*百合
*薊(あざみ)
狩人(かりびと)の夏の夜ふかくいるさ山ともしのかげの見えみ見えずみ(二条太皇太后宮大弐集)
寄る鹿の星かともしの光かも嶺たつ雲に明くるみじか夜(草根集)
ともしするほぐしの松も消えなくにと山の雲あけわたるらむ(千載和歌集)
ともしすと山のしづくにそぼちつつ尾の上(へ)に夜をも明かしつるかな(金葉和歌集・初度本)
ともしするは山の火串(ほぐし)夜もすがらもゆるや鹿のおもひなるらむ(新千載和歌集)
鹿の立つはやまのやみにともす火のあはでいく夜をもえあかすらむ(新勅撰和歌集)
雨やまぬ山の雨雲たちゐつつやすきそらなく君をしぞ思ふ(古今和歌六帖)
あしひきの葛城山にゐる雲の立ちてもゐても君をこそ思へ(拾遺和歌集)
風ふけば空にただよふ雲よりもうきて乱るる我が心かな(二条太皇大后宮大弐集)
うきながら消えずはありとも白雲の空に乱れて恋ひやわたらむ(宝治百首)
中空(なかぞら)に浮きたる雲のはてもなくゆくへ知らずも恋ひわたるかな(宝治百首)
いかにせむ身はなか空にあま雲のはれぬ思ひのゆく方(かた)もなし(後崇光院御百首)
我が恋は逢ふをかぎりのたのみだに行方も知らぬ空のうき雲(新古今和歌集)
恋ひわびてながむる空の浮き雲やわが下燃えのけぶりなるむ(二度本・三度本金葉和歌集)
うつりゆく人の心は白雲のたへてつれなきちぎりなりけり(建仁元年仙洞五十首)