壁をピンク色に塗り替えた実験室で着るのは、白衣ではなく祖母からもらったかっぽう着で、研究室にはペットのスッポンがいて、机にはキャラクターが並んでいるのだそうです。「弱冠」という言葉は、中国・周の時代の制度に由来し、男子の20歳を「弱」と呼び、元服して冠を被ったことから、男子の20歳を「弱冠」と呼ぶのが本来の用法ですが、今では女性にも、また単に若いだけでなく、一般的に成し遂げられる年齢よりも若いという意味でも使われるそうですから、小保方晴子さんにも使ってよいのでしょう。弱冠30歳の快挙です。
弱酸性の刺激を外から与えるだけの簡単な方法で万能細胞を作製することに、マウスを使った実験で成功し、新しい万能細胞として「刺激惹起性多能性獲得(STAP: Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)細胞」と命名したそうです。その意味するところのインパクトが、私にはいまひとつ分かりませんが、同じ研究者の声を聞いてみると、その「すごさ」が分かります。
「2006年に山中先生の(iPS細胞の)論文を読んだときと同じくらいの衝撃を受けた。ちょっと想像できないすごい発見だ」(水口裕之・大阪大大学院教授(分子生物学))
「大変面白い成果で驚いた。従来の常識にとらわれない発想が生んだ成果」(中辻憲夫・京都大教授(幹細胞生物学))
「また日本人が万能細胞の作製法を書き換えた。山中伸弥氏は四つの遺伝子で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ったが、STAP細胞は一時的に酸性溶液に浸して培養するだけ。どれだけ簡単になるんだ」「最も単純でコストも安く、早い作製法だ。人の細胞でもできれば、オーダーメード医療の実現につながるだろう」(英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのクリス・メイソン教授)
なにより少子化・日本で「女子力」に期待する安倍総理はさぞ喜んだことでしょう。高視聴率を維持するNHK「ごちそうさん」の長女・ふ久ちゃんも「理系女子」であり、タイムリーです。余りに常識破りなため、昨年春、英科学誌ネイチャーに投稿した際は、「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している」と酷評され、掲載を却下されたというエピソードつきで、伝説になる要素は十分です。
もっとも、そもそもなぜSTAP細胞ができるのか、その仕組みは全く分かっていませんし、人の細胞ではまだ出来ておらず、本人は、STAP細胞の再生医療への応用について、「特定の一つの応用に限るのではなく、数十年後とか100年後の人類社会の貢献を意識して研究を進めたい」と将来を見据える壮大な(彼女は早大・院ですが)ものです。
日本のこの分野での突出した研究成果は、日本人として実に晴れがましいですが、余りの報道の過熱ぶりに、研究活動に支障が出ているとする文書が、所属する「細胞リプログラミング研究ユニット」の公式サイトに掲載されました。どうも本人やその親族のプライバシーに関わる取材が過熱し、知人・友人をはじめ近隣に住む人にまで迷惑が及ぶというように、研究とは関係がないところへ取材が殺到することに当惑し、心苦しい思いをされているようです。余りにも「普通」や「常識」からかけ離れているものですから、その正体を探りたくなるのが人のサガであり、浮かれたい気持ちもやまやまですが、それこそが日本人の意識が遅れている証拠に他ならず、また、研究という性格上、ここはぐっと我慢して、野次馬は野次馬らしく外野でそっと見守ってあげるべきでしょう。
弱酸性の刺激を外から与えるだけの簡単な方法で万能細胞を作製することに、マウスを使った実験で成功し、新しい万能細胞として「刺激惹起性多能性獲得(STAP: Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)細胞」と命名したそうです。その意味するところのインパクトが、私にはいまひとつ分かりませんが、同じ研究者の声を聞いてみると、その「すごさ」が分かります。
「2006年に山中先生の(iPS細胞の)論文を読んだときと同じくらいの衝撃を受けた。ちょっと想像できないすごい発見だ」(水口裕之・大阪大大学院教授(分子生物学))
「大変面白い成果で驚いた。従来の常識にとらわれない発想が生んだ成果」(中辻憲夫・京都大教授(幹細胞生物学))
「また日本人が万能細胞の作製法を書き換えた。山中伸弥氏は四つの遺伝子で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ったが、STAP細胞は一時的に酸性溶液に浸して培養するだけ。どれだけ簡単になるんだ」「最も単純でコストも安く、早い作製法だ。人の細胞でもできれば、オーダーメード医療の実現につながるだろう」(英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのクリス・メイソン教授)
なにより少子化・日本で「女子力」に期待する安倍総理はさぞ喜んだことでしょう。高視聴率を維持するNHK「ごちそうさん」の長女・ふ久ちゃんも「理系女子」であり、タイムリーです。余りに常識破りなため、昨年春、英科学誌ネイチャーに投稿した際は、「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している」と酷評され、掲載を却下されたというエピソードつきで、伝説になる要素は十分です。
もっとも、そもそもなぜSTAP細胞ができるのか、その仕組みは全く分かっていませんし、人の細胞ではまだ出来ておらず、本人は、STAP細胞の再生医療への応用について、「特定の一つの応用に限るのではなく、数十年後とか100年後の人類社会の貢献を意識して研究を進めたい」と将来を見据える壮大な(彼女は早大・院ですが)ものです。
日本のこの分野での突出した研究成果は、日本人として実に晴れがましいですが、余りの報道の過熱ぶりに、研究活動に支障が出ているとする文書が、所属する「細胞リプログラミング研究ユニット」の公式サイトに掲載されました。どうも本人やその親族のプライバシーに関わる取材が過熱し、知人・友人をはじめ近隣に住む人にまで迷惑が及ぶというように、研究とは関係がないところへ取材が殺到することに当惑し、心苦しい思いをされているようです。余りにも「普通」や「常識」からかけ離れているものですから、その正体を探りたくなるのが人のサガであり、浮かれたい気持ちもやまやまですが、それこそが日本人の意識が遅れている証拠に他ならず、また、研究という性格上、ここはぐっと我慢して、野次馬は野次馬らしく外野でそっと見守ってあげるべきでしょう。