道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ
みちのへの,をばながしたの,おもひぐさ,いまさらさらに,なにをかおもはむ
(万葉集~バージニア大学HPより)
題しらす 津守国光
日を経つゝ/しけさはまさる/思ひ草/あふことのはの/なとなかるらん
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
咲きそむる尾花がしたの思草(おもひぐさ)おもふこころぞいやまさりなる
(禅林瘀葉集)
うはたまの-ねてのゆふへの-おもひくさ-こよひもむねに-もえやあかさむ
(壬二集~日文研HPより)
按察使公通ふみをこせて侍ける返事に 花園左大臣家小大進
夏山の/しけみか下の/思ひ草/露しらさりつ/心かくとは
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
なつののの-しけみかしたの-おもひくさ-おもひをれとも-しるひともなし
(鳥羽殿北面歌合~日文研HPより)
ひにそへてかれゆく人もあるものをつれなくしげる思ひ草かな
(言葉和歌集)
女につかはしける 前大納言隆房
人しれぬ/うき身にしけき/思草/おもへは君そ/種はまきける
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
思ひ草もとの葉むけは知らずとも結ばむ根とはかけずもあらなむ
(我が身にたどる姫君~「中世王朝物語全集20」笠間書院)
延文百首歌奉りけるに、蛍 太政大臣
ほに出ぬ/を花かもとの/草の名も/かつあらはれて/とふほたるかな
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
あきちかき-これやほたるの-おもひくさ-はすゑのつゆに-かけそみたるる
(草庵集~日文研HPより)
むねにみちたる-おもひなりけり/しかのたつ-をはなかもとの-くさしけみ
(続草庵集~日文研HPより)
ひにそへて-ひとはかれのの-あきかせに-をはなかもとの-くさそつれなき
(草庵集~日文研HPより)
寄草恋
つらからむ人のためにはわすれなてを花か本の草の名そうき
(宝治百首_経朝~日文研HPより)
権中納言俊忠卿家にて恋歌十首人++よみけるに、来不留(きてととまらす)といへることをよめる 源俊頼朝臣
おもひ草/葉末にむすふ/白露の/たま++きては/てにもたまらす
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
野分の後、思ひまさらるることありてよめる 御垣が原の右大将
思ひ草さらでも末の露の身をいかに吹きつる秋の嵐ぞ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
いかにせむ-しくるるのへの-おもひくさ-したはにむすふ-つゆのみたれを
(洞院摂政家百首_俊成女~日文研HPより)
のへみれは-をはなかもとの-おもひくさ-かれゆくほとに-なりそしにける
(和泉式部集~日文研HPより)
寄思草恋といへる心を 式部卿惟成親王
枯れねたゞ尾花がもとの草の名よ露のよすがもあらずなる身に
(新葉集~「校註国歌大系9」)
(こひのうたのなかに) 賀茂経久
うき中は/枯はてぬるを/思ひ草/なにゝ涙の/露かゝる覧
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
しもむすふ-をはなかもとの-おもひくさ-きえなむのちや-いろにいつへき
(拾遺愚草~日文研HPより)
ほにいつる尾花かもとのおもひ草たか心よりたねをまきけん
(春日若宮社歌合~日文研HPより)
おもひくさ-かれなてたれか-みちのへの-をはなかしたに-たねをまきけむ
(道助法親王家五十首_家長~日文研HPより)
かれはつる-ひとをうらみの-たねなれは-うゑてくやしき-おもひくさかな
(永享百首~日文研HPより)
旧恋
たへて世に猶もふる野の思ひ草枯れなて種をなとのこすらん
(草根集~日文研HPより)
ひとかたならぬ 思ひ草(ぐさ)、 葉末の露も あをによし、 奈良の都を 立ち出でて、(略)
(謡曲「百萬」~岩波・日本古典文学大系40)
われも主君の御為に。色ある花を手折りつゝ。葉末に結ぶ露の御身を。残しやすると思草。(略)
(謡曲「雲雀山」~半魚文庫より)