「子育ては自分育て」。その通りだと思う。分かっていても実際はうまくいかない。だからこそ、みんな悩んだり苦しんだり焦ったりする。大和塾の第46回市民講座は、「ビリギャル」のお母さんの橘こころさんを講師に迎えた。私は新聞記事を読んで、ぜひこの人に来て欲しいと思った。橘さんと娘さんが書いた本『ダメ親と呼ばれても学年ビリの3人の子を信じてどん底家族を再生させた母の話』〈発行:(株)KADOKAWA〉を読んで、その思いはさらに強くなった。
我が家は核家族で、娘をふたり授かった。長女はユニークな子で何にでも挑戦するが、次女は臆病で自分を前に出さない子だった。長女を見ているとあまりに元気が良すぎてハラハラすることが多かった。実際よく怪我をした。行儀も悪くてヒヤヒヤした。紙人形を使ってひとりで遊んでいるのを聴いていると、それは素晴らしい物語だった。私は、「勉強はしたくなったらすればいい。今は好きなことをさせよう」と言うが、小学校の教員のカミさんは「そんなことをしたら問題児になってしまう」と大反対だった。
「子育てで両親の考えが違えば、混乱するのは子どもで、責任も取れないのに面白がらないで!」とカミさんは怒る。「大きくなれば何が良いか、必ず分かる。好きにさせてやらなければこの子でなくなってしまう」と私は言う。いつまでも平行線のままだった。「勉強はしなくてもいい、好きなことは夢中になっていい」と言った、私の言葉の前半部分だけを娘たちは忠実に守ってくれた。それでも「人には優しく」という私の願いを実行してくれる人に育ってくれた。
「叱らない」ことは実際には難しい。思い通りにならないからどうしてもイライラしてしまう。「子育ては自分育て」という根拠もここにある。人を否定しないで認める、子どもを夫を妻を周りの人々を認める、そこからしか幸せの道は開けないだろう。橘こころさんの家族は今はとても和やかに話が出来るという。受験の秘策を聴きたかった親子もいた。「絶対、この大学にいくという強い意志を持つこと。そして1日に15時間勉強する」とビリギャルは答えていた。