三年春正月一日於因幡國廳賜饗國郡司等之宴歌一首
新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事
右一首守大伴宿祢家持作之
(万葉集~バージニア大学HPより)
六年正月四日氏人等賀集于少納言大伴宿祢家持之宅宴飲歌三首
霜の上に霰た走りいやましに我れは参ゐ来む年の緒長く
右一首左兵衛督大伴宿祢千室
年月は新た新たに相見れど我が思ふ君は飽き足らぬかも
右一首民部少丞大伴宿祢村上
霞立つ春の初めを今日のごと見むと思へば楽しとぞ思ふ
右一首左京少進大伴宿祢池主
(万葉集~バージニア大学HPより)
立春の心をよみ侍ける 前大納言為定
天つ空霞へたてゝ久かたの雲ゐはるかに春や立らん
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
大納言忠頼の七十賀を娘のし侍りける屏風の歌 よみ人知らず落窪
朝ぼらけかすみて見ゆる吉野山春や夜のまに超えてきつらむ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
春たつ心をよみ侍ける 前大納言為世
今朝よりや春はきぬらんあら玉の年立かへりかすむ空かな
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
ひきかへてよものこすゑもかすむなりけふよりはるのあけほののそら
(秋篠月清集~日文研HPより)
百首歌めしけるついてに 順徳院御製
音羽川山にや春のこえつらんせき入ておとす雪の下水
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
嘉元内裏に百首歌奉りける時 後照念院関白太政大臣
春のくるあさけの風のをとは河たきつ岩ねも氷とくらし
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
堀河院御時百首歌めしけるとき、立春の心をよみ侍ける 修理大夫顕季
うちなひき春は来にけり山河の岩まの氷けふやとくらん
皇后宮肥後
つらゝゐしほそ谷川のとけゆくは水上よりや春はたつらむ
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
寛平御時、きさいの宮の歌合のうた よみ人しらす
氷とく春立くらし三吉野のよしのゝ滝のをとまさるなり
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
春立つ日
いつしかと氷とけゆくみかは水ゆくすゑとほきけさのはつはる
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)
程なく年暮れて、春にも成にけり。霞み込めたる眺めのたどたどしさ、谷の戸は隣なれども、鶯の初音だにもおとづれ来ず。思ひ慣れにし春の空は忍びがたく、昔の恋しき程にしも、又都の便りありと告げたる人あれば、(略)
(十六夜日記~岩波・新古典文学大系「中世日記紀行集」)
鶯をよみ侍ける 柿本人麿
うちなひき春たちぬらし我門の柳のうれに鶯なきつ
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
正月八日、春立ける日、うくひすのなきけるをきゝてよめる 藤原顕輔朝臣
けふやさは雪打とけて鶯のみやこに出るはつ音なるらん
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
延喜御時、御屏風の歌 貫之
あたらしく明る年をは百年の春のはしめとうくひすそなく
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)