風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

椿

2013-04-08 00:47:14 | 日々の生活
 園芸、今風に言うとガーデニングには興味がありませんが、もとより絵でも人でも花でも、美しいものには惹かれますので、横文字の花の名前をいくつも言える人は、それだけで尊敬してしまいます。
 昨日、子供の学校が始まる前に定期券を継続(更新)するというので、駅まで散歩がてら出かけました。普段は一心不乱とは言わないまでも、きょろきょろする余裕はもちあわせませんが、久しぶりの土曜日朝の散歩だったので、のんびりぼんやり歩いていると、ちょっと目立たない、とある生垣に、椿の花を見つけました。桜は最近の雨風でほとんど散ってしまって、可憐な花を愛でてきた目には、同じ桜色でありながら派手めのいでたちが却って新鮮で、つい目を奪われました。
 典型的な椿として思い浮かべるのは真っ赤な「一重咲き」ですが、見かけたのはご覧の通りの「八重咲き」でした。調べたところ、どうやら「乙女椿」という品種のようで、中輪(開花時の花の直径7~9cm)「千重咲き」椿の代表格とありました。Wikipediaを見ると、花の形ひとつとっても、「一重咲き」には猪口咲き、筒咲き、抱え咲き、百合咲き、ラッパ咲き、桔梗咲き、椀咲き、平開咲きなどといった呼び名があり、「八重咲き」には唐子咲き、八重咲き、千重咲き、蓮華咲き、列弁咲き、宝珠咲き、牡丹咲き、獅子咲きなどといった呼び名があって、ここでも、日本語の多彩で表現力に富むところには感心します。
 椿の花には、様々な色や形があり、日本産のものだけで2000種を超えると言われるのは、他家受粉で結実するために変種が生じやすいことから、古くから品種改良が行われてきたことによるようです。日本原産で、古くは「古事記」では”都婆岐”、「日本書記」では”海石榴”と表現され、「出雲風土記」にすでに「椿」が用いられるほど、日本人には馴染みの花木で、近世以降は、公家・将軍・大名が園芸を好んだことから庶民の間でも流行したほか、茶道でも珍重され、冬場の炉の季節は茶席が椿一色となることから「茶花の女王」の異名を持つそうです。18世紀には、イエズス会の助修士G. J. Kamellが、フィリピンでこの花の種を入手してヨーロッパに紹介したところ、冬でも常緑で、日陰でも花を咲かせる性質が好まれて大流行し、八重咲き・牡丹咲き・獅子咲きなどの大~極大輪、豪華な花容のものが好まれたそうです。なんとなくヨーロッパらしいですね。
 桜は花の一つひとつより、一本の木あるいは並木の遠景が魅せてくれるのに対して、椿は花一つが魅せてくれます。散る時も、桜は遠目に見る花吹雪が美しく、椿は花一つ・・・花弁が基部で繋がっていて萼を残して丸ごと落ちると、余り縁起が良くないことで知られますが、如何にも椿の生き様を象徴するようです。
コメント
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