友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

作家・渡辺淳一さんの逝去

2014年05月06日 18時23分29秒 | Weblog

 作家の渡辺淳一さんが亡くなった。『失楽園』『愛の流刑地』で有名になった作家だが、私はまだ、どの作品も読んでいない。「不能になった男が知る真実の愛」を描いたという『愛ふたたび』を読んでみようと思ったが、これも読まずにいる。『失楽園』は余りにも周りで話題になっていたので、映画を観に行ったけれど、どんなストリーだったのか全く覚えていない。女優の黒木瞳さんがとてもきれいだったことしか思い出せない。

 「僕は実感的なものしか書きたくない」と渡辺さんは言う。頭で構築していくミステリーやSF小説を嫌った。「狂おしい恋愛をしたり、死ぬほど女を追いかけたり」することに、人間の生きている意味を見出そうとした。「いろんな人がいる。良い面と悪い面を同時に持つ人もいる」。そんな人間の存在、何も不満がないのに愛に流されてしまうことの根源を描いてきた作家なのだろう。『チャタレー夫人』を書いたD・H・ローレンスに通じるのかも知れない。

 高校生の時、文芸部の友だちは吉行淳之介を高く評価していた。吉行の作品を読めと勧めてくれたが、私には馴染めなかった。私はヘルマン・ヘッセやスタンダール、ドストエフシキーやスタインベックに関心があった。日本の作家では、石川達三や大江健三郎に惹かれていた。社会とか時代とかを感じられない作品は読む気になれなかった。いや、それよりも好きな女の子がいるのに、性的な関心は別の年上の女性に向かってしまう、自分の矛盾した気持ちが恐かった。

 人間の本性を赤裸々に追及していく作家こそが作家と思うようになった。車谷長吉さんや井上荒野さん、友だちが勧めてくれた坂東真砂子さんの作品は面白い。それだけ私も歳を取り、人間がどんな社会でどんな風に生きているのか、少しは分かるようになったのかも知れない。渡辺淳一さんが「人間の生命力の根源はエロスであり欲望、そこにはいやらしさはなく、いとおしさを感じる」と言っていたが、なるほどと実感できる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする