特定秘密保護法案が参議院の特別委員会で、自民党議員から審議打ち切り動議が出され、自民・公明の与党議員によって可決された。与党は本日中に本会議で可決成立させるという。安倍首相や森担当大臣が何度も言ってきた、「丁寧に説明し、充分に審議する」とはこういうことだった。弁護士やジャーナリストらに続いて、ノーベル賞学者らが「法案に反対する学者の会」を立ち上げ、映画製作に関わる人たちが反対声明を出し、少しずつ国民運動になっていく流れが生まれてきたが、遅かった。
やはり気になるのは、テレビのニュースキャスターと言われる人たちが表に出てこなかったことだ。新聞記者からニュースキャスターになった人が、「反対声明を出そう」と呼びかけたが、「反対だけれど、名前は出せない」と言われたと聞く。第1線で活躍している人たちでさえこんな程度なのかとガッカリした。法案が成立したからといって、直ちに世の中が変わるわけではないけれど、どんな風にでも拡大解釈できるわけだから、権力にとっては「鬼に金棒」である。
それに、学生が全く動かないというのも不思議だ。12月初日、再来年の就職説明会が大学3年生を対象に行なわれたニュースが放映されていた。学生たちは皆揃ってリクルートスーツで、企業の説明に聞き入っていた。これからの社会のことよりも、再来年の就職が気になるのも分かる。それでも2年生とか1年生なら、まだ就職は先のことのはずだが、大学紛争で揺れていた時でも、闘争に参加していた学生が「就職が決まって 長い髪を切った」(『いちご白書をもう一度』)という歌詞に現実が象徴されている。
井戸掘りをしている家のカミさんが、「男はロマンだけれど、女は金だでね」とおっしゃる。そんなにあからさまに言われると、「そうばかりじゃーないでしょう」と反論したくなるけれど、「若い時は、愛だ恋だと言っているけれど、だんだん年取ると安定が一番大事になる」と逆に叩き込まれる。確かに男も、ロマンがだんだん小さくなって、庭に井戸を掘ろうとか、玄関にランの花を置こうなどと変わっていく。私が春にチューリップを、夏はサルビアをというのもそんな流れと同じだ。