1時間50分もの、それもどちらかというと早口のアーサー・ビナードさん、そしてモソモソっと話す樋口健二さんのコラボトーク講演会を、コツコツ根気よく文字起こししてくださったきーこさん。
そのあまりの量に、ヘタレのわたしなどは、その労力と集中力を想像しただけで、心身ともに疲れきってしまいます。
いつも転記は自由にとおっしゃってくださるのをよいことに、甘えているのが本当に申し訳ないのですが、内容が素晴らし過ぎるので、この拙ブログにも載せさせていただくことにしました。
文字制限の2万字になるギリギリまで、ビデオときーこさんの文字起こしを参考に、もう一度書き起こしさせてもらいます。
きーこさん、いつも本当にありがとうございます!心の底の底から感謝しています!
<川内原発>九電の安心の理由はローマ字だらけの目くらまし
「何か起きたら帰れないということは書いてない」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
僕らが、原発で働く人たちと自分の、一人一人のつながりを理解していれば、こういう世の中にはならなかったというのはもう、樋口さんの作品を見れば誰でもわかるんですよね。
右・左、保守・リベラル、一切関係ないですよね。
自分たちが現場に立つ、あるいは現場に立つ人と同じ景色を見て、同じことを体験をしていれば、誰もこの道を選ばないということですよね。
樋口健二:
そうです。
アーサー・ビナード:
でも、僕は、この間薩摩川内に、
樋口健二:
行ってきたの?
アーサー・ビナード:
行ってきた。
でも、薩摩川内の圧力釜の中には入れてもらえなかったけど、そうじゃなくて隣の、建屋は外から見るしかなかったんだけど、隣のPR館っていうのに行ったんですよね。
そしたら可愛いキャラクターがいてね、それから、いろんな新しい資料をもらってきたんですよね。
それによるとね、樋口さんとちょっと、薩摩川内の経営者の九州電力の原子力のイメージ、捉え方が違うんですよね。
樋口健二:
全然違いますよ。
アーサー・ビナード:
九電によると、もう安全になったらしいんですよ。大丈夫なんですよ。
「原子力だよりかごしま」
なぜかマヌケなひらがななんですよね、漢字が読めない人が書いたんだか。
表紙
『原子力だよりかごしま』をいただいてきたんですけどね。
事故が起きた場合どうするかということも、すごく細かく書いていて、
多分、樋口さんがイメージしているような対応、例えば、福島第一原子力発電所のメルトダウンの対応と、画期的に違うんですよね。
みなさんちょっとこう、ローマ字に頭を切り替えて、話を聞いて欲しいんですけど。
この可愛いパンフレットには、いろんなキャラクターとか市民も書いてあるんだけど、
Q&A方式で作ってあるんですね、Q&A。
で、このQ&Aでみなさんを安心させるっていうふうに作ってあるんですけど、
まず安心していい最初の理由は何か?っていうと、UPZがあるからなんですよ。
UPZというものを、30kmの輪っかを地図の上に書いて、それをUPZって言うんです。
ただし、UPZだけではすべてに対応できるわけじゃないので、UPZの他にPAZっていうのを作ったんです。
PAZは5kmの輪っかなんですよね。
だからPAZがあってUPZがあるんです。
そこで(それを)区別するんですけど、どういう風に区別するか?っていうと、EALっていうことで区別して、
緊急時活動レベルをEAL1、EAL2、EAL3というふうに分けて、それで対応するので大丈夫なんです。
で、このEAL1、2、3の他に、それだけでは全てに対応できるわけじゃないので、OILというものを設けてあります。
このOILは運用上の介入レベルですから、EALの緊急活動レベルとOILの運用上の介入レベルを組み合わせて、OILの場合は1、2、3、4、5、6まであります。
だから本当に細かく、その事態に合わせた対応ができるようになったので、みなさん、とりあえず安心していいみたいです。
P3~P4:鹿児島県の原子力災害対策について(2)
そういうことなんです。
これ作っているやつだって、わかっちゃいないんですよね。
なにがOILか。
これ、鹿児島のじいちゃんばあちゃんが、頭こんがらかって諦めるように作ってるとしか思えないでしょ?
「ここまで人をバカにできるんだ」っていう、九電らしいって言えば九電らしいんだけど、これは別に九電に限らずみんなやってるんだもんね。
樋口健二:
もし、書くことがあったら書いてください。
アーサー・ビナード:
書きますか?
だけど全部、これは、鹿児島の一般市民向けの資料。
そして、僕みたいに、暇でPR館を見るような奴に対して、
PAZとUPZ
樋口健二:
それを説明してってくださいね。
アーサー・ビナード:
理解してるわけじゃないよ、僕。
こんなの理解してたら、頭腐っちゃうよ。
要するに、ここに、可愛いキャラクターになっている、鹿児島薩摩川内の建屋があるよね。
この子から30km、これがUPZじゃないかなあ。
で、多分これを5kmにするとPAZでしょうね。
これを分けることによって、いろいろ安全性が高まってる。
で、どういうふうにこれに対応するかっていうと、EALが、その対応のレベルを示して、UPZカッコ、PAZカッコ、全部カッコ、
こんな読めない文章ないでしょ。
PAZカッコ予防的防護措置を準備する区域カッコでは、施設内の状況で防護措置が決まる。
樋口健二:
俺もわからん。
アーサー・ビナード:
EAL緊急時活動レベル。
これは、地震や津波の発生、または、原子炉冷却材の漏洩や電源喪失といった事態、事故など、緊急事態における初期対応の三つの判断基準。
それで、EAL1、EAL2、EAL3。
だけど、結局これで、「要配慮者の避難準備」って書いてある。
要配慮者、配慮が必要な市民のことを「要配慮者」。
要介護じゃなくて、要配慮。
こういうものを作る必要あるんですか?
みんな配慮が欲しいよね。
少し配慮して欲しいんだよ、みんな。
「僕は配慮はいりません」っていう人はいないよね。
だけど、このUPZって、ちょっと蒸し返すようなんだけど、戻ると、
UPZ(緊急時予防措置を準備する区域)および30km以遠では、空間放射線量の値で、該当地域や防護措置が決まる。
それを、OILOIL。
OILは、運用上の介入レベル。
放射性物質の環境放出後に、適切な防護措置を行うための判断基準。
該当する地域では、緊急時モニタリングによる空間放射線量の値に基づき、原子力災害対策本部、国と県で協議して決定されます。
樋口健二:
なんだかわからん。
アーサー・ビナード:
樋口さんがわからないんじゃ誰も理解できない。
樋口健二:
あのね、ちょっといい?
40年前と同じもの作ってんだよね。
アーサー・ビナード:
そう。
樋口健二:
ほとんど。
アーサー・ビナード:
だけど、40年前はこんなにローマ字多くないでしょ?
樋口健二:
本質的には何も変わってないよ。
アーサー・ビナード:
そうですね。
でも、変わっているように見せるために、OILって言ったりEALって言ったり。
これがつまり、樋口さんの作品でいうと、あの一流企業の優遇されている正社員がいる、コントロールルームの世界。
コントロールルームしか見せないでしょ。
で、これ(原子力だよりかごしま)が、市民に渡すコントロールルームと同じ演出の、ローマ字だらけの目くらましなんです。
だから、これを見るとなんか、ま、TPPに入るし、まぁNHKも見てるし、やっぱりEALとOILも必要だろうな。
これ、言語的に、非常に確率の低い現象なんです。
原子力に対応する、原子力のメルトダウンを含めて、緊急事態に対応するために必要な言語的表現がすべて、例外なく全部、ローマ字の3文字で成り立つっていうのは、これは言語学的に有り得ないぐらい珍しい、もう宝くじが当たるのと同じぐらいなんですよ。
なんで全部3文字、未熟語、3文字未熟語になんで全部はまるかっていうと、もう最初からこれをとにかく、何が何でも3文字にはめるっていう。
だからコントロールルームだって、その向こうがどんなにメチャクチャであっても、コントロールルームは、なんかこう冷静で、「すべてがちゃんと制御できてまーす」って、そういう演出ですよね。
樋口健二:
ということだね。
アーサー・ビナード:
見事。
大胆ですよ。
樋口健二:
これ、30km、その先のことは一つも書いてありませんね。
アーサー・ビナード:
いやいや、樋口さん、ちゃんと聞いてなかったね。
UPZがそれなんですよ。
あ、自分も間違えた。
OILがそれなんだ、30km以遠。
樋口健二:
それはね、逃げるのはいいんだけれども、30km圏内は相当の人が住んでてね、それで何か起きたらここに帰れないということはひとつも書いてないね。
アーサー・ビナード:
そうです。
樋口健二:
こういうところがインチキもんなんだよね。
アーサー・ビナード:
そうです。
樋口健二:
本質的には皆さん、僕もね、かつて今から、ほら、73年ごろ、電力会社に行きゃ、パンフレットをこんなにくれるのよ。
デメリットは一つも書いていない。
それと同じなんだよね、これ(原子力だよりかごしま)。
見事ですね、この、
アーサー・ビナード:
でね、樋口さんの作品をずっと見ていくと、労働者がどういうことをさせられているか、どういう被曝をさせられているかっていうことが見えてくるんだけど、
それが、さっきのバスの写真の作品を通じて、今度は地域の農民漁民、一般市民、そこにいる人たちの生活がいかに被曝の残酷なカラクリに吸い込まれていくんですよね。
でも、それが30km圏だったりするわけなんですよね。
でも、本当はそうじゃなくて、この日本という国の生活者はみんな、実は同じように触手が伸びて、
僕らの毎日の消費行動も、結局ここに吸い込まれているんですよね。
その延長線上に僕らが居るという。
「避難訓練は故郷を捨てる練習なんです」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
避難計画もね、この資料は、「事故が起きた時にどういう風に避難するか」輪っかがいっぱいついてる地図も載っているんですけど、
僕は、広瀬さんもおっしゃってたんですけど、「避難訓練をやってはならない」と、一切。
樋口健二:
僕は意味がないと思っています。
アーサー・ビナード:
意味は無いし、僕は心理的に精神的にやっちゃいけないことだと思うんですよ。
どうしてか?っていうと、今おっしゃったように、ま、本当に運が良くて、ものすごく珍しい原発事故のケースで、先に、放射線物質が降ってくる前に情報がきたとするでしょ。
樋口健二:
(笑)
アーサー・ビナード:
これも確立で例え話みたいなもんだけど、でも、本当に避難できたとするでしょ、ここ(原子力だよりかごしま)に書いてあるみたいな感じで。
それで、あんまり初期被曝もせずに、自分の住んでいる地域にセシウム、ストロンチウム、放射性ヨウ素、プルトニウム含めて降ってきた時に、自分がもう先に離れたとするでしょ。
でも、そんなことができたとしても、ふるさとはもう無い。
樋口健二:
無い。
そのことが非常に重要だよね。
原子力だよりかごしまには、そんなこと一言も書いて無いよね。
アーサー・ビナード:
書いて無い。
二度と戻れないし、戻れたとしても、それは被曝を覚悟して、劣化した環境で、残酷な被曝を強いられるような生活になる。
つまり、避難計画が作られて、それで避難訓練とかをやって、地域でみんなで頑張って、
それで、もうね、確率は1%以下だと思うんだけど、奇跡的に本当に避難できたとしても、
自分たちで、自分たちからすすんで故郷を捨てて、先祖の山、先祖の川、この美しい列島のあるところを、全部潰したということになる。
だから避難訓練は故郷を捨てる練習なんです。
精神的にそんなことをやっちゃいけないんですよ。
もう日本人じゃなくなる。
僕が言うとおかしいんですけどね、
樋口健二:
いえいえ、あなたの指摘はね、外国の人の指摘はとってもいいものを持っているんですよ、僕に言わせると。
でね、ひとつだけここで、ちょっとちょっかい入れさせて。
実は皆さんね、JCOの臨界事故が1999年9月30日にあった。
あの前にね、避難訓練をやってたんですよ。
やってたけどなんの役にも立たなかったね。
僕はそれで被曝して今、再生不良性貧血になっているわけだけども。
本当に皆さん、放射線をあの当日、最初はね、たった350mって言ったんだよ。
アーサー・ビナード:
350mってね、もう敷地の中ですよね。
樋口健二:
それで、周りに知らない人たちがみんな居ちゃったんだよ。
だから、あんなこと(避難訓練)をやっても、なんの意味もありません。
それからね、事故のわーって知らせがあったらね、車で逃げるはずでしょ。
今度は渋滞でアウトですよ。
だからなんの意味もありません。
まず原発をやめりゃあ、こういうことは起きねえってことだよ。
そうだよね。
何にも意味なんて、彼が言う通りですよ、意味無いんですよ。
アホらしいことやってんだよ。
それで、これをあんまりやっているとね、一般の国民は「ああ、ああやって逃げりゃいいんだ」、
要するに、マスコミにいいように乗せられたっていうことですよ、また。
マスコミを批判すればいいんですよ。
なんであんなことを報道するんだって。
その先のことはどうなってんだって。
今彼が言うように、故郷なくなって、以降どうするんだっていう話。
そこが欠けてるんだよね。
いいこと言いますね。
アーサー・ビナード:
本当に。
だから、「故郷を捨てる訓練」って意味があると思うんですよ、彼らにとっては。
原発をやりたい人たちは、みんなに、半ば強制的に避難訓練をやらせることで、予行練習をさせてる。
僕はアメリカ国籍なんですけど、今年(2015年)の年末は、危なすぎてやらないと思うんだけど、
時々年末になると、米政府が、予算が通らないとデフォルトして、それで債務不履行に、要するにアメリカが借金を踏み倒すの、やってたでしょ。
あれはいつかやるつもりだから、練習してる。
樋口健二:
これも練習ね。
アーサー・ビナード:
練習練習。
ニュースとか、権力がやるようなことって、よく見ていると結構練習が多いんですよね。
みんなにまず、こう慣らして、「ちょっと過激に聞こえることを言ってみて、どのくらいみんなが抵抗するか」って。
だからこの避難訓練も、もしかしたら、「故郷を捨てることに慣れる」、「故郷を捨てる」という選択肢があるようにみんなが考え始める。
みんながそういう人間に成り下がっていくための心理作戦だっていうことも、僕は考えていいと思うんですね。
樋口健二:
安心感を植え付けるね。
アーサー・ビナード:
そう、安心感と諦め。
つまり、「もうそうなったらしょうがないね」、自分の故郷がいつかそうなるかもしれない、「だったら逃げればいい」って。
そういうふうに思考回路を作っていく。
でも本当は、そういう思考回路の中に、僕らは入っちゃいけないんですよ。
だって、故郷捨てるって最低じゃないですか。
って言いながら僕、デトロイトにいないんですけど(笑)、でも、捨ててはいない。
樋口健二:
故郷っていうのはね、何十年たっても、僕も信州の山の中だけど、年取ってきたら故郷に帰りたい。
アーサー・ビナード:
信州のどこですか?
樋口健二:
信州の諏訪郡富士見町で、標高1000mだよ。
だから僕は逃げ出したのよ、食えないから。
アーサー・ビナード:
そうか。
樋口健二:
でも故郷はやっぱり、歳とれば取るほど懐かしい。捨てられませんよ。
アーサー・ビナード:
でも放射能汚染が。
樋口健二:
放射能汚染がないからね。
アーサー・ビナード:
放射能汚染が自分の故郷に降ったら、
樋口健二:
放射能汚染が起きる前に、やっぱり止めさせる運動をしなきゃね。
福島があの通りだから。
もっとはるか遠くのチェルノブイリは、30km圏内はみんな住めなくなってる。
「脱原発だけじゃダメだ。脱オタンコナスをやろう」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
広島に行ったりきたり、広島にいることが多くて、もちろん広島県だけじゃないんですけど、広島の市民が、なんとかね、
福島にいて生活している方々、特に子供達が、比較的線量の低いところで、しかも選りすぐりの食べ物食べて、夏の間でも、休みの間でも保養して、内部被曝を減らすことができたらいいな、って。
福島のことを、福島以外のところもみんな思っていて、そういうふうに保養の運動をしている人たちがいっぱいいて、友達も頑張ってるんですよね。
北海道でも、野呂美加さんは、チェルノブイリの事故の後に、ベラルーシの子供達を受け入れて、それをずっとやってきて今も、関東東北の子供達もやってる。
でもね、保養で、僕らがチェルノブイリとつなげて考えるときに、一つ忘れちゃいけないことがあって、
これは、みんなそれぞれが判断すべきことだと思うんですけど、
もし、僕の数字の計算とか、僕の今まで見た地図と汚染の度合いの資料が間違ってなければ、ベラルーシでは、事故から何年かかけてなんですけど、
今、日本政府が、いろんな生活者を戻そうとしているようなところには、人は一人も住んでいないんですよね。
で、例えば、野呂さんがずーっと受け入れて、子供達の内部被曝をなんとかしようとしていた、そのベラルーシの子供達が住んでいる地域っていうと、東京都とか、関東ぐらいの汚染なんですよ。
で、もっと濃い汚染のところには、何年に人が住めなくなった、何年にここはダメだっていうふうになったかって、少し年代は違うんですけど、
でも、基本的には、日本にベラルーシから来てた、あの可愛い素晴らしい子供達が、実は関東の日本の子供達ぐらいの汚染の地域に住んでたんですよね、住んでるんですよ。
それが今、日本の市民には見えていないような気がする。
どれほど被曝が恐いか。
それで、どれほど低線量が警戒しなきゃいけないかっていう。
で、僕は、いつもそう考えるときに、樋口さんがちゃんと、労働者の被曝、労働者が30mSvだったらどうなったか?って、その一人一人の人生、一人一人の体験を踏まえて撮ってるので、
もちろんベラルーシ、ウクライナ、チェルノブイリのデータと29年の体験があるから、そこを踏まえてもいいんですけど、
でも、日本国内でも、(原発)労働者に目を向けていれば、もうちょっと、今政府に何をつきつけなきゃいけないのか、
保養をやる市民でも、何をしようとしているのか、もうちょっと具体的になるんですよね。
樋口健二:
そうだね。
これちょっといい?
皆さんね、この被曝問題が、3.11以前に持ち上がらなかった理由があるんですよ。
これは末端の労働者達だったから。
これが皆さんのようにね、ハイクラスの集まり、中産階級の人たちにもし及んでたら、これ社会問題になってたんじゃないですか。
違いますか。
これは大きなネックだったね。
それから、どうしてそういうふうに抑えてきたかっていうのは、さっきも言いましたね、連合ですよ。
ここが本気になって、こういうことが起きてる、自分とこの労働者はあれだけど、末端の人たちを皆さん、助けるようなことをしましょう、ってもし言ったらね、違ったんじゃないですかね。
ただ、これを言っても仕方がないから、前を向いていくしかないんですよ、今。
というのは、ここにこんなに集まっている、この人たちが変えてってくれるんだ。
だから僕は、そういう意味で、ちょっと時間はかかったけど、世の中が変わるってことは皆さん、容易なことじゃない。
つまりね、今の日本は、民主主義で手をあげたらさ、ほとんどが自民党になっちゃう。
だけど、少数真理という言葉があるじゃないですか。
少数の中にとても重要な意見があるんだって。
これで行きたいなと僕は思っています。
アーサー・ビナード:
樋口さんは政治家ではないので、政治屋でもないし。
だからちょっとね、僕が聞くのはお門違いかもしれないんですけど、
樋口健二:
いや、いいんですよ。
アーサー・ビナード:
原発が嫌だって、ちょっともうやめてほしいって思っている人は、多分、この日本列島の人口の半分以上はいるんですよね。
樋口健二:
半分どころじゃねえの、70%と思ってください。
アーサー・ビナード:
はい。
でも、さっきおっしゃったように、自民党に入れちゃう。
樋口健二:
入れちゃう。
アーサー・ビナード:
これはね、アンポンタンだから?そういうことなんですか。
樋口健二:
もちろん。
いや、これねほんと、ここにいる人たちは入れないだろうけどね、
アーサー・ビナード:
入れてるかわかりませんよ、上流階級、ハイクラスの。
樋口健二:
あのね、実はこの選挙がね、どうして勝っちゃうのかっていう答が見えたんだよね。
うちの国分寺っていうとこがあるんだよね。
それで、民主党が来ても誰もこない。
自民党来たらね、老人がみんな集まる、駅前で。
これわかる?
みんな、そういうふうに通達を出している。
昔から、保守的な人たちがいるじゃないですか。
それで、生活は非常に逼迫しているのにね、「自分ところになんかしてくれる」って思っている。
アーサー・ビナード:
あべこべのことをされてるのに。
樋口健二:
そういうところが勝っちゃうんですよ。
だって、投票率は実は22%という…。
これですよ、日本の保守層っていうのは、最後には自民党。
こういうところから、これから変えていくしかないんですよ。
変えてくの、これから。
そういうことじゃないですか。
アーサー・ビナード:
僕も、全くそう思う。
駅前のそういう光景も、僕は見たことがあって、そういう光景を見ると、なんか言い方が失礼だけど、老害みたいな感じですよね。
樋口健二:
ああ、老害だね。
アーサー・ビナード:
でも、僕は、大学生とか高校生といろいろ話す機会があって、そういう意味ではすごく恵まれているんだけど、大学で教えているわけじゃないけど、呼ばれて。
そうすると、なんかこう、変な存在としてすっと入れるんですよね。
ま、樋口さんがいろんな現場に行って、
樋口健二:
俺なんかもっと変ですよ。
アーサー・ビナード:
僕も大学に行って、それで英文学の話なんかしたり、いろんな話をするんだけど、大学生と話す機会がいっぱいあるから、聞くんですよ、みんなどう考えているかとか。
で、投票はこれから18歳からやるから、高校生にもちょっとそういう話を振ってみるんですけど、
意外と18、19、20、21、22も、自民党に入れちゃうの。
樋口健二:
そういう教育を永遠とやってきているんです。
アーサー・ビナード:
そうです。
で、さっき言ったアンポンタンか、アンポンタンじゃなくて、彼らはオタンコナスなの。
もっとわかってないんだから、すごいんですよ。
樋口健二:
とってもいい言葉。
日本人が今のあなたのようなことを言ったら、ぶっ飛ばされるけどね。
アーサー・ビナード:
彼らは何にもわかってないですよ、見事に。
だから、可愛くていい子たちだなと思うんだけど、でもそれじゃあ餌食にされるだけじゃない。
樋口健二:
そういうことです。
アーサー・ビナード:
国分寺の駅前に集まる、貧困にあえいでいる老人の方と、あんまり変わらないんですよ。
樋口健二:
ほとんど変わりません。
アーサー・ビナード:
だからそこが…。
僕も希望を別に失っているわけじゃないし、アンポンタンだって言いながら、実は自分だって20歳の時アンポンタンの最たるものだったし、
樋口健二:
みんなそうなんですよ。
アーサー・ビナード:
ですよね。
だから、自民党は延々と、みんなオタンコナスなまんま、やっていきたいんですよ。
今の与党は愚民政策以外、何にもやらないんですよね。
でも、それに対抗する、僕らの、少数派であったとしても、学んで見抜く流れを作らないといけないです。
これも「10年かけて」とかってやってると、憲法を潰されて、もう弾圧の時代に入りかねないので、
なんかこう、樋口さんの写真展以外に何かこう…。
樋口健二:
この運動が3.11から持ち上がって、反原発にだいぶこう、持ち上がったよね。
1000万署名なんて、すごいと思ったよね。
それで最初はみんなやっぱり、ここにいるような人たちばっかりだったんだよ。
ところがね、大学生が立ち上がりましたね。
高校生も最初はね、少数だけど立ち上がってる。
一番素晴らしいのはインターネットだ。
これがあるからね、僕は希望を持っていますよ。
優秀な子が世の中にはいますよ、やっぱり。
この連中が一生懸命やってくれている。
で、あなたが言うアンポンタンを変える力を持ってると思うんです。
で、あなたはね、そのいまの言葉は、遠慮なくいろんなところで、大学で言ったらいい。
言ってやって、「あなたらはアンポンタンよ」って。
アーサー・ビナード:
だからその言葉もね、山本太郎さんと中国地方でツアーを組んで、ずいぶん前ですね。
彼が芸能界から外されて、俳優の仕事が全然なくて、でも、いまの職業に就く前の、ある意味、太郎さん、どうしたらいいかって、その時に中国地方を回っていて、
「脱原発」というふうに話を聞きに来てくれた人たちが言ってたんだけど。
僕は「脱原発だけじゃダメだ。脱オタンコナスをやろう」って。
だって、原発だけじゃないからね。
樋口健二:
そう、いろんなものがみんな絡んでるもんね。
アーサー・ビナード:
そう、さっきの利権の話がすごく重要で、原発が何も偶然に続いているわけじゃなくて、何も止められない必然性もなくて、
でもこれだけの企業、メディア、経済力と政治力を持った組織が全部、これにがんじがらめになって、それで、抜ける方法すら失ってる。
この状況の中では簡単には止められない。
樋口健二:
そうそう。
アーサー・ビナード:
だからそこなんだよね。
樋口健二:
でもね、そこだからこそ、相手が大きければ大きいほど、我々は頑張らなきゃいけないっていうことなんですよ。
しょぼくれちゃ絶対にいけないの。
アーサー・ビナード:
でも樋口さん、色々と、どんなに素晴らしい写真を撮っても載せてもらえなかったり、どんなに声をあげても無視されたり、落ち込むことはないですか?
樋口健二:
ない!
いい質問をしてくれました。
実はね、僕の写真は大体、陽の目を見るのに最低10年かかるんだよね。
一番僕が辛いのはね、患者たちが、「早く発表してくれねえのか、我々は死んでくんだ」。
僕もね、説得力が非常にうまいですよ、百姓の出だから。
相手もみんな百姓だ。
あるいは漁民だから、俺、信州弁丸出しでやるわけ。
安心するのよね。
朝日新聞の記者たちと違うのよ。
こうやって上からものを見ない。
そこ行って座るのよ。だからこうやって真正面。
で、百姓言葉を使ったからね、これがぴったり来ちゃってね。
ま、そういうことで、希望を絶対失っちゃいけない。
もう一度言うよ。
40年間無視されてきたんだよ。
でも必ず誰かが共鳴してくれる。
共感してくれる。
俺の写真に感動してくれる。
時があるかもよ、っちゅってきたんだから、そしたらあったじゃないの。
でもね、ありがたいことで、3.11以後は6冊の本が出ましたね。
とにかく僕のやってきたことを、みんな本にしてくれました。
自費出版は一冊もありません。
それだけね、僕はやっぱり、この支援というより、重要だって言ってくれた編集者たちがいたってことよ。
だから、いまバーっと6冊じゃなくて、その前にプチ、プチ、プチ、プチと出るでしょ。
そうするとこれがね、全国ネットで僕の本を買ってくれる人が、2000人ぐらいおるんだぜ。
2000人もいるんだぜ。
だから、その人たちを、次の作品が出た時に裏切っちゃいかん。
これが僕の支えになってきた。
そしたら今こんなに、何十になってると思う?みなさん。
いい加減にやめろって思ってるでしょ、心の中で。
彼に話させりゃいいじゃないかって。
そんなわけで、とにかく支援をしてくれた人たち、これを裏切れなかったということでしょうね、僕は。
そうじゃなかったら、信州に10年に一回ぐらいは、小学校の同窓会があるじゃない。
一度行った。
みんな隠居してたよ。
「おめえは元気だなあ」っちゅわれて。
俺はね、ちょっと仕事があるんだよ。
一生やらなきゃいけない仕事。
どこで野垂れ死にしてもいいんだけどさ、ジャーナリストなんてのは。
まあ頑張りたいと思っています、よろしく。
中略
「突き詰めていくと、中産階級って要するに貧乏人のことなんだよね」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
(樋口さんは)自分の置かれている立場と被写体の立場が一緒。
そうじゃない写真を撮る人、そうじゃない視線で世の中を見る人はいっぱいいるんですけど、
でも、突き詰めていくと、さっきの中産階級っておっしゃったんだけど、中産階級って、要するに貧乏人のことなんだよね。
ただ、極端な貧乏じゃない。
貧乏人ってつまり、ビル・ゲイツとソフトバンクの孫さんとか、今の世の中は、そういうとてつもない富を得ている人たちが本当の金持ちで、
この間証券会社の人と会ったんだけど、ミリオネアっていう言葉はもう誰も使わなくなったって。
どうしてか?っていうと、うじゃうじゃいるから。
ミリオネアっていうのは貧乏人のことなの。
ビリオネアじゃないと金持ちじゃないんですよ。
ビリオンって、丸を三つ増やすことをビリオン。
樋口健二:
こんな差があるんだよ。
アーサー・ビナード:
そう、その人たちが、実は金持ちなんですよ。
だから、ファーストホールディングスのYさん、Yさんのぼっちゃま、Yさんのもう一人のぼっちゃま、
彼らの資産を合わせれば、国家予算みたいなものですよね。
でも、僕らは彼らと比べたら、中流だろうと下流だろうと、本当に日雇いしかないっていう人、生活保護の人と、本当は仲間なんだよね。
仲間じゃないっていうのが実は錯覚で、いつでもそこに落ちていけるし、いつでも僕らも同じように扱われる。
福島ではそれが示されたんですよ。
福島の原発の風下にいた人たちは、中流も下流も、みんなSPEEDIの情報を得られなかった。
みんな、誰もまともな避難をさせてもらえなかった。
本当に選ばれし人は、もしかしたら、米軍のヘリで運ばれたかもしれないけど、
僕らはその情報も得られないという、それがもう、はっきりしたんですよね。
樋口健二:
ちょうどいい、ちょっと一言言わせて。
みなさん、電通っていうのを知ってるでしょ、日本の最大規模の広告会社。
その電通が、あの事故で、ほとんど外国へ一度逃げたそうだね。
すごいですよ、広告とつながってるからね、これは早いですよ。
60年安保闘争のアレを決めたのは電通だからね。
すごいじゃないですか、びっくり仰天したんだ、金の力。
ー続きますー
そのあまりの量に、ヘタレのわたしなどは、その労力と集中力を想像しただけで、心身ともに疲れきってしまいます。
いつも転記は自由にとおっしゃってくださるのをよいことに、甘えているのが本当に申し訳ないのですが、内容が素晴らし過ぎるので、この拙ブログにも載せさせていただくことにしました。
文字制限の2万字になるギリギリまで、ビデオときーこさんの文字起こしを参考に、もう一度書き起こしさせてもらいます。
きーこさん、いつも本当にありがとうございます!心の底の底から感謝しています!
<川内原発>九電の安心の理由はローマ字だらけの目くらまし
「何か起きたら帰れないということは書いてない」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
僕らが、原発で働く人たちと自分の、一人一人のつながりを理解していれば、こういう世の中にはならなかったというのはもう、樋口さんの作品を見れば誰でもわかるんですよね。
右・左、保守・リベラル、一切関係ないですよね。
自分たちが現場に立つ、あるいは現場に立つ人と同じ景色を見て、同じことを体験をしていれば、誰もこの道を選ばないということですよね。
樋口健二:
そうです。
アーサー・ビナード:
でも、僕は、この間薩摩川内に、
樋口健二:
行ってきたの?
アーサー・ビナード:
行ってきた。
でも、薩摩川内の圧力釜の中には入れてもらえなかったけど、そうじゃなくて隣の、建屋は外から見るしかなかったんだけど、隣のPR館っていうのに行ったんですよね。
そしたら可愛いキャラクターがいてね、それから、いろんな新しい資料をもらってきたんですよね。
それによるとね、樋口さんとちょっと、薩摩川内の経営者の九州電力の原子力のイメージ、捉え方が違うんですよね。
樋口健二:
全然違いますよ。
アーサー・ビナード:
九電によると、もう安全になったらしいんですよ。大丈夫なんですよ。
「原子力だよりかごしま」
なぜかマヌケなひらがななんですよね、漢字が読めない人が書いたんだか。
表紙
『原子力だよりかごしま』をいただいてきたんですけどね。
事故が起きた場合どうするかということも、すごく細かく書いていて、
多分、樋口さんがイメージしているような対応、例えば、福島第一原子力発電所のメルトダウンの対応と、画期的に違うんですよね。
みなさんちょっとこう、ローマ字に頭を切り替えて、話を聞いて欲しいんですけど。
この可愛いパンフレットには、いろんなキャラクターとか市民も書いてあるんだけど、
Q&A方式で作ってあるんですね、Q&A。
で、このQ&Aでみなさんを安心させるっていうふうに作ってあるんですけど、
まず安心していい最初の理由は何か?っていうと、UPZがあるからなんですよ。
UPZというものを、30kmの輪っかを地図の上に書いて、それをUPZって言うんです。
ただし、UPZだけではすべてに対応できるわけじゃないので、UPZの他にPAZっていうのを作ったんです。
PAZは5kmの輪っかなんですよね。
だからPAZがあってUPZがあるんです。
そこで(それを)区別するんですけど、どういう風に区別するか?っていうと、EALっていうことで区別して、
緊急時活動レベルをEAL1、EAL2、EAL3というふうに分けて、それで対応するので大丈夫なんです。
で、このEAL1、2、3の他に、それだけでは全てに対応できるわけじゃないので、OILというものを設けてあります。
このOILは運用上の介入レベルですから、EALの緊急活動レベルとOILの運用上の介入レベルを組み合わせて、OILの場合は1、2、3、4、5、6まであります。
だから本当に細かく、その事態に合わせた対応ができるようになったので、みなさん、とりあえず安心していいみたいです。
P3~P4:鹿児島県の原子力災害対策について(2)
そういうことなんです。
これ作っているやつだって、わかっちゃいないんですよね。
なにがOILか。
これ、鹿児島のじいちゃんばあちゃんが、頭こんがらかって諦めるように作ってるとしか思えないでしょ?
「ここまで人をバカにできるんだ」っていう、九電らしいって言えば九電らしいんだけど、これは別に九電に限らずみんなやってるんだもんね。
樋口健二:
もし、書くことがあったら書いてください。
アーサー・ビナード:
書きますか?
だけど全部、これは、鹿児島の一般市民向けの資料。
そして、僕みたいに、暇でPR館を見るような奴に対して、
PAZとUPZ
樋口健二:
それを説明してってくださいね。
アーサー・ビナード:
理解してるわけじゃないよ、僕。
こんなの理解してたら、頭腐っちゃうよ。
要するに、ここに、可愛いキャラクターになっている、鹿児島薩摩川内の建屋があるよね。
この子から30km、これがUPZじゃないかなあ。
で、多分これを5kmにするとPAZでしょうね。
これを分けることによって、いろいろ安全性が高まってる。
で、どういうふうにこれに対応するかっていうと、EALが、その対応のレベルを示して、UPZカッコ、PAZカッコ、全部カッコ、
こんな読めない文章ないでしょ。
PAZカッコ予防的防護措置を準備する区域カッコでは、施設内の状況で防護措置が決まる。
樋口健二:
俺もわからん。
アーサー・ビナード:
EAL緊急時活動レベル。
これは、地震や津波の発生、または、原子炉冷却材の漏洩や電源喪失といった事態、事故など、緊急事態における初期対応の三つの判断基準。
それで、EAL1、EAL2、EAL3。
だけど、結局これで、「要配慮者の避難準備」って書いてある。
要配慮者、配慮が必要な市民のことを「要配慮者」。
要介護じゃなくて、要配慮。
こういうものを作る必要あるんですか?
みんな配慮が欲しいよね。
少し配慮して欲しいんだよ、みんな。
「僕は配慮はいりません」っていう人はいないよね。
だけど、このUPZって、ちょっと蒸し返すようなんだけど、戻ると、
UPZ(緊急時予防措置を準備する区域)および30km以遠では、空間放射線量の値で、該当地域や防護措置が決まる。
それを、OILOIL。
OILは、運用上の介入レベル。
放射性物質の環境放出後に、適切な防護措置を行うための判断基準。
該当する地域では、緊急時モニタリングによる空間放射線量の値に基づき、原子力災害対策本部、国と県で協議して決定されます。
樋口健二:
なんだかわからん。
アーサー・ビナード:
樋口さんがわからないんじゃ誰も理解できない。
樋口健二:
あのね、ちょっといい?
40年前と同じもの作ってんだよね。
アーサー・ビナード:
そう。
樋口健二:
ほとんど。
アーサー・ビナード:
だけど、40年前はこんなにローマ字多くないでしょ?
樋口健二:
本質的には何も変わってないよ。
アーサー・ビナード:
そうですね。
でも、変わっているように見せるために、OILって言ったりEALって言ったり。
これがつまり、樋口さんの作品でいうと、あの一流企業の優遇されている正社員がいる、コントロールルームの世界。
コントロールルームしか見せないでしょ。
で、これ(原子力だよりかごしま)が、市民に渡すコントロールルームと同じ演出の、ローマ字だらけの目くらましなんです。
だから、これを見るとなんか、ま、TPPに入るし、まぁNHKも見てるし、やっぱりEALとOILも必要だろうな。
これ、言語的に、非常に確率の低い現象なんです。
原子力に対応する、原子力のメルトダウンを含めて、緊急事態に対応するために必要な言語的表現がすべて、例外なく全部、ローマ字の3文字で成り立つっていうのは、これは言語学的に有り得ないぐらい珍しい、もう宝くじが当たるのと同じぐらいなんですよ。
なんで全部3文字、未熟語、3文字未熟語になんで全部はまるかっていうと、もう最初からこれをとにかく、何が何でも3文字にはめるっていう。
だからコントロールルームだって、その向こうがどんなにメチャクチャであっても、コントロールルームは、なんかこう冷静で、「すべてがちゃんと制御できてまーす」って、そういう演出ですよね。
樋口健二:
ということだね。
アーサー・ビナード:
見事。
大胆ですよ。
樋口健二:
これ、30km、その先のことは一つも書いてありませんね。
アーサー・ビナード:
いやいや、樋口さん、ちゃんと聞いてなかったね。
UPZがそれなんですよ。
あ、自分も間違えた。
OILがそれなんだ、30km以遠。
樋口健二:
それはね、逃げるのはいいんだけれども、30km圏内は相当の人が住んでてね、それで何か起きたらここに帰れないということはひとつも書いてないね。
アーサー・ビナード:
そうです。
樋口健二:
こういうところがインチキもんなんだよね。
アーサー・ビナード:
そうです。
樋口健二:
本質的には皆さん、僕もね、かつて今から、ほら、73年ごろ、電力会社に行きゃ、パンフレットをこんなにくれるのよ。
デメリットは一つも書いていない。
それと同じなんだよね、これ(原子力だよりかごしま)。
見事ですね、この、
アーサー・ビナード:
でね、樋口さんの作品をずっと見ていくと、労働者がどういうことをさせられているか、どういう被曝をさせられているかっていうことが見えてくるんだけど、
それが、さっきのバスの写真の作品を通じて、今度は地域の農民漁民、一般市民、そこにいる人たちの生活がいかに被曝の残酷なカラクリに吸い込まれていくんですよね。
でも、それが30km圏だったりするわけなんですよね。
でも、本当はそうじゃなくて、この日本という国の生活者はみんな、実は同じように触手が伸びて、
僕らの毎日の消費行動も、結局ここに吸い込まれているんですよね。
その延長線上に僕らが居るという。
「避難訓練は故郷を捨てる練習なんです」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
避難計画もね、この資料は、「事故が起きた時にどういう風に避難するか」輪っかがいっぱいついてる地図も載っているんですけど、
僕は、広瀬さんもおっしゃってたんですけど、「避難訓練をやってはならない」と、一切。
樋口健二:
僕は意味がないと思っています。
アーサー・ビナード:
意味は無いし、僕は心理的に精神的にやっちゃいけないことだと思うんですよ。
どうしてか?っていうと、今おっしゃったように、ま、本当に運が良くて、ものすごく珍しい原発事故のケースで、先に、放射線物質が降ってくる前に情報がきたとするでしょ。
樋口健二:
(笑)
アーサー・ビナード:
これも確立で例え話みたいなもんだけど、でも、本当に避難できたとするでしょ、ここ(原子力だよりかごしま)に書いてあるみたいな感じで。
それで、あんまり初期被曝もせずに、自分の住んでいる地域にセシウム、ストロンチウム、放射性ヨウ素、プルトニウム含めて降ってきた時に、自分がもう先に離れたとするでしょ。
でも、そんなことができたとしても、ふるさとはもう無い。
樋口健二:
無い。
そのことが非常に重要だよね。
原子力だよりかごしまには、そんなこと一言も書いて無いよね。
アーサー・ビナード:
書いて無い。
二度と戻れないし、戻れたとしても、それは被曝を覚悟して、劣化した環境で、残酷な被曝を強いられるような生活になる。
つまり、避難計画が作られて、それで避難訓練とかをやって、地域でみんなで頑張って、
それで、もうね、確率は1%以下だと思うんだけど、奇跡的に本当に避難できたとしても、
自分たちで、自分たちからすすんで故郷を捨てて、先祖の山、先祖の川、この美しい列島のあるところを、全部潰したということになる。
だから避難訓練は故郷を捨てる練習なんです。
精神的にそんなことをやっちゃいけないんですよ。
もう日本人じゃなくなる。
僕が言うとおかしいんですけどね、
樋口健二:
いえいえ、あなたの指摘はね、外国の人の指摘はとってもいいものを持っているんですよ、僕に言わせると。
でね、ひとつだけここで、ちょっとちょっかい入れさせて。
実は皆さんね、JCOの臨界事故が1999年9月30日にあった。
あの前にね、避難訓練をやってたんですよ。
やってたけどなんの役にも立たなかったね。
僕はそれで被曝して今、再生不良性貧血になっているわけだけども。
本当に皆さん、放射線をあの当日、最初はね、たった350mって言ったんだよ。
アーサー・ビナード:
350mってね、もう敷地の中ですよね。
樋口健二:
それで、周りに知らない人たちがみんな居ちゃったんだよ。
だから、あんなこと(避難訓練)をやっても、なんの意味もありません。
それからね、事故のわーって知らせがあったらね、車で逃げるはずでしょ。
今度は渋滞でアウトですよ。
だからなんの意味もありません。
まず原発をやめりゃあ、こういうことは起きねえってことだよ。
そうだよね。
何にも意味なんて、彼が言う通りですよ、意味無いんですよ。
アホらしいことやってんだよ。
それで、これをあんまりやっているとね、一般の国民は「ああ、ああやって逃げりゃいいんだ」、
要するに、マスコミにいいように乗せられたっていうことですよ、また。
マスコミを批判すればいいんですよ。
なんであんなことを報道するんだって。
その先のことはどうなってんだって。
今彼が言うように、故郷なくなって、以降どうするんだっていう話。
そこが欠けてるんだよね。
いいこと言いますね。
アーサー・ビナード:
本当に。
だから、「故郷を捨てる訓練」って意味があると思うんですよ、彼らにとっては。
原発をやりたい人たちは、みんなに、半ば強制的に避難訓練をやらせることで、予行練習をさせてる。
僕はアメリカ国籍なんですけど、今年(2015年)の年末は、危なすぎてやらないと思うんだけど、
時々年末になると、米政府が、予算が通らないとデフォルトして、それで債務不履行に、要するにアメリカが借金を踏み倒すの、やってたでしょ。
あれはいつかやるつもりだから、練習してる。
樋口健二:
これも練習ね。
アーサー・ビナード:
練習練習。
ニュースとか、権力がやるようなことって、よく見ていると結構練習が多いんですよね。
みんなにまず、こう慣らして、「ちょっと過激に聞こえることを言ってみて、どのくらいみんなが抵抗するか」って。
だからこの避難訓練も、もしかしたら、「故郷を捨てることに慣れる」、「故郷を捨てる」という選択肢があるようにみんなが考え始める。
みんながそういう人間に成り下がっていくための心理作戦だっていうことも、僕は考えていいと思うんですね。
樋口健二:
安心感を植え付けるね。
アーサー・ビナード:
そう、安心感と諦め。
つまり、「もうそうなったらしょうがないね」、自分の故郷がいつかそうなるかもしれない、「だったら逃げればいい」って。
そういうふうに思考回路を作っていく。
でも本当は、そういう思考回路の中に、僕らは入っちゃいけないんですよ。
だって、故郷捨てるって最低じゃないですか。
って言いながら僕、デトロイトにいないんですけど(笑)、でも、捨ててはいない。
樋口健二:
故郷っていうのはね、何十年たっても、僕も信州の山の中だけど、年取ってきたら故郷に帰りたい。
アーサー・ビナード:
信州のどこですか?
樋口健二:
信州の諏訪郡富士見町で、標高1000mだよ。
だから僕は逃げ出したのよ、食えないから。
アーサー・ビナード:
そうか。
樋口健二:
でも故郷はやっぱり、歳とれば取るほど懐かしい。捨てられませんよ。
アーサー・ビナード:
でも放射能汚染が。
樋口健二:
放射能汚染がないからね。
アーサー・ビナード:
放射能汚染が自分の故郷に降ったら、
樋口健二:
放射能汚染が起きる前に、やっぱり止めさせる運動をしなきゃね。
福島があの通りだから。
もっとはるか遠くのチェルノブイリは、30km圏内はみんな住めなくなってる。
「脱原発だけじゃダメだ。脱オタンコナスをやろう」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
広島に行ったりきたり、広島にいることが多くて、もちろん広島県だけじゃないんですけど、広島の市民が、なんとかね、
福島にいて生活している方々、特に子供達が、比較的線量の低いところで、しかも選りすぐりの食べ物食べて、夏の間でも、休みの間でも保養して、内部被曝を減らすことができたらいいな、って。
福島のことを、福島以外のところもみんな思っていて、そういうふうに保養の運動をしている人たちがいっぱいいて、友達も頑張ってるんですよね。
北海道でも、野呂美加さんは、チェルノブイリの事故の後に、ベラルーシの子供達を受け入れて、それをずっとやってきて今も、関東東北の子供達もやってる。
でもね、保養で、僕らがチェルノブイリとつなげて考えるときに、一つ忘れちゃいけないことがあって、
これは、みんなそれぞれが判断すべきことだと思うんですけど、
もし、僕の数字の計算とか、僕の今まで見た地図と汚染の度合いの資料が間違ってなければ、ベラルーシでは、事故から何年かかけてなんですけど、
今、日本政府が、いろんな生活者を戻そうとしているようなところには、人は一人も住んでいないんですよね。
で、例えば、野呂さんがずーっと受け入れて、子供達の内部被曝をなんとかしようとしていた、そのベラルーシの子供達が住んでいる地域っていうと、東京都とか、関東ぐらいの汚染なんですよ。
で、もっと濃い汚染のところには、何年に人が住めなくなった、何年にここはダメだっていうふうになったかって、少し年代は違うんですけど、
でも、基本的には、日本にベラルーシから来てた、あの可愛い素晴らしい子供達が、実は関東の日本の子供達ぐらいの汚染の地域に住んでたんですよね、住んでるんですよ。
それが今、日本の市民には見えていないような気がする。
どれほど被曝が恐いか。
それで、どれほど低線量が警戒しなきゃいけないかっていう。
で、僕は、いつもそう考えるときに、樋口さんがちゃんと、労働者の被曝、労働者が30mSvだったらどうなったか?って、その一人一人の人生、一人一人の体験を踏まえて撮ってるので、
もちろんベラルーシ、ウクライナ、チェルノブイリのデータと29年の体験があるから、そこを踏まえてもいいんですけど、
でも、日本国内でも、(原発)労働者に目を向けていれば、もうちょっと、今政府に何をつきつけなきゃいけないのか、
保養をやる市民でも、何をしようとしているのか、もうちょっと具体的になるんですよね。
樋口健二:
そうだね。
これちょっといい?
皆さんね、この被曝問題が、3.11以前に持ち上がらなかった理由があるんですよ。
これは末端の労働者達だったから。
これが皆さんのようにね、ハイクラスの集まり、中産階級の人たちにもし及んでたら、これ社会問題になってたんじゃないですか。
違いますか。
これは大きなネックだったね。
それから、どうしてそういうふうに抑えてきたかっていうのは、さっきも言いましたね、連合ですよ。
ここが本気になって、こういうことが起きてる、自分とこの労働者はあれだけど、末端の人たちを皆さん、助けるようなことをしましょう、ってもし言ったらね、違ったんじゃないですかね。
ただ、これを言っても仕方がないから、前を向いていくしかないんですよ、今。
というのは、ここにこんなに集まっている、この人たちが変えてってくれるんだ。
だから僕は、そういう意味で、ちょっと時間はかかったけど、世の中が変わるってことは皆さん、容易なことじゃない。
つまりね、今の日本は、民主主義で手をあげたらさ、ほとんどが自民党になっちゃう。
だけど、少数真理という言葉があるじゃないですか。
少数の中にとても重要な意見があるんだって。
これで行きたいなと僕は思っています。
アーサー・ビナード:
樋口さんは政治家ではないので、政治屋でもないし。
だからちょっとね、僕が聞くのはお門違いかもしれないんですけど、
樋口健二:
いや、いいんですよ。
アーサー・ビナード:
原発が嫌だって、ちょっともうやめてほしいって思っている人は、多分、この日本列島の人口の半分以上はいるんですよね。
樋口健二:
半分どころじゃねえの、70%と思ってください。
アーサー・ビナード:
はい。
でも、さっきおっしゃったように、自民党に入れちゃう。
樋口健二:
入れちゃう。
アーサー・ビナード:
これはね、アンポンタンだから?そういうことなんですか。
樋口健二:
もちろん。
いや、これねほんと、ここにいる人たちは入れないだろうけどね、
アーサー・ビナード:
入れてるかわかりませんよ、上流階級、ハイクラスの。
樋口健二:
あのね、実はこの選挙がね、どうして勝っちゃうのかっていう答が見えたんだよね。
うちの国分寺っていうとこがあるんだよね。
それで、民主党が来ても誰もこない。
自民党来たらね、老人がみんな集まる、駅前で。
これわかる?
みんな、そういうふうに通達を出している。
昔から、保守的な人たちがいるじゃないですか。
それで、生活は非常に逼迫しているのにね、「自分ところになんかしてくれる」って思っている。
アーサー・ビナード:
あべこべのことをされてるのに。
樋口健二:
そういうところが勝っちゃうんですよ。
だって、投票率は実は22%という…。
これですよ、日本の保守層っていうのは、最後には自民党。
こういうところから、これから変えていくしかないんですよ。
変えてくの、これから。
そういうことじゃないですか。
アーサー・ビナード:
僕も、全くそう思う。
駅前のそういう光景も、僕は見たことがあって、そういう光景を見ると、なんか言い方が失礼だけど、老害みたいな感じですよね。
樋口健二:
ああ、老害だね。
アーサー・ビナード:
でも、僕は、大学生とか高校生といろいろ話す機会があって、そういう意味ではすごく恵まれているんだけど、大学で教えているわけじゃないけど、呼ばれて。
そうすると、なんかこう、変な存在としてすっと入れるんですよね。
ま、樋口さんがいろんな現場に行って、
樋口健二:
俺なんかもっと変ですよ。
アーサー・ビナード:
僕も大学に行って、それで英文学の話なんかしたり、いろんな話をするんだけど、大学生と話す機会がいっぱいあるから、聞くんですよ、みんなどう考えているかとか。
で、投票はこれから18歳からやるから、高校生にもちょっとそういう話を振ってみるんですけど、
意外と18、19、20、21、22も、自民党に入れちゃうの。
樋口健二:
そういう教育を永遠とやってきているんです。
アーサー・ビナード:
そうです。
で、さっき言ったアンポンタンか、アンポンタンじゃなくて、彼らはオタンコナスなの。
もっとわかってないんだから、すごいんですよ。
樋口健二:
とってもいい言葉。
日本人が今のあなたのようなことを言ったら、ぶっ飛ばされるけどね。
アーサー・ビナード:
彼らは何にもわかってないですよ、見事に。
だから、可愛くていい子たちだなと思うんだけど、でもそれじゃあ餌食にされるだけじゃない。
樋口健二:
そういうことです。
アーサー・ビナード:
国分寺の駅前に集まる、貧困にあえいでいる老人の方と、あんまり変わらないんですよ。
樋口健二:
ほとんど変わりません。
アーサー・ビナード:
だからそこが…。
僕も希望を別に失っているわけじゃないし、アンポンタンだって言いながら、実は自分だって20歳の時アンポンタンの最たるものだったし、
樋口健二:
みんなそうなんですよ。
アーサー・ビナード:
ですよね。
だから、自民党は延々と、みんなオタンコナスなまんま、やっていきたいんですよ。
今の与党は愚民政策以外、何にもやらないんですよね。
でも、それに対抗する、僕らの、少数派であったとしても、学んで見抜く流れを作らないといけないです。
これも「10年かけて」とかってやってると、憲法を潰されて、もう弾圧の時代に入りかねないので、
なんかこう、樋口さんの写真展以外に何かこう…。
樋口健二:
この運動が3.11から持ち上がって、反原発にだいぶこう、持ち上がったよね。
1000万署名なんて、すごいと思ったよね。
それで最初はみんなやっぱり、ここにいるような人たちばっかりだったんだよ。
ところがね、大学生が立ち上がりましたね。
高校生も最初はね、少数だけど立ち上がってる。
一番素晴らしいのはインターネットだ。
これがあるからね、僕は希望を持っていますよ。
優秀な子が世の中にはいますよ、やっぱり。
この連中が一生懸命やってくれている。
で、あなたが言うアンポンタンを変える力を持ってると思うんです。
で、あなたはね、そのいまの言葉は、遠慮なくいろんなところで、大学で言ったらいい。
言ってやって、「あなたらはアンポンタンよ」って。
アーサー・ビナード:
だからその言葉もね、山本太郎さんと中国地方でツアーを組んで、ずいぶん前ですね。
彼が芸能界から外されて、俳優の仕事が全然なくて、でも、いまの職業に就く前の、ある意味、太郎さん、どうしたらいいかって、その時に中国地方を回っていて、
「脱原発」というふうに話を聞きに来てくれた人たちが言ってたんだけど。
僕は「脱原発だけじゃダメだ。脱オタンコナスをやろう」って。
だって、原発だけじゃないからね。
樋口健二:
そう、いろんなものがみんな絡んでるもんね。
アーサー・ビナード:
そう、さっきの利権の話がすごく重要で、原発が何も偶然に続いているわけじゃなくて、何も止められない必然性もなくて、
でもこれだけの企業、メディア、経済力と政治力を持った組織が全部、これにがんじがらめになって、それで、抜ける方法すら失ってる。
この状況の中では簡単には止められない。
樋口健二:
そうそう。
アーサー・ビナード:
だからそこなんだよね。
樋口健二:
でもね、そこだからこそ、相手が大きければ大きいほど、我々は頑張らなきゃいけないっていうことなんですよ。
しょぼくれちゃ絶対にいけないの。
アーサー・ビナード:
でも樋口さん、色々と、どんなに素晴らしい写真を撮っても載せてもらえなかったり、どんなに声をあげても無視されたり、落ち込むことはないですか?
樋口健二:
ない!
いい質問をしてくれました。
実はね、僕の写真は大体、陽の目を見るのに最低10年かかるんだよね。
一番僕が辛いのはね、患者たちが、「早く発表してくれねえのか、我々は死んでくんだ」。
僕もね、説得力が非常にうまいですよ、百姓の出だから。
相手もみんな百姓だ。
あるいは漁民だから、俺、信州弁丸出しでやるわけ。
安心するのよね。
朝日新聞の記者たちと違うのよ。
こうやって上からものを見ない。
そこ行って座るのよ。だからこうやって真正面。
で、百姓言葉を使ったからね、これがぴったり来ちゃってね。
ま、そういうことで、希望を絶対失っちゃいけない。
もう一度言うよ。
40年間無視されてきたんだよ。
でも必ず誰かが共鳴してくれる。
共感してくれる。
俺の写真に感動してくれる。
時があるかもよ、っちゅってきたんだから、そしたらあったじゃないの。
でもね、ありがたいことで、3.11以後は6冊の本が出ましたね。
とにかく僕のやってきたことを、みんな本にしてくれました。
自費出版は一冊もありません。
それだけね、僕はやっぱり、この支援というより、重要だって言ってくれた編集者たちがいたってことよ。
だから、いまバーっと6冊じゃなくて、その前にプチ、プチ、プチ、プチと出るでしょ。
そうするとこれがね、全国ネットで僕の本を買ってくれる人が、2000人ぐらいおるんだぜ。
2000人もいるんだぜ。
だから、その人たちを、次の作品が出た時に裏切っちゃいかん。
これが僕の支えになってきた。
そしたら今こんなに、何十になってると思う?みなさん。
いい加減にやめろって思ってるでしょ、心の中で。
彼に話させりゃいいじゃないかって。
そんなわけで、とにかく支援をしてくれた人たち、これを裏切れなかったということでしょうね、僕は。
そうじゃなかったら、信州に10年に一回ぐらいは、小学校の同窓会があるじゃない。
一度行った。
みんな隠居してたよ。
「おめえは元気だなあ」っちゅわれて。
俺はね、ちょっと仕事があるんだよ。
一生やらなきゃいけない仕事。
どこで野垂れ死にしてもいいんだけどさ、ジャーナリストなんてのは。
まあ頑張りたいと思っています、よろしく。
中略
「突き詰めていくと、中産階級って要するに貧乏人のことなんだよね」
樋口健二×アーサー・ビナード(文字起こし)
アーサー・ビナード:
(樋口さんは)自分の置かれている立場と被写体の立場が一緒。
そうじゃない写真を撮る人、そうじゃない視線で世の中を見る人はいっぱいいるんですけど、
でも、突き詰めていくと、さっきの中産階級っておっしゃったんだけど、中産階級って、要するに貧乏人のことなんだよね。
ただ、極端な貧乏じゃない。
貧乏人ってつまり、ビル・ゲイツとソフトバンクの孫さんとか、今の世の中は、そういうとてつもない富を得ている人たちが本当の金持ちで、
この間証券会社の人と会ったんだけど、ミリオネアっていう言葉はもう誰も使わなくなったって。
どうしてか?っていうと、うじゃうじゃいるから。
ミリオネアっていうのは貧乏人のことなの。
ビリオネアじゃないと金持ちじゃないんですよ。
ビリオンって、丸を三つ増やすことをビリオン。
樋口健二:
こんな差があるんだよ。
アーサー・ビナード:
そう、その人たちが、実は金持ちなんですよ。
だから、ファーストホールディングスのYさん、Yさんのぼっちゃま、Yさんのもう一人のぼっちゃま、
彼らの資産を合わせれば、国家予算みたいなものですよね。
でも、僕らは彼らと比べたら、中流だろうと下流だろうと、本当に日雇いしかないっていう人、生活保護の人と、本当は仲間なんだよね。
仲間じゃないっていうのが実は錯覚で、いつでもそこに落ちていけるし、いつでも僕らも同じように扱われる。
福島ではそれが示されたんですよ。
福島の原発の風下にいた人たちは、中流も下流も、みんなSPEEDIの情報を得られなかった。
みんな、誰もまともな避難をさせてもらえなかった。
本当に選ばれし人は、もしかしたら、米軍のヘリで運ばれたかもしれないけど、
僕らはその情報も得られないという、それがもう、はっきりしたんですよね。
樋口健二:
ちょうどいい、ちょっと一言言わせて。
みなさん、電通っていうのを知ってるでしょ、日本の最大規模の広告会社。
その電通が、あの事故で、ほとんど外国へ一度逃げたそうだね。
すごいですよ、広告とつながってるからね、これは早いですよ。
60年安保闘争のアレを決めたのは電通だからね。
すごいじゃないですか、びっくり仰天したんだ、金の力。
ー続きますー