入梅というのにまとまった雨が降らない。雲は多いのだが、パラパラとい感じの雨が通り過ぎると、一気に気温が上がる。花も梅雨時のアナベルやアジサイに交じって夏ツバキ、ムクゲなどの夏の花、木陰にコスモスも咲いている。花にとっても、この季節、咲くべきか、咲かざるべきか、大いに悩ましい季節なのだ。植物たちの間隔を狂わせてしまうほど、いろんな季節が混じりあっている。ここでは少雨に農家が悩んでいるのに、西日本や関東の一部では、梅雨末期の大雨が降っている。ひと月ほど前高騰して手の届かなかったキャベツが、一転捨て値のような状況で市場に出回っている。産地のキャベツが出回ると、価格維持のために廃棄処分すら起きかねない状態である。
今年は、近所の庭に、夏ツバキが咲いている。こんなにも好まれて植えられるのかと、いまさらのように知らされた。別名ヒメシャラともいう。仏教で名高い沙羅双樹があるが、熱帯性の植物のため日本では育たない。お寺などで、その代わりととして、夏ツバキ(ヒメシャラ)が植えられたという説もある。芥川龍之介もこの沙羅の花が好きだったと見え、詩にこの花を書き残している。
また立ちけへる水無月の
嘆きを誰にかたるべき。
沙羅のみづ枝に花咲けば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。(芥川龍之介「相聞」より)
こんな詩を思い出しながら、夏ツバキの花を見ると、この白い花は美しい人の涙をたたえた目に見えなくもない。
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