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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 冬 十月(初冬) 時雨

2014年10月29日 | 日本古典文学-冬

題不知 よみ人しらす
神無月ふりみふらすみさためなき時雨そ冬の初なりける
(後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬歌の中に 藤原為仲朝臣
外山より時雨てわたる浮雲に木葉吹ませ行あらしかな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

小少將の君の、文おこせたる返り事書くに、時雨のさとかきくらせば、使も急ぐ。「又空の景色も、うち騒ぎてなん」とて、腰折れたることや、書き交ぜたりけん。暗うなりにたるに、たちかへり、いたう霞めたる濃染紙に、
雲間なくながむる空もかきくらしいかにしのぶる時雨なるらむ
(紫式部日記~バージニア大学HPより)

題しらす 馬内侍
ね覚して誰か聞らむこの比の木葉にかはる夜半の時雨を
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

堀川院の御時、百首の歌奉りける時の、時雨の歌 二条大皇太后宮肥後
ふりはへて人もとひこぬ山さとは時雨はかりそ過かてにする
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題知らず 面影恋ふる三位中将
物思ふ心の内を知り顔に絶えぬ時雨の音ぞ悲しき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

物思ひけるころ、しぐるる空を見て 道心すすむる右大臣
かきくらす空の時雨はしぐれかは身より余れる夜はの涙を
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

時雨を読侍ける 刑部卿頼輔
長夜のねさめの窓にをとつるゝ時雨は老の友にそ有ける
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

神無月の比、法性寺にて母身まかりにける時、しくれのふりけるによめる 安喜門院大弐
常よりもしくれしくれて墨染のころも悲しき神無月かな
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題不知 土御門院御歌
とへかしな槙たつ山の夕しくれ色こそ見えねふかきこゝろを
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

小野宮歌合に、忍恋のこゝろを 太上天皇
我恋はまきの下はにもる時雨ぬるとも袖の色に出めや
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

わかこひはこけのいはやのしくれかはおとにもたてすもるかたもなし
(壬二集~日文研HPより)

いとせちに思ふこと侍りけるころ、うち曇りしぐれければ 埋れ木の少将
晴れ間なき心や空にまがふらん涙しぐるる袖の上かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

神無月ばかり、時雨いたうする日、女に遣はしける とりかへばやのさきの太政大臣
物思へば心も空に乱れつつ時雨に添ふる我が涙
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

十月許に、女につかはしける 前中納言匡房
ひとりぬるね覚の床のさむけれは時雨の音をたえす聞哉
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 相摸
神な月夜はの時雨にことよせてかたしく袖をほしそわつらふ
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

神無月ばかり、女のもとにまかりて、人違(ひとたが)へして帰るあしたに、もとこころざし侍りける人に遣はしける 里のしるべの大将
それと見し雲間の月のさてもなどよその時雨にかきくらしけむ
返し 式部卿の宮の三の君
しぐれける雲間の月のよそながらたが面影を思ひ出づらむ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

 また十月ばかりに「それはしもやんごとなきことあり」とていでんとするにしぐれといふばかりにもあらずあやにくにあるになほいでんとす。あさましさにかくいはる。
 ことわりのをりとは見れどさよふけてかくやしぐれのふりはいづべき
といふにしひたる人あらんやは。
(蜻蛉日記~岩波文庫)


古典の季節表現 冬 冬の庭

2014年10月27日 | 日本古典文学-冬

あはれさはをきのはそよくあきよりもこのはのにはのふゆのゆふかせ
(為兼家歌合~日文研HPより)

前栽の霜かれたるを見て 欣子内親王
霜かるゝ千種の花の籬こそ秋みしよりも哀なりけれ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬歌の中に 権中納言実清
埋れし庭の落葉に霜消て又あらはるゝ秋の色かな
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉の心を 皇太后宮大夫俊成女
ふみわけてさらにたつぬる人もなし霜に朽ぬる庭の紅葉は
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 後京極摂政前太政大臣
古郷のはらはぬ庭に跡とちて木のはや霜の下にくち南
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 前中納言雅孝
降けるも真砂のうへは見えわかて落葉に白き庭の薄雪
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

 西の町は、北面築き分けて、御倉町なり。隔ての垣に松の木茂く、雪をもてあそばむたよりによせたり。冬のはじめの朝、霜むすぶべき菊の籬、われは顔なる柞原、をさをさ名も知らぬ深山木どもの、木深きなどを移し植ゑたり。
(源氏物語・乙女~バージニア大学HPより)


古典の季節表現 冬 十月(初冬) 落葉

2014年10月26日 | 日本古典文学-冬

初冬落葉といへる事を 法印長舜
見るまゝに紅葉吹おろす嵐山梢まはらに冬はきにけり
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 前中納言匡房
唐錦むらむら残る紅葉はや秋のかたみの衣なるらん
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉
おそくとくちりみちらすみ世にみてる紅葉や冬の光なるらん
くれなゐのうす花色を染めまして山桜戸にちる紅葉かな
(草根集~日文研HPより)

春日社歌合に、落葉といふことをよみてたてまつりし 藤原雅経
うつり行雲に嵐のこゑすなりちるかまさきのかつらきの山
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

おなし心(落葉)を 前大僧正公朝
足引の山おろし吹て冬はきぬいかに木のはのふりまさるらん
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉 参議公明
神無月吹や嵐の山高み雲に時雨てちる木葉哉
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬歌の中に 二品法親王尊胤
落葉にも秋の名残をとめしとや又さそひ行木からしの風
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉 従三位忠兼
立田山秋はかきりの色とみし木葉は冬の時雨也けり
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

右大臣に侍ける時、家に歌合し侍けるに、落葉 後法性寺入道前関白太政大臣
槙のやに絶す音する木葉こそしくれぬ夜半の時雨也けれ
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉如雨といふことをよめる 源頼実
木のはちる宿はきゝわく事そなきしくれする夜も時雨せぬよも
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

家に歌合し侍けるに、落葉をよめる 大弐資通
こすゑにてあかさりしかはもみちはのちりしく庭をはらはてそみる
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

落葉の心を 藤原清輔朝臣
山おろしの風なかりせは我宿の庭の木葉を誰はらはまし
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

四日、間近き紅葉を風の吹き散らすを、取り集むとて
木枯らしの風のたよりにつけつつも問ふ言の葉はありやと思はん
(和泉式部続集~岩波文庫)

嘆くこと侍りけるころ、紅葉の散るを見て 雨宿りの太宰権師重康
木枯しに千々に砕くる紅葉ばは物思ふ人の心なりけり
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

冬歌よみ侍けるに 相模
木葉ちるあらしの風の吹比は涙さへこそおちまさりけれ
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬のはじめ
もみぢ葉や落つると思へど木枯らしの吹けば涙もとまらざりけり
(和泉式部続集~岩波文庫)

題知らず とりかへばやのみてものの聖
秋果てて四方(よも)の嵐に誘はるる木の葉にたぐふ我が身ともがな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

風前落葉といふことをよませ給ける 後伏見院御歌
山嵐にもろく落行紅葉ゝのとゝまらぬ世はかくこそ有けれ
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

平等院の名かゝれる率塔婆に紅葉の散りかゝりける見て花より外のとありけむ人ぞかしとあはれに覺えて詠みける
哀とも花見しみねに名をとめて紅葉ぞけふはともに散りける
(山家和歌集~バージニア大学HPより)

廿七日、皇后宮の御かたへいらせおはしまして、日の御座の御つぼのもみぢ、御覽ぜさせおはします。女房たちも、みぎはにちりつもりたるなどたちいでゝみる。「おもふことかなふといはゞ、あのちりたるもみぢのかずかぞへてんや。」と、人々おほせられしかば、少將内侍、
もみぢばの數をかぞへて流すとも思ふ心はえやはゆくべき
今も風にちりみだるゝ程、なほいとおもしろくて、「袖にうけん。」など、人々おほせられしに、こんらうのみうらの上卿にて、つちみかどの中納言別當のさきことごとしくきこえしに、おどろきてみなうちへ入侍し。なごりおほくて、辨内侍、
おとづれて聞ゆるさきの追風に散もみぢばをみすてゝぞ行
(弁内侍日記~群書類從18)