小学1年の孫娘も、そして2歳の孫娘も、今朝は熱もなく元気でいると言う。私の子どもの頃は、「美味しいものを食べてよく寝れば治る」と言われた。美味しいものの代表はバナナでその次は玉子だった。昔、娘たちにそんな話をしたが、想像ができないようだった。「近頃の若いヤツは」と言われてきた私たちも70代。これも娘たちに話したことだが、私が子どもの頃は、70代の人をあまり見かけなかったし、見かけても顔はしわくちゃで腰が曲がった老人だった。
「最近、物忘れがひどくて」と同年代の人は言う。けれど、「歳のせいで、物忘れがひどいというのは誤解です」と東大の脳研究者の池谷裕二先生は指摘する。「脳は歳をとっても簡単には衰えません。むしろ、歳をとるほど向上する脳の働きもあります。それが直感力です」と言う。でも、どうして近頃は物忘れが多いのかと不思議に思う。池谷先生は「身体の衰えを脳の衰えと思い込んでいるのです」と説明する。
そして、「物忘れやど忘れは子どもも年配者もかわりません」と。それなのに高齢者は「物忘れがひどくなっている」と自分を責め、「やっぱり、歳だから」とか、「ますます進行してどうなっていくか」と不安を大きくしてしまう。ところが子どもは物忘れをしてもケロッとしている。高齢者は身体の衰えから生まれる諸々で脳まで衰えたと思い込み、追い込んでいるのだ。脳が活動できるのは、「目で見る、手で触る、耳で聴く、身体からの情報が入るからだ」と言う。
だから、好奇心の旺盛な先輩はいつまでも若々しいのかと納得できた。私の周りの人を見ても、いつも何かに興味を持って動いている人、散歩などちょっとした軽い運動を続けている人、他人のためにボランティア活動をしている人などは、年齢よりも若く見える。私の子どもの頃よりも背筋が伸びた老人が多くなったのは、こういう前向きな人が多くなったせいだ。美味しいものを食べ、いろんなことに興味をもち、多分、恋でもすればもっと活き活きと生きられるだろう。