風が冷たい。冷たいだけでなく、どんどん強く吹いてきている。昨日までは夏のような暑さが残っていたのに、一変して秋本番となった。北海道で雪が降ると、東京では木枯らし1号が吹くという。街路樹のケヤキが赤く色付いてきたし、マンションの庭の桜も赤く染まってきた。これから寒い時期になるのかと思うと、思わず身震いしてしまう。
NHKテレビの朝の連続ドラマ『あさが来た』は、幕末から明治への転換期に大阪の両替屋に嫁入りした女性が主人公だ。大河ドラマ『花燃ゆ』も吉田松陰の妹が主人公で、どうもNHKは明治維新が好きな気がする。その前の『坂本龍馬伝』の時も、「新しい国」という言葉が何度も出てきていたが、朝のドラマでも「新しい時代」という言葉が頻繁に使われている。
幕末の人々は「新しい時代」「新しい国」を口にしていたのだろうか。そんな意識を持っていたのだろうか。長州や薩摩の、幕政に対する不平・不満を抱いていた武士たちは討幕を口にしても、新しい国のイメージを持っていたとは思えない。成り行き任せで勃発的な行動が結果として、新しい時代を切り開くことになってしまったのが事実ではないかと思う。
先のことが読めるというか、考えられるようになったのはつい最近のことだ。手塚治虫が描いた漫画『鉄腕アトム』や映画『バック・トゥ・ザ・フュチャー』で、未来を予想していたものの多くは実際に実現できている。物はどんどん現実社会に実在するようになったが、たとえばTTPが成立し、それがどんな影響を生むのか、それによって社会はどう変わっていくのか、科学的に証明することは出来ない。
社会の仕組みだって、誰も予想できない。議会制民主主義を今はベストとしているが、これに代わる制度を提案することが出来ないでいる。幕末の討幕の志士がワイワイガヤガヤ思い付きでことを起こしたように、現代の人々もまた暗中模索して進む以外ないのかも知れない。