新居綱男さん、軽々と登って行きました。
(前回のつづき)
リフト西島駅からいよいよ、キレンゲショウマの咲く行場方面に出発です。歩き始めは例によっていきなりの坂道。刀掛ノ松まで尾根道を歩きます。この道は前回初めて歩いた、一番ポピュラーなルートです。またまた遅れがちでしたが、何とか刀掛ノ松に到着し休憩している一行と合流できました。そのとき、あの新居綱男さんが、横を「こんにちは」と声を掛けながら通り過ぎていきました。「お世話になっています」と声を掛けるのが精いっぱいでした。
太い木の棒を持ったいつものスタイル、ひょうひょうと歩く姿はまるで仙人のようでした。
刀掛ノ松を左手に進むと、意外にも道は下る斜面の道。下るということはまたその分、登るのかな、と考えていると、キレンゲショウマの案内板が目に留まりました。周辺は一方通行になっていました。その道を下から歩いて上がってきたハイカーの一言。「ここの坂道は相当にきついよ。年寄りには堪えるよ」というものでした。この「年寄り」が誰のことを指しているのかわかりませんでしたが、キレンゲショウマの群落を見るには、覚悟が必要だということは、よくわかりました。しかし、今の私の体力では、まったく自信がありません。
少し進むと、前方から、「あった」という声がしました。その指差す方向に目をやると、見上げる斜面に、キレンゲショウマが何株も咲いているではありませんか。標高1800mほどの、深い山間にひっそり咲くキレンゲショウマの姿です。道の上側に洞窟のような岩が見えました。その岩の上付近にも咲いており、アップで写すならここだと思いました。ここは「不動の岩屋」といい、近づくと奥の方から水の流れる音が聞こえ、冷気が流れてきます。まさに天然のクーラーのようでした。できることならこのままじっとしていたい、と思いますがそうもいきません。カメラを構え、精いっぱい望遠にしてピントを合わせようとしますが、手に力が入らずなかなかうまくいきませんでした。
本来なら、先ほどの一方通行の道をぐるりと進めば、キレンゲショウマの群落を2か所ほど観ることができたと思うのですが、T社長から「下を廻っていたら時間がないので、頂上に向かいましょうか!」の一声で、一同、不動の岩屋・横の急な山道を登って頂上を目指すことになりました。せっかくキレンゲショウマの群落を見に来たのに、この決定は実に残念でしたが、確かに下を廻っていたら時間がないどころか、ギブアップしていていたかもしれません。ということで、最後の難関、とにかく急な山道を登ることになったのですが、前方にはツアーの姿は見えなくなり、定期的に「大丈夫ですかあ!」と声をかけてくれていた女性スタッフの姿もそのうち見えなくなってしまいました。どうやら体調を崩した人がいたようです。とにかく熱中症になっては大変と水分をこまめに摂りながら、少し歩いては休み、そしてまた休む。時には膝をつき、時には座り込み、最後の力を振り絞って前進あるのみです。前にも後ろにも人の姿はなく、ほんとにひとりぼっちになってしまいました。(つづく)
やっと出会えたキレンゲショウマ 行場・不動の岩屋周辺