な力を持つ連中のロビー活動が凄まじいこと、この条文が正しいと信じている人たちが少なくなく、さらに州ごとに法律や風習が変わるという成り立ちから、
なかなか全国いっせいに、という流れにはならず、いつもある程度日にちが経つと、有耶無耶になってしまっています。
わたしにとってはやはり、どうしても納得がいかない、もっともっといろんな人たちの意見を聞きながら考えていきたい条文です。
日本は、このような、世界でも稀な素晴らしい平和憲法を持つ国です。
その国の主権者たるみなさんは、どうか、その主権者の誇りを胸に、
政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意してください。
主権が、自分たち国民に在ることを知ってください。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来していること、
その権力は、国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民であるみなさんが享受すると、
日本国憲法に明記されていることを、知ってください。
↓以下、書き起こしはじめ
日本国憲法 今も最先端
米法学者ら 188カ国を分析
2012年5月3日 朝日新聞
最古の米国 時代遅れに
「世界に民主化を説く米国の憲法は、急速に時代遅れになっている。一方、日本の憲法は今でも先進モデル」
米国の法学者たちが、世界の国々の憲法をデータ化して分析した結果だ。
日本の憲法は3日、『65歳』になるが、世界の最新版と比べても遜色がない。
分析したのは、ワシントン大学(米ミズーリ州)のデービッド・ロー教授と、バージニア大学のミラ・バースティーグ准教授。
対象は、成文化された世界のすべての憲法188カ国分。
第二次大戦後の1946年から2006年まで、各国憲法の改正や、独立国の新憲法をチェックし、国民の権利とその保障の仕組みを、項目ごとにデータ化。
国際的な変化が、年代別に分かるようにした=表。
それを見れば、時代とともに、新しい人権の理念が生まれ、明文化された流れが読める。
たとえば、女性の権利をうたった憲法は、1946年は世界の35%だけだったのが、06年には91%に、
移動の自由も50%から88%に達した。
最近では、お年寄りの権利も上昇中だ。
国別に見ると、国際情勢の断面が浮かぶ。
独立後間もない18世紀に定めた、
世界最古の成分憲法を抱える米国は、長らく民主憲法の代表モデルとされてきた。
だが、この研究の結果、特に1980年代以降、世界の流れから取り残される『孤立』傾向が確認された。
女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利が、いまだに明文化されていない。
一方で、武装する権利という、世界で2%しかない『絶滅』寸前の条文を、大切に守り続けている。
不朽の先進性 実践次第
一方、日本。
すぐに思い浮かぶ特徴は、
戦力の不保持と戦争の放棄をうたった9条だが、
シカゴ大学のトム・ギンズバーグ教授によると、
一部でも似た条文をもった国は、
ドイツのほか、コスタリカ、クウェート、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ハンガリーなど、けっこう例がある。
世界から見ると、
日本の最大の特徴は、改正されず手つかずで生き続けた長さだ。
同教授によると、現存する憲法の中では『最高齢』だ。
歴史的に見ても、19~20世紀前半の、イタリアとウルグアイに次いで、史上3番目だという。
だからといって、内容が古びているわけではない。
むしろ逆で、
世界でいま主流になった、人権の上位19項目までを、すべて満たす先進ぶり。
人気項目を網羅的に備えた標準モデルとしては、カナダさえも上回る。
バースティーグ氏は、
「
65年も前に、画期的な人権の先取りをした、とてもユニークな憲法といえる」と話す。
ただ、憲法がその内容を、現実の政治にどれほど反映しているかは、別の問題だ。
同氏らの分析では、皮肉なことに、独裁で知られるアフリカなどの一部の国々も、
国際人権規約などと同様の文言を盛り込んでいるケースが増えている。
「同じ条文であっても、どう実践するかは国ごとに違う。
世界の憲法は、時代とともに均一化の方向に動いているが、人権と民主化のばらつきは今も大きい」
確かに日本でも、女性の権利は65年前から保障されてはいても、実際の社会進出は、ほかの先進国と比べて鈍い。
逆に、9条をめぐっては、いわゆる『解釈改憲』を重ねることで、自衛隊の創設拡大や、海外派遣などの政策を積み上げてきた。
日本では、米国の『押しつけ』憲法を捨てて、自主憲法をつくるべきだという議論もある。
ロー氏は「奇妙なことだ」と語る。
「
日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。
経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。
それをあえて変更する政争の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さではないでしょうか」
(ワシントン=立野純二)