家に歌合し侍し時、春雨を 前大納言為兼
梅の花くれなゐにほふ夕暮に柳なひきて春雨そふる
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
立ちぬるる花のしつくかしら玉のをやみたにせす春雨そふる
(宝治百首~日文研HPより)
春雨を 従三位親子
みるまゝに軒のしつくはまされとも音にはたてぬ庭の春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首歌中に 後京極摂政前太政大臣
霞とも雲ともわかぬ夕暮にしられぬほとの春雨そふる
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
ももちとりなくやきさらきつくつくとこのめはるさめふりくらしつつ
(拾遺愚草~日文研HPより)
春雨を 土御門院御歌
浅みとり初しほそむる春雨に野なる草木そ色まさりける
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
春雨を 清原深養父
春雨やなへて染らん峰遠き山のみとりも色深くみゆ
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
おしなへてよもの山への草木まてめくみあまねき春雨そ降る
(宝治百首~日文研HPより)
雨のつれづれなる日
天照らす神も心ある物ならば物思ふ春は雨な降らせそ
(和泉式部続集~岩波文庫)
つくつくとなかむるやとにはるさめのこころほそくもふりくらすかな
(為忠家初度百首~日文研HPより)
春雨 源貞泰
さひしさは昔より猶まさりけり我身ふりぬる宿の春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
縁檢察墾田地事宿礪波郡主帳多治比部北里之家 于時忽起風雨不得辞去作歌一首
薮波の里に宿借り春雨に隠りつつむと妹に告げつや
二月十八日守大伴宿祢家持作
(万葉集~バージニア大学HPより)
人を待ほとは心もはれやらてくらしそかぬる春雨のそら
(前摂政家歌合_藤原持和~続群書類従15上)
春雨の降る日
つれづれとふれば涙の雨なるを春のものとや人の見るらん
(和泉式部続集~岩波文庫)
題しらす 大江千里
ねになきてひちにしかとも春雨にぬれにし袖とゝはゝこたへん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
春雨を 鷹司院帥
音もせて袖ぬらせはや春雨のふるは涙と人のいひけん
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
はるさめのふるにつけてそよのなかのうきもあはれとおもひしらるる
(和泉式部集~日文研HPより)
二月廿九日に鎌倉に着きて、三月四日より二位殿の御持仏堂を乞ひ受けて、別時の念仏するほどに、春雨のどかなる夕暮に、紐解き渡す花の顔、己れ一人と笑み広げて、思ふことなげなるにも、過ぎにし方(かた)思ひ出でられて、袖の雫も偏(ひとへ)になりぬ。
春雨のすぎぬる世々を思ひをれば軒にこたふる玉水の音
(信生法師日記~小学館・新編日本古典文学全集48)
後深草院かくれ給て、又のとしの二月はかり、雨ふりけるに、覚助法親王のもとに給はせける 伏見院御歌
露けさは昨日のまゝの涙にて秋をかけたる袖の春雨
御返し 二品法親王覚助
かきくれし秋の涙のそのまゝに猶袖しほるけふの春雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)