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日々の暮らしのなかで

帰る君

2009年11月15日 | 日記・エッセイ・コラム
車を止める瞬間に“あっ!”って思った
 
買い物に出かけた午後
車を駐車場に滑り込ませると、なにやらオレンジ色の
憎い奴!
一瞬、何が落ちているのか分からなかったが
ドアを開けて降りてみると、それは
カエルのヌイグルミだった
 
安全ピンが付いてる
服につけていたのか、バックにつけていたのか
どちらにしても、安全ピンは閉じたままだったんで
千切れて落ちたんだろうと予想してみた
 
結構可愛い感じのカエルだったんで
コレクターでもないが、拾って持って帰ろうかと
思ったが、目の前に二人組の男が
缶コーヒーを飲みながら屯ってたんで、やめた
 
買い物を済ませ、戻ってみると
まだヌイグルミは落ちたまま
幸い、男二人組は居なくなってたんで
拾って見た
 
タグが付いてるんで、手作りではなさそうだ
 
(持って帰れるな)
 
手作りなら、少々気持ちのこもったもので
気になるところだが、大量生産の市販品なら
心も痛まない
 
買い物袋とヌイグルミを車に乗せ
もう一度、飲み物を買いに店に戻った
 
車に戻り、助手席の足元に放り投げておいた
カエルに視線を落とす
その瞬間、あの日の光景が脳裏に甦った
 
今年の夏、葬式の為に預かっていた
20万もの金を落とした
このブログでも、その恐怖体験を書いたんで
覚えている方も居られるだろう
 
あの時、交差点の真ん中に落ちている封筒を見つけた
時には、本当に嬉しかった事を覚えている
その安堵感が甦った時に、ふと思った
 
(このヌイグルミも誰かが探しているかも知れない)
 
それは、小学2年生ぐらいの女の子かも知れない
どこで落としたのか、気付けばいつも傍らにおいて
可愛がっていたカエル君がいない事に気付く
 
もちろん狼狽、そして、号泣
 
両親はまた買ってやるからとなだめるも
女の子は、カエル君を失ったショックでもう
号泣
 
あまりの落胆ぶりにお父さん決心
 
「よし!探そう」
 
今日一日の道どりを辿る
一縷の望みを持って、丁寧に探す・・・・
 
そんな状況が展開されているかも知れないのに
今、その大事なカエル君は僕の助手席にいる
 
(君は、ここに居てはいけない) 
 
胸が詰まりそうになって、僕は
カエル君に咄嗟に左手を伸ばし拾い上げた
 
もと居た場所に戻そうと思ったが
女の子が探しに来た時に
車が真上に止まってしまっていては探しにくい
いや
誰かが気付かずにタイヤで潰してしまうかも知れない
 
少し迷ったが、店の玄関先においておく事にした
店の人に届け出ようかとも思ったが
貴重品ならまだしも、ただのヌイグルミ
女の子と僕にとっては大事なモノでも
やっぱ、それはただのヌイグルミだ
 
(めぐり合えるといいな) 
 
店先に置いてからは、振り返ることなく
帰ってきた
見続けると、辛くなるからね
 
カエル君、女の子と再会できたか?