今もかも来(き)ませわが背子見せもせむ植ゑしあぢさゐ花咲きにけり(新撰和歌六帖)
あぢさゐの八重咲くごとくやつ世にをいませ吾背子見つつしのはむ(万葉集)
飛ぶほたるひかげ見えゆく夕暮になほ色まさる庭のあぢさゐ(長秋詠藻)
宵のまの露に咲きそふあぢさゐの四(よ)ひらぞ月のかげに見えける(新撰和歌六帖)
夏もなほ心は尽きぬあぢさゐの四ひらの露に月もすみけり(長秋詠藻)
夏の野は咲きすさびたるあぢさゐの花に心をなぐさめよとや(林葉集)
今もかも来(き)ませわが背子見せもせむ植ゑしあぢさゐ花咲きにけり(新撰和歌六帖)
あぢさゐの八重咲くごとくやつ世にをいませ吾背子見つつしのはむ(万葉集)
飛ぶほたるひかげ見えゆく夕暮になほ色まさる庭のあぢさゐ(長秋詠藻)
宵のまの露に咲きそふあぢさゐの四(よ)ひらぞ月のかげに見えける(新撰和歌六帖)
夏もなほ心は尽きぬあぢさゐの四ひらの露に月もすみけり(長秋詠藻)
夏の野は咲きすさびたるあぢさゐの花に心をなぐさめよとや(林葉集)
生(お)ひかかり葛(くず)の玉巻く夏萩を植ゑては秋の鹿や待たれむ(小一条左大臣忠平前栽合)
賤(しづ)はなほ月影のこせ夏萩の麻のをがらの白きかきほに(草根集)
夏萩のあさのをがらと徒人(あだびと)の心かろさといづれまされり(好忠集)
これを見ようへはつれなき夏萩の下葉濃くこそ思ひ乱るれ(清少納言集)
露にだに心おかるな夏萩の下葉の色よそれならずとも(風雅和歌集)
狩人(かりびと)の夏の夜ふかくいるさ山ともしのかげの見えみ見えずみ(二条太皇太后宮大弐集)
寄る鹿の星かともしの光かも嶺たつ雲に明くるみじか夜(草根集)
ともしするほぐしの松も消えなくにと山の雲あけわたるらむ(千載和歌集)
ともしすと山のしづくにそぼちつつ尾の上(へ)に夜をも明かしつるかな(金葉和歌集・初度本)
ともしするは山の火串(ほぐし)夜もすがらもゆるや鹿のおもひなるらむ(新千載和歌集)
鹿の立つはやまのやみにともす火のあはでいく夜をもえあかすらむ(新勅撰和歌集)
雨やまぬ山の雨雲たちゐつつやすきそらなく君をしぞ思ふ(古今和歌六帖)
あしひきの葛城山にゐる雲の立ちてもゐても君をこそ思へ(拾遺和歌集)
風ふけば空にただよふ雲よりもうきて乱るる我が心かな(二条太皇大后宮大弐集)
うきながら消えずはありとも白雲の空に乱れて恋ひやわたらむ(宝治百首)
中空(なかぞら)に浮きたる雲のはてもなくゆくへ知らずも恋ひわたるかな(宝治百首)
いかにせむ身はなか空にあま雲のはれぬ思ひのゆく方(かた)もなし(後崇光院御百首)
我が恋は逢ふをかぎりのたのみだに行方も知らぬ空のうき雲(新古今和歌集)
恋ひわびてながむる空の浮き雲やわが下燃えのけぶりなるむ(二度本・三度本金葉和歌集)
うつりゆく人の心は白雲のたへてつれなきちぎりなりけり(建仁元年仙洞五十首)
咲く花はうつろふときあり足引の山すがの根し長くはありけり(万葉集)
菅の根はむべ長からしかた淵の沼田を深みたれか植ゑけむ(夫木抄)
五月雨の日数(ひかず)経(へ)ぬれば刈り積みし賤屋(しづ や)のこすげ朽ちやしぬらむ(千載和歌集)
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あしひきの山に生(お)ひたる菅(すが)の根のねもころ見まくほしき君かも(万葉集)
にごり江に生(お)ふる菅薦(すがこも)みがくれて我が恋ふらくは知る人ぞなき(躬恒集)
したにのみしのぶの山の岩小菅(いはこすげ)いはでおもひの年ぞ経(へ)にける(現存和歌六帖)
山ふかみ知られぬ恋をすがの根の長くや人に思ひ乱れむ(正治二年初度百首)
あしひきの山の山菅(やますげ)やまずのみ見ねば恋しき君にもあるかな(拾遺和歌集)