風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

平昌五輪開会式の行方

2018-01-25 00:10:34 | 時事放談
 安倍首相は、2月9日に行われる平昌五輪の開会式について、官邸で記者団に「事情が許せば出席したい。2020年東京五輪がある。同じアジアの平昌五輪に出席し、選手団を激励したい」と明言したらしい。まさか、そんなことはないだろうと思っていたから、正直なところ驚いた。
 なにしろ、慰安婦問題を巡る日韓合意に関して文在寅大統領が身勝手な「新方針」を打ち出したのに続き、鄭鉉栢女性家族相は23日の記者会見で、日韓合意に基づいて設立された韓国の「和解・癒やし財団」を年内に解散させるだの、国際社会で対日圧力を強めるだの、言いたい放題である。さすがに日本国民も我慢ならないと見えて、産経新聞社とFNNがその前の20~21日に合同で実施した(という意味で多少は保守寄りの)世論調査によると、慰安婦に関する日韓合意に対する文大統領が示した「新方針」について「納得できない」と回答した人が実に90.8%、日本政府が韓国側の要求に応じないことについて「支持する」と回答した人が88.6%にのぼったという。日本人の感覚としては当然だろう。
 しかし、よくよく考えたら、安倍首相のこの政治的決断は、まさに政治的だと思うが、妙案に思えて来るから不思議だ。米中露首脳が参加しない寂しい五輪開会式に花を添えて、文在寅大統領に恩を売る。平和とスポーツの祭典である五輪と政治を切り離し(一方の韓国は五輪を政治利用して、恬として恥じないのだが)、参加する選手のことを気に掛ける。こうした相手の懐に飛び込む大胆かつ巧妙な外交と、安倍首相の言葉に滲む懐の深さは、却って好感度を上げることになるかも知れない。このあたり、2年前の慰安婦合意のときもそうだった。当初、なんでや!?と訝しがったが、よくよく考えると妙案だと思ったのに似ている。
 勿論、リスクはある。安倍首相がかかる状況下で訪韓すると、文在寅政権の「新方針」を追認したと、あるいは韓国のわがままは今回も許されるのだと、間違って受け留められかねない。国際社会に対しても誤ったメッセージを送ることになる。その意味でも、訪韓にあたって実施されるであろう日韓首脳会談できっちり話が出来るかどうかがポイントだろう。
 日本政府が韓国政府に打診した首脳会談開催を、果たして韓国政府は受けるかどうか。北朝鮮問題で頭が一杯の文在寅大統領は、逃げ切りたいと思っている慰安婦問題の日韓合意がテーマに上ることになる首脳会談を避けたがっているに違いない。もし首脳会談に応じなければ、安倍首相の開会式出席はやっぱり見送りになるかも知れない。
 こうして今回もまたボールは韓国に渡されて、実に興味深い政治ゲームが始まった。安倍首相の外交政策はなかなかしたたかだ。一体、誰をアドバイザーに起用しているのだろう。
コメント
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