monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 秋 観月宴

2021年09月13日 | 日本古典文学-秋

 清涼殿の南のつまにみかは水なかれいてたりその前栽にさゝら河あり延喜十九年九月十三日に賀せしめ給ふ題に月にのりてさゝら水をもてあそふ詩歌心にまかす
もゝ敷の大宮なから八十島をみる心ちするあきのよのつき
(躬恒集~群書類従15)

後冷泉院御時、九月十三夜月宴侍りけるに、よみ侍りける 大宮右大臣 
すむ水にさやけき影のうつれはやこよひの月の名になかるらん
(千載集~日文研HPより)

花山院東宮と申ける時、閑院におはしまして秋月をもてあそひ給けるによみ侍ける 大弐高遠 
秋の夜の月見にいてゝよは更ぬ我もあり明のいらてあかさん 
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

月あかく侍けるよ、人++まうてきてあそひ侍けるに、月いりにけれは興つきて、をの++かへりなんとしけれはよめる 大中臣能宣朝臣 
月はいり人はいてなはとまりゐて独や我は空をなかめむ 
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

かくて、日ごろ経て、長月になりぬ。風涼しくなり、虫の声、御前の草木も整ひて、木の葉は色づき、草むらの花咲き、五葉の松はのどけき色をまし、色々の紅葉、薄き濃き、村濃に交じり、月おもしろき夕暮れに、御前の池に月影映りて、よろづおもしろき夕暮れに、八の君、今宮、姫宮、御簾巻き上げて出でおはしまして、例の御琴ども弾き合はせて遊びたまふを聞きて、男君たち、え籠りおはせで、式部卿の宮も、右のおとど率ておはして、「今宵の御琴どもの音どもにおどろきにけり」とておはしまして、式部卿の宮笙の御笛、右のおとどただの御笛、篳篥簗吹き合はせて、声々あまたのもの吹き合はせて、いとになく遊ばせたまふを聞かせたまひて、いづれの人か御心のどかにて籠りおはせむ、夜一夜、女君たち、いと清げにて、なほおはします端に出で居たまへり。(略)
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)

十三日 辛巳。天晴レ、陰ル、酉ノ刻ニ、快晴。 明月、夜ノ御所ニテ、和歌ノ御会ナリ。一条ノ羽林、李部、已下ノ好士、七八輩、其ノ座ニ候セラル。(略)
(吾妻鏡【建保六年九月十三日】条~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 秋 菊の宴、菊合

2021年09月09日 | 日本古典文学-秋

弘安七年九月九日、三首歌講せられける時、菊花宴久と云ことを 亀山院御製 
千とせまてかはらぬ秋はめくりきてうつろはぬ世のきくの杯 
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

寛平御時の菊合(きくあはせ)の歌
 左方。占手(うらて)の菊は、殿上童こたてぎみを女につくりて花におもてかくさせて持たせたり。いま九本はすはまをつくりてうゑたり。そのすはまのさまはおもひやるべし。おもしろきところどころの名(な)をつけつゝ菊には短册(たざく)にて結(ゆ)ひつけたり。
占手 やまざきのみなせの菊
うちつけにみなせはにほひまされるはをりひとからかはなのつねかも
   嵯峨のおほさはのいけ これよりはすはま 友則
ひともとゝおもひしものをおほさはのいけのそこにもたれかうゑけむ
   紫野の菊
名にしおへば花さへにほふむらさきのひともと菊における初霜
   おほゐの戸無瀬の菊 しろがねをよりて滝におとしたり。いとたかくよりおつれどこゑもせず。
たきつせはただけふばかりおとなせそきくひとはなにおもひもぞます
   津の国の田蓑の島 すはまにうゑたる菊のしたに女そでを笠(かさ)に着て貝ひろふかたしたり。
田蓑(たみの)ともいまはもとめじたちかへり花のしづくにぬれむとおもへば
   奈良の佐保川の菊
ちどりゆゑ佐保の川べを求(と)め来(く)ればみなそこ霧(き)りてさける花かも
   和泉のふけひの浦
けふけふと霜おきまさるふゆたゝば花うつろふとうらみにゆかむ
   紀の国の吹上(ふきあげ)の浜の菊 菅丞相
あきかぜのふきあげにたけるしらぎくは花かあらぬか波のよするか
   伊勢の網代の浜
いそにさくあじろの小菊(をぎく)しほかひは玉(たま)とぞ求(と)めむ波のしたくさ
   逢坂の関の菊
この花に花つきぬらし関川(せきかは)のたえずも見よと折(を)れる菊の枝(え)
 右方。(略)
(内裏菊合~「平安朝歌合大成①」)

皇后宮の女房、菊合し侍りけるに、紫檀の長櫃に白き砂子を敷きて、色々に匂ひたる菊植ゑ渡し、隅々に立て石、洲浜などのさまして、鶴の形(かた)を作りて、黄なる薄様に葦手に書きて食はせける よみ人知らずうたた寝の宮
菊の露落つる水際(みぎは)に棲むたづはいとどよはひぞ久しかるべき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

小松内大臣家に菊合し侍けるに、人にかはりて読侍ける 建礼門院右京大夫 
うつしうふる宿のあるしも此花もともに老せぬ秋そかさねん 
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

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「むらはぎ」用例

2021年09月07日 | 日本国語大辞典-ま行

「むらはぎ(叢萩・群萩)」とは「むらがって生えている萩。」のことですが、日本国語大辞典用例よりもさかのぼる用例が複数あります。

うすくこくわきてやつゆもおきつらむまのゝむらはぎおのがいろいろ
(二三〇・嘉保二年八月廿八日 郁芳門院媞子内親王前栽合、2)
『平安朝歌合大成 増補新訂 第三巻』同朋舎出版、1996年、1539ページ

00596 師頼 ふたはより-あさたつしかは-しからめと-まののむらはき-はなさきにけり 
(堀河百首~日文研の和歌データベース)

00015 あめふれは-おもひこそやれ-つゆをたに-おもけにみえし(イおもけになひく)-まののむらはき
(六条修理大夫集~日文研の和歌データベース)

00306 頼政 ともすれは-しからむしかの-なきのみや-のへにかはれる-やとのむらはき 
(為忠家初度百首~日文研の和歌データベース)

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九月題詞

2021年09月05日 | 読書日記

 夏の亡霊のうへに浮く悔恨の火の手は琥珀色の波をゑがいてうづまき、渡り鳥の喉に空しい魂の贈物をとどける。うすいろの翡翠の横笛を吹く美童の面形はくろずんで焚香の長夜のゆめに溶け入り、黄金(こがね)の皿にうづくまる漿果(このみ)のひかりは女人の裸形のごとくなまめかしく息づいて吠えさけぶ。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」)

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