これを見ると、ああ、もうすぐクリスマスがやってくるんだなあ、という気分になります。
といっても、ユダヤ教を信仰している、少なくない数の人たちにとっては、クリスマスは全く関知しない行事なので、町中のというのでもないのですが…。
かくいうわたしもクリスチャンではないので、クリスマスをお祝いするという行為に、宗教的な意味合いをあまり感じられない者のひとりなんですけれども。
まあでもやっぱり、この、一年で一番夜が長くて暗い時期に、自分にとって大切な人たちの笑顔を想像しながら、あれこれと贈り物を考えたり、
香りがみずみずしいクリスマスツリーを部屋の中に置いて、小さなライトや飾り付けをしたりしていると、心がホカホカしてきます。
そして今日は、長男くんの誕生日です。
彼は今日で28才になりました。
お祝いの電話をかけたら、「28なんていう数字が信じられへん…」と一言。
「今でいうアラサーやん」というとゲタゲタ笑っておりました。
親子ともどもあの世行き寸前だった、彼の誕生日前の3日間は、今だに強烈に覚えています。
あれからもう28年、まだお腹の傷痕は、年に数回熱をもち、内側が痒くて仕方が無いようになってしまうのに…。
明々後日の日曜日に、旦那とふたりでマンハッタンに出向き、お祝いディナーをご馳走しようと思います。
さて、伴奏を任されていたウィンターコンサートが、無事に終わりました。
時差ボケの中、いつもの何倍もの早さで仕上げなければならなかった難曲もうまくいき、ダリルの暴走もそれなりに食い止められたので、
今はただただ、ぼぉーっとした疲れとともに、安堵感に浸っております。
浸っているといえば…、
昨夜、浴室の壁張りにやって来た責任者のケヴィンに、思っていることを正直に話してみました。
コンサートやお客や、それから年末年始のレッスン調整などで、ドタバタしていながらも、やっぱり頭から離れなかった浴槽の傷のこと。
旦那は旦那で、あの浴槽を教えてくれた設計者のスチュアートに話をしていて、スチュアートが良い腕の修復士を知っているんだけども、と言うのですが、
いくら傷が見えなくなったとしても、やっぱりわたしには合点がいかず…、
でも、こういう考え方って、誰にとっても嬉しくないんだろうなあ…とも思ったり…。
で、旦那としては、別に新品と交換しなくても、そうやって修復してもらえるならそれでいい、という考え方だったので、
わたしがそれに賛成できないのなら、わたし自身が直接、その気持ちをケヴィンに伝えてみるしかないんじゃないか、ということになり、
ドキドキドキドキしながら、2階で作業をしているケヴィンの所まで行きました。
旦那も一緒に付いて来てくれたけれども、自分は全く助け舟を出すつもりはない、という意味なのか、自分の書斎のドアの所で座り込んでいて、
ええと、ええと、ええと…、
「ケヴィン、今までの、あなた方がやってくれた仕事には満足しているし、いったい誰があんなふうに、まるでゴミ箱のように、浴槽に瓦礫や掃除機を入れたのか知らないのだけれども、
あの時の、ゴミが浴槽いっぱいに入れられているのを見た時のショックは、どう表現したらいいのかわからないほど大きかった。
今回の一番の楽しみはこの浴槽だったし、だからとても珍しい型で値も張るものだから、こんなことをお願いするのはすごく心苦しいのだけども、
わたしはやっぱりどうしても、この浴槽を取り外して、新しい浴槽を入れ替えてもらいたいです。
そのために、いろんなことが二度手間になるだろうし、仕事の計画が崩されてしまうことは本当に申し訳ないのだけれど」
「まうみの気持ちはよく分かるよ。いったいなんでこんなことをしたんだろうかと、ボクも思う」
う~ん、空気が重い…。しばらく沈黙の時が流れました。
「よし、取り替えよう」
膝を突いて浴槽を覗き込みながら、ケヴィンはそう答えてくれました。
ああよかった!わかってくれる人でほんとによかった!
作業に戻ったケヴィンを残し、ホッとした気持ちで夕食の続きを食べていると、ケヴィンがいきなり2階から叫び出しました。
え?なんで?と思いつつ、まず旦那が駆け上がり、今度は旦那がわたしの名前を呼ぶので急いで行くと、
ダァ~ッ!!
またまた水が床に流れているではありませんかっ!!
そして今回もまた、次男くんが洗濯をしている最中なのでした…。
いったいなんで?と、ありったけのタオルで床の水を拭き取りながら、3人で調べていると、あっ!!
洗濯機からの排水は一旦、すぐ隣に設置された(ついこないだ壁から外れてぶっ倒れた)水槽の中に入るのですが、
そのホースが多分、電気工事が正しく行われているかどうかを検査している時に、検査員か電気工事人のどちらかによって、水槽から外に出されていたようです。
なので、洗濯機からの排水が、直接床にジャージャー流れ落ちていた、というわけで(だから次男くんは全く悪くなかったのだけども)…。
「まうみ、だから、洗濯機は地下だって!」
大笑いしながら、拭き掃除を手伝ってくれるケヴィン。
いやあ、もし彼がいてくれてなかったら、またまた大洪水になってしまっているところでした…。
でも、でもね、これで3度目の洪水騒ぎでしたが、どの時も、洗濯機が悪いわけではなかったんですよね~。
1回目と2回目は、配管工さんが、工事中の配水管のフタを付け忘れたからだったし、3回目は、誰かが排水用のホースを水槽の外に出してしまってたからだしな~。
と、未練タラタラで言い訳していると、「もうさ、オレっちがタダで動かしたげるから!」とケヴィン。
あぁ~、そんなこと言っていいのかな~?ほんとにいいのかな~?
ゲラゲラ笑いながらも、ホースが二度と動かされることがないように、紐でグルグル巻きにしてくれたケヴィン。
ほんの5分前は、重たい空気が我々の間に立ちこめていただけに、この水騒動で笑い飛ばすことができたみたいで、なんだか嬉しかったしホッとしました。
その晩、彼からメールが送られてきました。
『あの浴槽については、イヤな思いをさせてほんとに申し訳なかった。できるだけ早く注文してもらえるだろうか。明日の夕方、その代金を払いに行くから』
ごめんねケヴィン。ほんでもってほんとにありがとう。