今晩は、井戸掘り仲間の長老ご夫婦の送別会である。長老とはいえ、84歳にはとても見えないくらい元気だ。大学の工学部を卒業し、機械設計に携わってきた人なので、何かと言えば「ちょっと図面を書いてみる」と、アイディアを絵にして見せてくれた。彼の家の車庫は彼の仕事場で、電気ノコから電気ドリル、電気溶接機や万力など、様々な道具が揃っていた。いかにも几帳面な性格だと一目で分かるのは、それらの道具が整然と並べられていることだ。分類ごとに分けてあるばかりか、同じものなら大きな物ら順番にしてある。
息子さんは豊田市に住んでいるけれど、娘さんが横浜に居るので、その娘さんの近くのマンションを買って引越しすることになった。息子よりも娘の方が気安いのだろう。息子には嫁がいるし、娘には婿がいるのだから、嫁よりも婿の方が話易いのかも知れない。私は娘ふたりで、そのどちらの婿も嫌いではないけれど、やはり会話になると気を使う。自分の娘であっても、世代差があり、価値観が違うのだから仕方のないことだけど、娘たちに自分の考えや価値観を押し付けるようなことは絶対に出来ない。
横浜で、井戸掘り仲間を集めたいと言うけれど、高齢になると身構えることが多くて、初めての土地で友だちは出来にくい。いつまでも会社の社長だったことを評価してはくれないし、そんな昔の肩書きを口に出せば鼻つまみ者にされてしまうだろう。だからと言って、もうこの歳では誰にでも愛想よく話をせよというのも無理なことだ。家の中にばかり閉じこもれば、カミさんから煙たがられる。カミさんの後ばかりついていれば、ますますぬれ落ち葉扱いだ。
「最後に、どちらか一人になった時に、お世話になる施設も決めてきた」とまで言うのだから、覚悟は出来ているのだろう。長老のカミさんのお母さんは100歳まで長寿を全うして、先日旅たった。ご夫婦を見ていると、やはり長老の方が先に逝きそうだ。カミさんの方は娘の近くに住み着いて、やはり母親と同様に100歳を超えるのかも知れない。もう時間だから、今日はこれで終わりにしよう。