凄まじい事件が起きた。神奈川県の障害者施設で19人が殺害された。犯人はこの施設の元職員の26歳の男性だった。彼は今年2月に、衆議院議長に手紙を出すために2時間も議長公邸前に座り込み土下座していたという。その手紙の内容が中日新聞に掲載されていた。「常軌を逸する」ことだと自分でも「重々理解しています」とあるが、「全人類のために必要不可欠であるつらい決断をする時だ」と宣言し、「私が人類のためにできることを真剣に考えた答えでございます」と殺害の正当性を述べている。
戦争にいった兵士のように、「革命」の名の下に銃を奪った赤軍派の青年のように、ジハードのために自爆テロを行うイスラムの人のように、この犯人は自分の残虐な行為が人類のためになると確信している。けれども、まだ子どもっぽいのは、「作戦を実行するに私からのご要望」として、「逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせてください」「新しい名前、本籍地、運転免許証等の生活に必要な書類。金銭的支援5億円」と述べている。マンガや映画にあるかも知れないが、現実社会にあるはずがないことが全く理解できていない。
彼は障害者施設の様子を「保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の描けた瞳」と表現し、「日本国と世界のため」であり、「世界経済の活性化、本格的な第3次世界大戦を未然に防ぐことができる」ので、「意志の疎通ができない人たちをナイフで刺した」というのである。「重度障害者の大量殺人は、日本国の指示があればいつでも実行する」と述べていた。障害者のためにどれだけの税金が使われているかと周りの人に話している。障害者を生きていても意味がないと彼はどうして考えるようになったのだろう。
殺害された人の年齢は高い。私たちは他人事のように事件を見ているけれど、実際はいつ痴呆になるか分からないし、障害者になる可能性は極めて高い。彼は若いから自分が障害者になることなど考えられないから、役に立たないものは抹殺してよいと考えただろうが、この世界に不要なものは何もないし、人はそれぞれなのだからみんな受け入れて行く社会でなければならない。