あやしい異香のかをる枕に夢魔をまねきよせ、みどりの柳をふとらせ、ねむりながらにレモンティの優しさに手をのばす。されは古びたランプの思ひ出に糸をつなぎ、さまざまの草花をうゑ、かぎりなくのびひろがる蘆(あし)のひともとに至上の鍵をほのめかし、遠くきこえる香料に、今更ながら幻想のけむる象牙の手鏡を持ちそへる。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447~448p)より「季節題詞」)
「むすぼれる(古語:むすぼる)」という語の「①結ばれて解けにくくなる。もつれる。また、物事がそのような状態になる。」という語釈の日本国語大辞典よりもさかのぼる用例が複数あります。
雪ふかきまのゝかや原むすほれて吹とも風になひかさりけり
(巻第百六十九・久安六年御百首、参議左中将教長、冬)
「群書類従11」205ページ
ふゆこりに-いけへのあしは-むすほれて-したねとくへき-はるやまつらむ
(夫木和歌抄・06621_清輔~日文研HPより)
「巻き返す」という語には「①ひろげたものを、巻いて元の状態に返す。」という語釈がありますが、日本国語大辞典よりもさかのぼる用例があります。
(遠郷擣衣)
まきかへす程にやあるらんから衣とをちの里はうちたゆむ也
(巻第百七十三・丹後守為忠朝臣家百首、秋)
『群書類従11』322ページ