トランプ大統領は、一般教書演説の中で、金正恩朝鮮労働党委員長との2回目の首脳会談を今月27~28日にベトナムで実施することを明らかにした。日経・夕刊は、ベトナムについて、北朝鮮の友好国であること、2017年秋のAPEC首脳会談を開催した実績があることに触れているが、それだけではない。開催地ベトナムと取り沙汰されて以来、その象徴的な意味合いに感慨深い思いを抱いた人が多いのではないだろうか。
エドワード・ルトワック氏の近著によれば、昨年6月の米朝首脳会談で、トランプ大統領は金正恩委員長にビデオを見せながら「ベトナム・モデル」を語ったということだからだ(このあたりは以前ブログに書いた:https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20180930)。ベトナムは、共産党一党支配の社会主義国ではあるものの、チャイナ・プラス・ワンの有力候補として投資を呼び込み、国際経済にがっちり組み込まれつつ、順調に経済成長を続けている。また南シナ海情勢を巡って、かつて敵対した米国と安全保障上の利害を共有し、関係が緊密化している。つまり、ベトナムを見れば、核を持たなくても、金王朝の体制保証など心配するに及ばず、国際社会に包摂されてうまくやって行けることが分かるだろう、というわけだ。
あの6月の米朝首脳会談は、既に「非核化」にコミットしていた金正恩委員長の首根っこを掴んで、時間を限った具体的なロードマップに合意させ、それを検証しながら確実に実行できる道筋をつける、といった実効性の点で、その後も何ら進展がないと酷評され、今回も、国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表が実務協議のために平壌入りしたばかりで、その開始を待たずに首脳会談の日程を確定させるとは、実務の積み上げがない「米朝首脳会談ありき」として悪しき先例となった6月のシンガポールの二の舞になりはしないかと、今から懸念する声があがっている。しかし、これらは私たちのような常識人の発想であって、予測不可能な、ディールの達人・トランプ大統領は、そんな実務は出来っこないし興味すらなく、全く違うアジェンダで臨んでいるのではないかと秘かに期待している。以下は単なる憶測になるが、先のベトナムの話から察しがつくように、トランプ大統領は、体制保証を求める金正恩委員長に「ベトナム・モデル」についてあらためて考えさせる時間を与えたのではなかったかと思うのだ。北朝鮮は、160の国と外交関係があるとはいえ、朝鮮戦争が休戦状態のまま、世界の盟主・アメリカとは断絶状態にあり、依然、安全保障上の不安がある。だからと言って、歴史上、散々苦い思いをして来た隣国・中国の軍門に再び下るのは面白くない。そんな世界最貧国が生き残りを模索するのに、歴史に大いに学んでいるのは間違いないが、あらためて問題意識を明確化し、勉強する機会を与えて、根本姿勢をあらためるよう促しているのではないか、という仮説だ。
こうしてまがりなりにも対話ムードに包まれる中、国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネル報告によれば、昨年1~8月で計148回もの「瀬取り」が確認され、主に中・露などの船舶の関与が疑われることが明らかとなったし、昨年1~11月に北朝鮮・開城の南北共同連絡事務所で使用する石油精製品を韓国が持ち込んだが、安保理決議で義務付けられている届け出を怠るなど、韓国の制裁履行への消極姿勢も明らかとなるなど、金正恩委員長のしぶとさばかりが目につく。しかし、日本では余り注目されないが、トランプ大統領は対北朝鮮制裁の手を緩めるどころか、逆に強化している。北朝鮮企業と取引を行った中・露などの企業や、北朝鮮外交官や北朝鮮人ハッカーなどに対しても、資産凍結などの制裁を加えているのだ。トランプ大統領は「完全非核化」を諦めていないし、なし崩し的に制裁を緩和するのではないかという懸念も杞憂に過ぎないのではないかと思う。このあたりは、習近平国家主席と貿易戦争「一時休戦」の手打ちをしながら、同じ日にカナダに華為(ファーウェイ)CFOを拘束させたように、それはそれ、これはこれと、是々非々で対応しているのに似ている。
見ようによっては、トランプ劇場の第一幕では、トランプ大統領が軍事力を背景に金正恩委員長を脅して融和姿勢を引出し、第二幕では直接交渉によって、トランプ大統領が金正恩委員長の「体制保証」を求める頑なな姿勢を氷解させようと試みている、というように、これまでのところ、ディールの達人・トランプ大統領の思惑通りに進んでいるとするのは、予定調和に過ぎるだろうか。果たしてこの見立ては合っているのか、いないのか、この続きはどうなるのか、トランプ劇場の見せ場であろう。
エドワード・ルトワック氏の近著によれば、昨年6月の米朝首脳会談で、トランプ大統領は金正恩委員長にビデオを見せながら「ベトナム・モデル」を語ったということだからだ(このあたりは以前ブログに書いた:https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20180930)。ベトナムは、共産党一党支配の社会主義国ではあるものの、チャイナ・プラス・ワンの有力候補として投資を呼び込み、国際経済にがっちり組み込まれつつ、順調に経済成長を続けている。また南シナ海情勢を巡って、かつて敵対した米国と安全保障上の利害を共有し、関係が緊密化している。つまり、ベトナムを見れば、核を持たなくても、金王朝の体制保証など心配するに及ばず、国際社会に包摂されてうまくやって行けることが分かるだろう、というわけだ。
あの6月の米朝首脳会談は、既に「非核化」にコミットしていた金正恩委員長の首根っこを掴んで、時間を限った具体的なロードマップに合意させ、それを検証しながら確実に実行できる道筋をつける、といった実効性の点で、その後も何ら進展がないと酷評され、今回も、国務省のビーガン北朝鮮担当特別代表が実務協議のために平壌入りしたばかりで、その開始を待たずに首脳会談の日程を確定させるとは、実務の積み上げがない「米朝首脳会談ありき」として悪しき先例となった6月のシンガポールの二の舞になりはしないかと、今から懸念する声があがっている。しかし、これらは私たちのような常識人の発想であって、予測不可能な、ディールの達人・トランプ大統領は、そんな実務は出来っこないし興味すらなく、全く違うアジェンダで臨んでいるのではないかと秘かに期待している。以下は単なる憶測になるが、先のベトナムの話から察しがつくように、トランプ大統領は、体制保証を求める金正恩委員長に「ベトナム・モデル」についてあらためて考えさせる時間を与えたのではなかったかと思うのだ。北朝鮮は、160の国と外交関係があるとはいえ、朝鮮戦争が休戦状態のまま、世界の盟主・アメリカとは断絶状態にあり、依然、安全保障上の不安がある。だからと言って、歴史上、散々苦い思いをして来た隣国・中国の軍門に再び下るのは面白くない。そんな世界最貧国が生き残りを模索するのに、歴史に大いに学んでいるのは間違いないが、あらためて問題意識を明確化し、勉強する機会を与えて、根本姿勢をあらためるよう促しているのではないか、という仮説だ。
こうしてまがりなりにも対話ムードに包まれる中、国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネル報告によれば、昨年1~8月で計148回もの「瀬取り」が確認され、主に中・露などの船舶の関与が疑われることが明らかとなったし、昨年1~11月に北朝鮮・開城の南北共同連絡事務所で使用する石油精製品を韓国が持ち込んだが、安保理決議で義務付けられている届け出を怠るなど、韓国の制裁履行への消極姿勢も明らかとなるなど、金正恩委員長のしぶとさばかりが目につく。しかし、日本では余り注目されないが、トランプ大統領は対北朝鮮制裁の手を緩めるどころか、逆に強化している。北朝鮮企業と取引を行った中・露などの企業や、北朝鮮外交官や北朝鮮人ハッカーなどに対しても、資産凍結などの制裁を加えているのだ。トランプ大統領は「完全非核化」を諦めていないし、なし崩し的に制裁を緩和するのではないかという懸念も杞憂に過ぎないのではないかと思う。このあたりは、習近平国家主席と貿易戦争「一時休戦」の手打ちをしながら、同じ日にカナダに華為(ファーウェイ)CFOを拘束させたように、それはそれ、これはこれと、是々非々で対応しているのに似ている。
見ようによっては、トランプ劇場の第一幕では、トランプ大統領が軍事力を背景に金正恩委員長を脅して融和姿勢を引出し、第二幕では直接交渉によって、トランプ大統領が金正恩委員長の「体制保証」を求める頑なな姿勢を氷解させようと試みている、というように、これまでのところ、ディールの達人・トランプ大統領の思惑通りに進んでいるとするのは、予定調和に過ぎるだろうか。果たしてこの見立ては合っているのか、いないのか、この続きはどうなるのか、トランプ劇場の見せ場であろう。