風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

角界の地震

2018-01-08 11:44:07 | スポーツ・芸能好き
 現役横綱の廃業という異例の事態に至った元横綱日馬富士関の暴行事件に関し、一連の処分が決まった。貴乃花親方は、「協会への報告義務を怠り、被害者で弟子の貴ノ岩関や自身に対する協会危機管理委員会の聴取要請を再三拒否するなど、非協力的だった」ことから理事解任となった。評議員会議長の池坊保子氏に言わせれば、「相撲道は礼に始まって礼に終わる。多くの言動は明らかに礼を失していた」ということだ。
 併せて、八角理事長は3月までの報酬を全額返上、伊勢ケ浜親方(元日馬富士関の師匠)は理事を辞任、役員待遇委員に2階級降格となり、現場の酒席に同席しながら暴行を止めなかった白鵬、鶴竜の両横綱は減給処分を受けた。また鳥取簡裁は、傷害罪で略式起訴された元日馬富士関に罰金50万円の略式命令を出した。日本相撲協会としてはこれで幕引きを図りたいのだろう。結局、貴乃花親方の頑なさは何故だったのか、分からずじまいである。
 5日に、両国国技館で横綱審議委員会による稽古総見が行われた。マイペース調整を貫く白鵬はどうやら相撲をとるつもりはなかったようだが、「基礎運動に終始していると八角理事長から『いけ』と促された。やや戸惑った表情を浮かべながら土俵へ。いつもは施されている両手首のテーピングもないまま」(産経電子版)、「理事長は『大関とやれ』という意図だったというが、白鵬は誤解したのか正代を指名。7番取り、右四つの寄りや豪快な左上手投げなどでまったく寄せ付けなかった」(産経電子版)という。
 問題は6番目の土俵で、立ち合いに相手の頰を平手でたたいてまわしを取る「張り差し」を出したという。臨時横審で白鵬の取り口についてファンから「張り手、かちあげが多い」「横綱相撲とは言えない」「美しくない」「見たくない」などの投書が届いていることが発表され、北村正任委員長は「自覚をどう促すか。協会として工夫、努力して欲しいという意見もあった」と記者会見で話した取り口である。この日は北村委員長も言葉をはぐらかしたようだが、総見を視察していた元・横綱の北の富士勝昭氏は、「『不届き者だね。あれだけ横審から注意されているのに。けんかを売っているのかな、横審に』とちゃめっ気を交えて話した」(朝日新聞デジタル)という。御意。
 まだまだ余震は続きそうである。
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緊急地震速報

2018-01-06 12:07:15 | 日々の生活
 昨日5日が仕事始めだった。年末年始の丸一週間、火が入っていなかったビルはすっかり冷え込み、オフィスは一日中、上着が必要なほど寒かった・・・と言うと、その昔、ボストンに駐在していた頃のことで思い出すことがある。東京よりも格段に寒く、だいたい11月のThanksgiving Dayあたりから4月末まで(ひどいときは日本ではゴールデンウィークに雪が降ったこともあった)の半年近く、雪掻きされる道路以外はすっぽり雪に覆われる。オフィスには暖房が入るが、誰の感覚を基準に室温設定されるかと言うと、圧倒的多数の現地人(つまり白人WASP)だ。日本人の私はオフィスの寒さに耐えきれず、セーターやカーディガンを羽織って仕事していた。ところが、そんな温度設定にも係わらず半袖のTシャツ一枚で過ごすツワモノがいる。一枚も二枚も上手である(文字通り!)。繰り返すが、片や厚手のセーターで、片やTシャツ一枚である。同じ人間とは思えないほど冷点が少ないのかと、白人(狩猟民?)の強さを思い知ったものだった。間違っても戦争は二度としない方がいい・・・(苦笑)
 閑話休題。屠蘇気分(などと言っても死語だから、正月ボケと言うのが正しい)が抜け切らないこの日の11時頃、あちらこちらのスマホや携帯で緊急地震速報がけたたましく鳴り響き、その音の騒々しさの方にびっくりした。恐らくこれで皆、目が覚めただろう(笑)。5秒、10秒、15秒、身構えて待つが、何も起こらない。職場の同僚とお互いに顔を見合わせ、そのまま仕事に戻る。茨城県と石川県の二つの地震の地震波を同時に観測したため、地震の規模を実際より大きく予測したらしい・・・というのは後で知った。
 こうして、携帯を一人一台持つ時代が来るとは想像できなかったが、Jアラート(全国瞬時警報システム)のような情報網が完備される時代がくるとも想像できなかったし、職場のように人が密集する場ではアラームが(目が覚めるほど!)騒々しい事態になることも想像できなかった(苦笑)。緊急地震速報は、「一定の条件下で、最大震度5弱以上と推定される場合に、震度4以上となる地域を対象に発表される」ものと、あらためて知った。P波とS波はPrimaryとSecondaryの頭文字だと、今さらながら知った(これを教えてくれていれば英語の勉強にもなったのに)。そのほか、地震波の伝わる速度がせいぜい数km/秒程度であるのに対し、有線・無線の電気信号は原理的には光の速度(約30万km/秒)で伝わるため、その差を利用したものであること(当然ながら、震源に近いところでは速報が間に合わないこと)、少ない観測点のデータから震源やマグニチュードを迅速かつ精度良く推定するためにコンピュータの性能向上が欠かせなかったこと、1観測点のP波の観測データから震源やマグニチュードを推定する手法などを活用していること、なども気象庁のHPで知った。気紛れな地球の癇癪の将来予想(予報)をするより、兆しを察知して予防する時代は、テクノロジーに支えられていたのだ。
 折しも首相官邸では、「初閣議に向けて待機していた閣僚応接室で、緊急地震速報を伝える携帯電話のアラームが一斉に鳴り響き、一時騒然となった」とある。産経電子版に出ていた安倍首相の写真を見ると、スマホではなくガラケーだった。いまだにガラケーの私は、安倍さんの場合はセキュリティ目的だろうことは承知しつつ、つい安心してしまった(笑)。
 この日、深夜0時54分、かなり強い地震があり、後から届いたメッセージを見ると震度4と分かった。緊急地震速報が来なかったので、大きな地震になるはずはないと頭では理解しつつ、つい不安になる。が、揺れが止んだ後、「便りがないのは良い便り」という俚諺を思いだし、なるほど便利な時代になったものだとあらためて実感したのだった。
 新年早々、地震に揺れた!?仕事始めであった。
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核のボタン

2018-01-04 14:34:03 | 時事放談
 新年早々物騒なことに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「新年の辞」で「自分の机には常に核兵器発射のボタンがある」と言ってのけたのが話題になった。これを受けてトランプ大統領は期待通り(?)にツイッターに「自分の核兵器ボタンの方が遥かにでかくて強力だ。それにこいつはちゃんと作動する!(…I too have a Nuclear Button, but it is a much bigger & more powerful one than his, and my Button works!)」と書き込んだという。一体、何を自慢しているんだか・・・新年早々、笑ってしまったが、ガキの喧嘩のようなやりとりは今年も健在のようだ。一つ言えることは、ああ言えばこう言うはともかくとして、「自分の机には常に核兵器発射のボタンがある」と脅すような人物に核のボタンを渡すべきでは断じてない、ということだろう。
 なお、このほか、金正恩委員長は、平昌五輪について「民族のありようを誇示するよい機会となるだろうし、われわれは、大会が成功裏に開催されることを心から望む」とし、「こうした見地から、われわれは、代表団の派遣を含めて必要な措置を取る用意があり、このために北南当局が緊急に会うこともできるだろう」とも述べて、文在寅韓国大統領を喜ばせた。そして実際に板門店の直通電話が2年振りに再開されたという。これまでの太陽政策はことごとく裏切られてきたので、簡単には喜べないはずだが、問題は、この歩み寄りは自信の表れなのか、国連安保理による度重なる経済制裁の効果が出て焦っているのか、そのいずれかというところだ。大陸間弾道弾の再突入技術はまだ確立されていないと見られているので、時間稼ぎに出たのかも知れない(すなわち制裁はそれなりに効いているのかも知れない)。
 しかし・・・先月末、韓国を出港した香港船籍のタンカーが北朝鮮船籍のタンカーに石油精製品を公海上で引き渡していたことが発覚した。ロシアは過去数ヶ月の間に少なくとも三度、同様のことをやっていたという。国連安全保障理事会は9月、海上で北朝鮮の船に積み荷を移すことを禁止する制裁決議を採択していたが、堂々と違反がまかり通っていたわけだ。
 この年末年始の休みに国連安保理・北朝鮮制裁委員会専門家パネルの元委員である古川勝久氏の「北朝鮮 核の資金源」(新潮社)を読んだ。450頁を超える大著だが、これでもかという制裁決議違反、言わばイタチゴッコで埋め尽くされている。北朝鮮制裁に、中国やロシアが公然と反対はしないものの非協力的なのは想像できるが、東南アジアや中東、アフリカには、制裁決議を知らない国や敢えて目をつぶる国が多いことには呆れてしまう。何より北朝鮮は国際的に孤立しているわけではなく(国交がない日本には想像し辛いことだが)、現に国連加盟国であって、普通に情報共有がなされ、欧州や中国、ロシアの大学や研究機関に北朝鮮国籍の学生や研究者が普通に所属して先端技術や科学を学んでいるのが実態のようなのである。最貧国らしく、かつてのソ連の旧式武器を後生大事にしているため保守・修理が出来るのは北朝鮮ぐらいであり、アフリカや中東にはそんな需要があるというのだから、驚くべき闇の世界だ。こうした貧しい国の軍隊や警察組織に訓練を施すといった需要もあるらしい。蛇の道は蛇・・・の世界だ。中国の後ろ盾に加え、こうしたニッチなマーケットで小銭を稼げば十分にやっていけるほど、北朝鮮経済は大きくないのだろう。そこが大国イランに対する経済制裁が効いたとされること(そして2年半前にイランとEU3+3との間でJCPOA:包括的共同作業計画の合意に至ったこと)との大きな違いではないだろうか。北朝鮮は、なかなかしぶとい。
 新年早々、暗澹たる気持ちになるが、気を取り直して・・・核のボタンを巡るトランプ大統領のツイッターに関して、BBCニュース(英文)には様々な反応も取り上げられており、ほっこりする。その一つは、ボタンに向かう赤ん坊の手の写真とともに、「ボタンが大きく見えるとすればそれは比較の問題だ(The button probably just looks bigger by comparison.)」というもの。なるほど。もう一つ、「大統領の机にあるボタンについて我々が知っているのは、執事にダイエット・コークを注文するものであって、核ミサイルを発射するものではない(The button we know about on the President's Desk summons a valet with a Diet Coke, but doesn’t launch a nuclear misile.)」というもの。めでたし、めでたし。
 私たちもしぶとく行きたいものである。
コメント (2)
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