安倍首相がTPPへの交渉参加を決めた。どこの国も外国から金は稼ぎたいが、関税を撤廃して自国の産業を圧迫したくない。条件は皆同じように見えるけれど、国際条約はいつも強い国が有利に出来ている。幕末に結ばされた通商条約の不平等さを挽回することが、明治以降の政府の役割だった。そして条約の交渉は戦争へとつながった。小国とはいえ、列強に負けない精神で戦った日本だったけれど、結果は歴史が語っている。
国益を守ることが外交であるから、いかにして不平等を最小限に抑えるかにある。けれど、不平等であることに変わりはない。どこの国も儲けようと必死だ。そのために、外国には金を出させるが、自国は金を出さないで済むようにと考えている。日本は自動車などの産業では負けないらしいが、農業では負けそうだという。差し引きでプラスになるなら、交渉に参加すべきだと積極派は言い、それでは外国資本に乗っ取られることになると消極派は危惧する。
中国の全人代で、新首相が決まった。李克強さんは57歳、北京大学で経済博士号を取得した共産主義青年団のエリートだという。全国最年少の43歳で河南省の党書記に就任し、経済振興で評価を得て上り詰めてきた。貧しい農村の生まれだが、最難関の北京大学法学部に入学し、在学中に英語の専門書の翻訳を行なうなど、同級生からは「異常なほど勉強していた」と言われる秀才らしい。歴代の首相は理工系であったのに、経済の専門家を首相に据えたのはやはり中国のお国事情だろう。
中国は目覚しい経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国となったけれど、一人っ子政策の影響で労働人口は頭打ちだから、これからは高齢化となることは必至だ。役人の腐敗や広がる貧富の格差、金持ちとなった人たちは既得権益を守るために画策するだろう、さらに環境汚染など、問題は山積みである。経済学博士の李首相は「内需を拡大し、効率よく成長のアクセルを踏むため、農村からさらに多くの労働者を都市に移住させる」と唱える(朝日新聞)。これは資本主義の初期段階の政策である。
安倍首相も李首相も、それぞれに自国の利益を追求しているわけだが、どうやら方向としては同じである。日本は収入の20倍もの借金をして右肩上がりの経済を目指し、中国はさらに多くの労働者(消費者)を作り出して経済振興を図ろうとしている。そんな国が本当に豊かな国なのだろうかと、年寄りの私は思ってしまう。