宝治百首歌奉ける時、六月祓 冷泉太政大臣
底清き河せの水のあさのはにしらゆふかけて御祓をそする
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首の歌奉りける時、みな月の御祓をよめる 藤原季通朝臣
けふくれはあさのたちえにゆふかけて夏みな月の祓をそする
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
みそきするあさのたちえのあをにきてさはへのかみもなひけとそおもふ
(夫木抄~日文研HPより)
題しらす 藤原長能
さはへなすあらふる神もをしなへてけふはなこしのはらへなりけり
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
大祓
夏引の麻の大ぬさとりそへて百官(もものつかさ)のみそきすらしも
大祓と申は。百官朱雀門にあつまりて祓をし侍也。六月晦日の事なれば。六月祓に侍れども。是は群臣一同に集りてはらひをする也。
(年中行事歌合~群書類従)
題しらす よみ人しらす
みな月のなこしのはらへする人はちとせの命のふといふなり
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
河夏祓
御祓川うき瀬たえねとなかしやる身をなて物や麻のゆふして
(草根集~日文研HPより)
みそきかはからぬあさちのすゑをさへみなひとかたにかせそなひかす
(拾遺愚草~日文研HPより)
六月祓
河のせにあさの大ぬさとりしててけふの今夜や夏はらひせむ
(宝治百首~日文研HPより)
なつはつるゆふへになれはかはなみにあさのみそきをせぬひとそなき
(堀河百首~日文研HPより)
おほぬさのかはのせことになかれてもちとせのなつはなつはらへせむ
(貫之集~日文研HPより)
六月祓
今夜又ちとせをのふるみそきしていとと久しき御代そしらるる
(宝治百首~日文研HPより)
ちとせまてひとなからめやみなつきのみたひすかぬきいのるみそきに
(堀河百首~日文研HPより)
寛喜元年女御入内屏風 正三位家隆
風そよくならの小川の夕暮はみそきそ夏のしるしなりける
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首歌奉りし時、夏祓 進子内親王
大ぬさやあさのゆふして打なひき御祓涼しきかもの河風
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
なつはつるけふやなこしのみそきかはかはへのかせはすすしかりけり
(夫木抄~日文研HPより)
六月祓
御祓してぬさとりながす川の瀬にやがて秋めく風ぞすゞしき
(山家集~バージニア大学HPより)
六月祓
夏と秋と行きかふせにやなかるらんみそき川原のあさのおほぬさ
(宝治百首~日文研HPより)
みな月はらへの心をよみ侍ける 後京極摂政前太政大臣
早き瀬のかへらぬ水にみそきしてゆくとし波のなかはをそしる
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首の歌奉りける時、みな月の御祓をよめる 皇太后宮大夫俊成
いつとてもおしくやはあらぬ年月を御祓に捨る夏の暮かな
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
神主辞して後、社頭の六月祓を思いてゝ 従三位脩久
みたらしやむかしは我もせしみそき今夜は神も思ひいつらん
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
(建久七年六月)廿九日。天晴る。苦痛頗る宜し。猶薬を付くべきの由、基能来りて示す。坊門大納言、又腫物に依り、今日灸せらると云々。荒和祓、雁衣の如き着すに堪へざるの間、衣を以て菅(すが)貫(ぬ)かしむ。今夜陰陽師(資元門生)云ふ、妊(はら)めば菅貫かざるなりと。俗説に云ふ、六度之を菅貫く、如何と。此の条大謬説なり。只例の如くに祓ふ。贖物(あがなひもの)に向ふと雖も、立てざるの由称ふ。依りて今夜、此の説を用ふと云々。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)
(建永元年六月)廿九日(晦)。天晴る。巳の時、院に参ず。今日、川崎の泉におはします。女房の料、俄に出車を催す。例の舎利講了りて、出でおはします。退出して休息し。昏、私に祓ひ了んぬ。秉燭の程、帰参す。小時ありて、還りおはしますの後、御祓ひ有り。親定お朝臣陪膳、経時役送す。其の後、少年等菅貫(すがぬき)雑戯の後、馬場殿に出でおはします。夜半を過ぎて、入りおはします。名謁。具親少将と小御所に臥す。天明、同番の人に触れ、退出す。
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)
(寛喜二年六月)廿九日(己丑・晦)。天晴る。(略)荒和祓、例の如し。
憐むべし亦十九の夏、□の流年半時を過ぐ。向後定めて再会無きを知る。晩雲の景色に独り相思ふ。
夏はつるけふのみそぎは程もなしわが世いくかとしらぬ月日に
(『訓読明月記』今川文雄訳、河出書房新社)
三十日*(*辛卯)△来月ハ閏月タルニ依テ、今夜六月祓ヲ行ハルベキヤ否ノ事、藤内ノ判官定員ヲ奉行トシテ、有職并ニ陰陽道ノ輩ニ尋ネ問ハル。河内ノ入道等申シテ云ク、義解文ノ如キハ、閏月ニ行フベキ事分明ナリ。
和歌ニ云ク△ノチノミソカヲミソカトハセヨ、テイレバ、其ノ上、治承四年、△建久八年、△建保四年、皆閏月ニ行ハルト〈云云〉。諸人之ニ一同ス。資俊申シテ云ク、両月ニ之ヲ行フ例之ヲ存ズト〈云云〉。然レドモ多分ノ儀ニ就テ、之ヲ行ハレズト〈云云〉。
(吾妻鏡【文暦二年六月三十日】条~国文学研究資料館HPより)