わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉薬とガラス 12(透明と不透明釉3)

2011-10-30 21:41:30 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

   粘土や釉の原料に成る物質は、温度上昇に伴い、何らかの理由で、必ずガス(水蒸気等)を

   発生させます。 粘土ならば、結晶水や有機物質、硫黄成分などからガスが発生します。

   100℃で水蒸気が、窒素や塩素成分は200℃、結晶水は500℃、炭酸ガスは700℃、硫黄成分は900℃

   程度の温度で、ガスが放出されます。

   長石もガスに成る成分を含んでいますし、炭酸バリウムも1200℃位で 炭酸ガスを発生させます。

   又、釉薬などには、揮発する物質も多く入っています。 例えば、酸化ジルコニウムは950℃で、

   酸化銅は1000℃位からで、酸化クロムは1050℃、酸化ホウ素は1150℃程度から、揮発し始めます。

   それ故、釉の粘性を少なくする等で、上手にガスを逃がさないと、失透になって仕舞い勝ちです。   

 ② 結晶釉について。

   微細な結晶が釉面全体に出現する釉では、マット状に成りますが、透明感のある釉の中に、

   際立った大きさの、星型や扇型、不定型等の結晶が見られる時は、「結晶釉」と言います。

  ) 「マット」と「結晶」とは、見た目には違って見えますが、基本的には同じ現象です。

     違いは、結晶の大きさの違いです。又、「マット」が釉の全体に析出するのに対し、「結晶」は

     一部の場所に集中して析出します。

  ) 結晶を大きく成長させるには、以下のような事が必要です。
   
   a) 冷却はゆっくりさせる事: 1150~1100℃の範囲では、時間を掛けて窯を冷やします。

     その為には、壁の厚い窯か、容積の大きな窯、即ち、冷え難い窯を使うか、或いは途中で

     再点火して、窯を暖めながら冷やします。

   b) 釉の粘性を少なくする事: 結晶すべき物質が、釉の中で自由に移動出来、一箇所に集まり

     大きな結晶を作る為には、粘性が少ない方が有利です。

     その為には、釉のアルミナ成分を少なくする事です。但し、流れ易い釉に成りますので注意。

   c) 同じ釉であっても、冷却スピードが速いと「マット状」になり、遅いと「結晶」が発達します。

     更に、急激に冷却スピードが速いと同じ釉でも、結晶が生成できる間も無く、透明釉に

     成ってしまう事もあります。

  ③ もう一種類のマット釉。

   a) 前記までに述べた、「マット」になる原因は、高温で釉の中に原料が完全に熔け込み冷却時に、

     微細な結晶が析出する結果ですが、他の種類の「マット」は、高温時でも釉に熔け込まず、

     化学的にも不活発(反応しない)な物質を含む場合の「マット」です。

   b) その様な物質には、二酸化ジルコニウム、三酸化アンチモンや失透剤と呼ばれる物があります。

     失透剤としては、酸化錫(すず)や酸化チタン(ルチル)、骨灰などの燐酸化合物があります。

   c) これらの失透剤を使う場合、ムラ(斑)の無い均等な失透を作るには、アルカリ成分を

     少なくする事です。アルカリ成分は原料を熔かす働きがあり、失透剤を熔かすか可能性もある

     為です。

   d) 釉の着色剤の顔料も、釉と反応しないと言う点では、失透の役割を果たします。

     尚、着色剤については、後日お話する予定です。

 ④  乳濁釉について。

以下次回に続きます。
  
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