人は思い込みにより、事実を正確に捉えていない事がある。
何のCMだったか忘れたけど、店主と従業員の会話で
「この給料の2割を貯金しなさい」と言われた従業員が「無理です」と
答え、「じゃ、この給料の8割で暮らしてごらん」と言われると、
「やってみます」と答えた。そして上の言葉につながっていく。
「何故今これを?」と言えば、実際にそういう場面が昨日あったからだ。
親父は仕事を終える10分程まえに、車のエンジンをかける。
車内を温めておくためだ。仕事場から家までは10分もかからないので、
こうしておかないと、車内が温まった頃には家についてしまう。
親父は良く言えば大らかな性格で、悪く言えばちょっと抜けた所もある。
また、親父にとっての便利なモノの基準とは、ズバリ「早さ」なのだ。
車内を温めるのにしても、一瞬で温める事が出来ない「不便さ」を感じている。
だから、時間を逆算してエンジンをかける。
親父と僕の車は向かい合って止まっている形になっている。僕は方向転換をして
出ていく事になるので、大体は親父の車が動くのを待っている。
昨日もそうだった。
「久し振りにチェンジしてみるか!」
少し聞き飽きたMDを変える。
ここ数カ月間、僕の車の中ではBENNIK-Kとケツメイシが、
「僕の車の中でかかる曲大賞」1位獲得を目指してヘビーローテーションで
かかっている。今月の初めには「おめでとうレコード大賞キャンペーン」として
倖田來未も流れていたが、「エロかっこいい」は声だけでは楽しめない。
親父の車が動き出すのを、MDを探しながら待っていた。
MDの交換も終わって視線を上げた時、まだ親父の車が動いていない事に気付く。
「どないしたんや?」
と思っていると、車から親父がおりてこっちへ向かってくる。
「?」助手席の窓を開けると、
「ちょっと車みてくれ」と力の無い声で言ってきた。
「どないしたんや?」
落ち込んでいる雰囲気にただならぬモノを感じて、親父の車に近づいていく。
「温まるどころか、車ん中寒いんや!」
ドアを開けて車内に顔を突っ込むと確かに涼しい風が吹いている。
それにインパネの警告灯がすべて点灯している。
「故障かな?」と思ってイロイロと触ってみても、変化はない。
警告灯が一斉についている意味を、その時は理解出来なかった。
ここまで書けば、わかる人も居られるだろう。
「ちょっと見てもらいに行ってくるわ!」
親父も覚悟を決めたのか、近くの車屋に持っていく事にしたみたいだ。
車に乗り込む親父。
その時はじめて僕は全てを理解出来た。
「これ、エンジンかかってへんやん!」
「え?」
慌ててキーをひねると、スターターが悲しげな音をたてエンジンがかかった。
お互いの顔を見つめる。親父は照れたように微笑んだが、僕は呆れていた。
この時はじめて二人は「エンジンがかかってない」事に気付いた。
エンジンをかけたつもりでいた親父。かかっているものと思い込んで
イロイロと原因を探っていた僕。
「そういえば、今日はエンジン音が静かやなと思とったんや!」
と何事もなかったかのように、立ち尽くす僕を残して親父の車は帰路についた。
親父は良く言えば大らかな性格で、悪く言えばちょっと抜けた所もある。
何のCMだったか忘れたけど、店主と従業員の会話で
「この給料の2割を貯金しなさい」と言われた従業員が「無理です」と
答え、「じゃ、この給料の8割で暮らしてごらん」と言われると、
「やってみます」と答えた。そして上の言葉につながっていく。
「何故今これを?」と言えば、実際にそういう場面が昨日あったからだ。
親父は仕事を終える10分程まえに、車のエンジンをかける。
車内を温めておくためだ。仕事場から家までは10分もかからないので、
こうしておかないと、車内が温まった頃には家についてしまう。
親父は良く言えば大らかな性格で、悪く言えばちょっと抜けた所もある。
また、親父にとっての便利なモノの基準とは、ズバリ「早さ」なのだ。
車内を温めるのにしても、一瞬で温める事が出来ない「不便さ」を感じている。
だから、時間を逆算してエンジンをかける。
親父と僕の車は向かい合って止まっている形になっている。僕は方向転換をして
出ていく事になるので、大体は親父の車が動くのを待っている。
昨日もそうだった。
「久し振りにチェンジしてみるか!」
少し聞き飽きたMDを変える。
ここ数カ月間、僕の車の中ではBENNIK-Kとケツメイシが、
「僕の車の中でかかる曲大賞」1位獲得を目指してヘビーローテーションで
かかっている。今月の初めには「おめでとうレコード大賞キャンペーン」として
倖田來未も流れていたが、「エロかっこいい」は声だけでは楽しめない。
親父の車が動き出すのを、MDを探しながら待っていた。
MDの交換も終わって視線を上げた時、まだ親父の車が動いていない事に気付く。
「どないしたんや?」
と思っていると、車から親父がおりてこっちへ向かってくる。
「?」助手席の窓を開けると、
「ちょっと車みてくれ」と力の無い声で言ってきた。
「どないしたんや?」
落ち込んでいる雰囲気にただならぬモノを感じて、親父の車に近づいていく。
「温まるどころか、車ん中寒いんや!」
ドアを開けて車内に顔を突っ込むと確かに涼しい風が吹いている。
それにインパネの警告灯がすべて点灯している。
「故障かな?」と思ってイロイロと触ってみても、変化はない。
警告灯が一斉についている意味を、その時は理解出来なかった。
ここまで書けば、わかる人も居られるだろう。
「ちょっと見てもらいに行ってくるわ!」
親父も覚悟を決めたのか、近くの車屋に持っていく事にしたみたいだ。
車に乗り込む親父。
その時はじめて僕は全てを理解出来た。
「これ、エンジンかかってへんやん!」
「え?」
慌ててキーをひねると、スターターが悲しげな音をたてエンジンがかかった。
お互いの顔を見つめる。親父は照れたように微笑んだが、僕は呆れていた。
この時はじめて二人は「エンジンがかかってない」事に気付いた。
エンジンをかけたつもりでいた親父。かかっているものと思い込んで
イロイロと原因を探っていた僕。
「そういえば、今日はエンジン音が静かやなと思とったんや!」
と何事もなかったかのように、立ち尽くす僕を残して親父の車は帰路についた。
親父は良く言えば大らかな性格で、悪く言えばちょっと抜けた所もある。