昨日の産経新聞・電子版エンタメ・コーナーに、横浜の老舗バー「Star Dust」が紹介されていた(*)。
一度行ったことがあるだけのご縁である。しかも30数年前のことだ。東横線の日吉にある独身寮に住み始めて、渋谷と横浜が遊び場だった当時、物珍しさに駆られて、ガイドブックで予習しては面白そうなレストランやバーを片っ端から食べ飲み歩く中で、「Star Dust」は一度きりなのに何故か記憶に残っている。あらためて今、振り返ると、店名とロケーションと佇まいのコンビネーションが絶妙だったせいだと思う。ジャズのスタンダード・ナンバーから取った店名なのだろうが、非日常に相応しい幻想を誘うシンプルで洒落たネーミングには痺れるし、東神奈川駅から海に向かって徒歩15分もかかる不便な、すぐ隣に米軍施設・横浜ノース・ドックという瑞穂埠頭の入り口付近にあって、およそ色気のない倉庫群の一角にネオンサインが煌々とぽつねんと輝く孤高のロケーションは印象的だし、ロケーションのままにニッポンから隔絶されたかのようなアメリカンな内装やジュークボックスや決済の仕組み(キャッシュ・オン・デリバリー)を備えた独特の空間もまた粋で印象的だった。
もう一軒、渋谷・道玄坂にあったアメリカン・バー「Roxy」も記憶に残るのだが、調べてみると、随分前に閉店したようだ。30数年の年月はそんなものだろうと諦めるしかないが、「Star Dust」はあれから何も変わっていないようで驚かされる。いや、あれからどころではない、昭和29年にマスター(81歳)のお父上が始めてから70年近くの間、その雰囲気を守り続けているようだ。その独特の風貌から、多くのテレビドラマや映画のロケに使われたそうだが、さもありなん。
以下は余談。
懐かしくて再訪したいと思うのは、コロナ禍でオーセンティック・バーなるものから遠ざかって久しく恋しいせいだが、ただの気紛れではなく、実は行ったことがないのに行ってみたいオーセンティック・バーがこのところずっと念頭にあるせいでもある。大学を出るまでの20年間住んでいた大阪府高槻市(どうでもいいが、辻本清美さんの地元)にある、「福田バー」という。何とも直截的な素っ気ない店名だが、地元では知る人ぞ知る有名店らしい。どうやら小学生時代に最も親しかった友人が開いているもののようで、食べログなどを見る限り、彼なりのこだわりを随所に・・・そう、旧友としてのニオイを感じている(笑)。いつになるか知れない半世紀ぶりの再会をどのように演出しようかと、今からそわそわしている(笑)。
(*)https://www.sankei.com/article/20220523-DLHE4H6I7RKNBEPNCGWPQBXUPY/