名張毒ブドウ酒事件が起きたのは1961年3月で、新聞に大きく載っていたので覚えている。私は高校1年、三重県で大変な事件が起きたというくらいの記憶しかない。その犯人と言われた奥西死刑囚が医療刑務所で亡くなった。奥西さんは取り調べで、「妻がブドウ酒に農薬を入れるのを見た」と供述したが、その後で「三角関係を清算するため、ブドウ酒に毒を入れた」と自白し、起訴直前になって否認、裁判では無罪を主張してきた。
真実がどこにあるのか、私には分からない。35歳で逮捕されて54年間も無罪を訴え続けたことに驚いてしまう。たとえ本当に無実だとしても、人生の半分以上を費やし訴え続ける意志の強い人だと思う。諦めてしまうか、諦めきれなければ、気が狂ってしまうだろう。支えてくれた人がいたから貫き通せたようだけれど、私がその立場だったら果たして出来るかは疑問だ。普通の人なら自暴自棄になってしまうだろう。
昨日、「ビリギャル」のお母さんも、「諦めない」ことが大切だと言った。世の中にはそういう強い意志の人がいるけれど、軟弱な私には無理な気がしてしまう。強い意志はどうしたら育つのだろう。ラグビーのW杯イングランド大会で、日本チームはサモアチームに26対5で勝った。南アフリカに勝った時は多くの人が驚き、喜びに沸き立った。続くスコットランドに大敗し、やっぱりまだ力不足だと落ち込んだ。しかし、その落胆はサモア戦で吹き飛んだ。
どうして勝てたのか、それはチームの強い意志だという。強い意志があれば必ず勝てるというわけではないが、強い意志がなければ勝てない。そう考えると、自分に強い意志があったとするとそれはいつだったのかと思う。寝る間も惜しんで取り組んだのは、地域新聞の発行だった。いろんなことがあって、もう後がなかった。これが出来なかったら私は生きている価値はないと思った。
「やる気になれば出来る」とビリギャルさんから教えられた。人生はいろいろ、思うこともいろいろ、やる気になれば何でも出来る。そんなものかも知れない。先輩が言う。「くよくよ暮らしても人生。笑って暮らしても人生。だったら、笑って暮らす方がいい」。「失敗だったら、また挑戦すればいい」。なるほどいつもいいことを言う。