monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

猿(ましら/まし/さる)

2011年08月28日 | 日本古典文学-和歌-秋

山ふかみ苔のむしろの上にゐて何心なく鳴くましらかな(山家集)

秋山のみねのこずゑをつたひ来てやどの軒ばにましら鳴くなり(三百六十番歌合)

しばの庵やひとり住みうきみ山べに友あり顔にましら鳴くなり(光経集)

声たかみ林にさけぶ猿よりもわれぞもの思ふ秋の夕べは(金槐和歌集)

さ夜ふけて山ものどかにすむ月におのれひとりとましら鳴くなり(光経集)

心すむ柴のかり屋の寝覚めかな月ふく風にましら鳴くなり(御室五十首)

さらぬだに寝覚めの床(とこ)のさびしきに木(こ)づたふ猿のこゑ聞こゆなり(散木奇歌集)

ありあけの月もかたぶく山の端(は)にさびしさそふる猿(さる)の三さけび(朗詠題詩歌)

月の入るかた山かげに鳴く猿はふけ行く秋をものがなしとや(朗詠百首)


鹿

2011年08月27日 | 日本古典文学-和歌-秋

秋萩にうらびれをれば足引の山下とよみ鹿の鳴くらむ(古今和歌集)

秋萩にみだるる玉は鳴く鹿の声よりおつるなみだなりけり(貫之集)

妻こひの涙や落ちてさを鹿の朝立つ小野の露とおくらむ(新拾遺和歌集)

露ながらみだれぞまさるさを鹿の鳴く音(ね)もしげき野べのかるかや(京極為兼)

さらぬだに夕べさびしき山ざとの霧のまがきに牡鹿鳴くなり(千載和歌集)

もの思ふこのゆふぐれにこころあらば尾の上(へ)の鹿の声な聞かせそ(光経集)

秋ごとに聞けどもあかぬ宇治山の尾のへの鹿の夜半のひと声(夫木抄)

山里は秋こそことにわびしけれ鹿のなくねに目をさましつつ(古今和歌集)

妻こひの秋の思ひのながき夜を明かしかねたる鹿のこゑかな(宝治百首)

鳴く鹿の声にめざめてしのぶかな見はてぬ夢の秋の思ひを(新古今和歌集)

たれ聞けと声たかさごのさを鹿のながながし夜をなきあかすらむ(後撰和歌集)

秋の夜をあかしかねたるひとり寝のあはれなそへそさを鹿の声(草庵集百首和歌)

木がらしに月すむ峯の鹿の音(ね)をわれのみ聞くは惜しくもあるかな(風雅和歌集)

秋の夜は寝覚めののちも長月のあり明の月に鹿ぞ鳴くなる(新拾遺和歌集)

思ふことあり明がたの月影にあはれをそふるさを鹿のこゑ(金葉和歌集)

寄鹿恋
妹にわがうら恋ひをれば足引きの山下とよみ鹿ぞ鳴くなる(古今和歌六帖)

このごろは野べの牡鹿(をじか)のねに立ててなかぬばかりといかで知らせむ(新後撰和歌集)

(2009年11月7日の「鹿」の記事は削除しました。)


百舌鳥/鵙(もず)

2011年08月26日 | 日本古典文学-和歌-秋

鵙(もず)のゐる尾花が末葉うちなびきかた山づたひ秋風ぞ吹く(拾遺風体和歌集)

風わたる尾花がすゑにもず鳴きて秋のさかりと見ゆる野べかな(夫木抄)

もみぢするはじのたち枝は折りのこせ来(き)なれしもとの百舌鳥もこそゐれ(正治二年初度百首)

夕日さすかた山かげの櫨(はじ)の木に聞くもさびしき鵙のひとこゑ(今川為和集)

たづ ぬべき人はありとも甲斐なしや鵙の草ぐきそこと知らねば(宗良親王千首)


雁(かり)

2011年08月25日 | 日本古典文学-和歌-秋

秋風にこゑをほにあげてくる舟はあまのとわたる雁にぞありける(古今和歌集)

秋風に大和へ越ゆるかりがねはいや遠ざかる雲隠りつつ(万葉集)

ゆきかよふ雲ゐは道もなきものをいかでか雁のまどはざるらむ(人丸集)

山の端(は)の雲のはたてを吹く風にみだれてつづ く雁のつらかな(玉葉和歌集)

雲間もる入り日のかげに数みえてとほぢの空をわたるかりがね(風雅和歌集)

夕さればいや遠ざかり飛ぶ雁の雲より雲にあとぞ消えゆく(玉葉和歌集)

夕日影さびしく見ゆる山もとの田のもにくだる雁の一つら(風雅和歌集)

大江山かたぶく月の影さえて鳥羽田(とばた)の面(おも)におつるかりがね(新古今和歌集)

つれてとぶあまたのつばさよこぎりて月のした行く夜半(よは)の雁がね(風雅和歌集)

さ夜中と夜はふけぬらし雁が音(ね)の聞こゆる空に月わたる見ゆ(万葉集)

霧こめてあはれもふかき秋の夜に雲ゐの雁もなきわたるかな(中務内侍日記)

しのびあまり恋しきときは天(あま)の原そらとぶ雁のねになきぬべし(金槐和歌集)

いかにせむ雲の上とぶ雁がねのよそになり行く人の心を(続後撰和歌集)

(2009年11月3日の「雁」の記事は削除しました。)


初雁(はつかり)

2011年08月24日 | 日本古典文学-和歌-秋

秋風のさむき朝けに来にけらし雲にきこゆる初雁のこゑ(玉葉和歌集)

霧はれてあさ日うつろふ山の端(は)の雲にすぎゆく初雁のこゑ(新続古今和歌集)

みねこえて今ぞ鳴くなるはつ雁の初瀬の山の秋霧の空(夫木抄)

ふるさとのあさぢが末は色づ きてはつ雁がねぞ雲に鳴くなる(玉葉和歌集)

ものや思ふ雲のはたての夕ぐれに天(あま)つ空なる初雁のこゑ(続千載和歌集)

初雁のはつかにこゑを聞きしより中ぞらにのみものを思ふかな(古今和歌集)

雲がくれ鳴きてゆくなる初雁のはつかに見てぞ人は恋しき(金槐和歌集)