昨年9月、東京のラーメン店で、席に座った男性が隣の男から暴行を受けて死亡する事件があった。男性は大きな男の隣りだったので椅子を自分の方に引いて座った。これがなぜか男を怒らせた。120キロある男は男性を引きずり倒すと、顔や腹を何度も蹴り踏みつけた。通報で警察が到着するまでの間、男は「どうせ刑務所へ行くのだから最期の晩餐だ」と言ってラーメンセットを注文し、たいらげたという。男性は病院に運ばれたが死亡した。裁判所は男に対して懲役7年を言い渡した。
その前の年、三重県朝日町で中学3年の女子が襲われ殺害された。遺体は下着姿だったが暴行されてはいなかった。昨年3月、高校の卒業式の翌日に18歳の少年が逮捕された。昨日、津地方裁判所は少年に強制わいせつ致死と窃盗の罪で、懲役5年以上9年以下の不定期刑を言い渡した。裁判員裁判で行なわれ、裁判長は少年に「残念ながら事件ときちんと向き合っているように思えない。他人の痛みが分かる人間になって欲しい」と語った。
日本では殺人に対する刑が軽すぎると指摘する声は少なくない。「何の落ち度もない人の命」を奪うことは絶対に許されないし、大切な命を奪われた家族の悲しみは計り知れない。大黒柱を失って、生活そのものが壊れてしまう場合だってある。「命を奪った者は命で償え」という気持ちはよく分かるけれど、私は死刑には賛成しない。しかし、人の命を奪いながら、懲役7年とか、少年だから5年から9年の不定期刑というのはおかしいと思う。しかも日本では仮釈放という制度があり、刑期を待たずに出所出来る。
罪を犯したとき、どうすることが償うことになるのか、本当のところ人間には分からないと思う。戦争がいい例だけれど、正義のためとか国のためという大義があれば、人は人を殺しても罪の意識を持たない。むしろ周りの人も賞賛する。罪を犯しても、犯した人はそれぞれ自分を正当化する思考があるのだ。裁くことも償うことも難しいのであれば、情状酌量など考えずに、殺人なら無期懲役と機械的に定めた方がスッキリするが、人は永遠に難問を抱え込んで生きるしかないのかも知れない。