永六輔に続いて大橋巨泉が亡くなった。若い人たちには馴染みがないが、ふたりは私よりも10歳か11歳年上でテレビやラジオで活躍した時代の寵児である。大橋巨泉はテレビのイレブンPMの司会で有名になった。永六輔は「上を向いて歩こう」「遠くへ行きたい」「こんにちは赤ちゃん」などの作詞で名を上げたが、私にはラジオ番組『7円の旅』が心に残っている。
ふたりは共に東京で生まれで、早稲田大学を中退し放送関係を活躍の場に選んだ。体制に迎合せず、しかし過激に走らず、リベラルであることに徹した自由人である。大橋巨泉は10年近くガンと闘い、何度も手術を受けている。放射線治療と抗ガン剤治療の副作用はかなりきつかったようで、夫人は「本当によく頑張った」と認めている。本人は原稿も書けず好きなワインも飲めず、「生きていてもしょうがない」と漏らしていたらしい。
一時代を築いたふたりである。80代まで生きて本望だろう。アメリカでは共和党の大会でトランプ氏が大統領候補に指名された。差別的な発言を繰り返していたトランプ氏が指名されることはないとの憶測は完全に外れた。使命を受けたトランプ氏は「今日は特別な日、決して忘れない」「雇用を取り戻し、軍隊を再建し、国境を強化する」「アメリカを再び偉大にする」と演説した。下院議長は「アメリカは変わる」と指名を称え、結束を呼びかけた。
「チェンジ」を合言葉としたオバマ大統領に多くの人々が熱狂したが、期待した変化は起きなかった。イスパニック系の移民や密入国者によって、職が奪われるあるいは奪われるのではないかという恐怖が広がっている。イラク戦争を始めたのは共和党のブッシュ政権であったのに、他国のためにアメリカの税金が使われているのはケシカランという気持ちになっている。中国やロシアや北朝鮮が、アメリカの偉大さを理解していないと腹を立ててもいる。
アメリカ人の中に湧き出しているもの、日本やイギリスやフランスやドイツなどの先進国にどこか共通しているものがある。永さんや巨泉さんはこんな世界の動きをどう見ているのだろう。大学4年の孫娘から「合格だった」と電話があった。よくやったネ。これからは子どもたち、そして孫たちの時代だ。